表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界召喚の傭兵操者《マーシナリー・ランナー》  作者: RABE
第二章 流星《メテオール》
19/72

旅立ち

「本当に、これだけの量を貰って構わないのか……?」


「ああ、奴の魔核が予想以上の上物だったからな。これくらいなら全然構わないんだ」


あれから村まで戻った俺達は約束の食料を村人達に渡している


主食となるパンの材料である小麦粉の大量に詰まった袋や保存の効く野菜類、ジャーキーなどの干物といった食料が優先で、村人全員でなら一月は持ちそうな量だ


パンに関しては発酵用の酵母までアイテムとして存在していた、これもゲームでは存在しなかったアイテムだな


「これからお前たちは何処に行くんだ?」


「取り敢えずは南を、エクレニウス皇国を目指すつもりだ。この国だとアイツが生きにくいからな」


「全くだ、十年くらい前からリリウム教の連中が国に入ってきてから他種族の連中が入って来にくくなった。昔は魔族の行商人なんて珍しくもなかったんだからな」


「それが瑠璃を見ても何も思わなかった理由か?」


「ああ、もしかして何かあったのか?」


「首都で教会に近付いただけで抹殺されそうになったよ。お陰で追われてもいた」


「そうだったのか……これで礼になるか分からんが、オレたちはお前たちが此処を通った事を教会の連中には絶対に話さないと誓おう」


「それはありがたいけど、大丈夫なのか?なんか、連中の中に異端審問会とかいそうな気がするんだが」


「確かに噂には聞くな。けどこっちもそれなりの伝はあるんだ。まだ完全に教会が幅を利かせてはいないなら下手に手出しは出来んさ。それと、エクレニウス皇国に行くなら少し待って貰えないか?国境を越えるのに手助けが出来そうなんだ」


「そうなのか?それは助かる」


他の村よりは大きめだが、それだけの理由があるのかリーダー格の男の言葉に嘘偽りは感じられない


それならばと少しの間は待つ事にして、俺は新しい機体の構築を行っていく


とはいえ設計図を作るだけだ、実際に組み立てを行うにはハンガーの端末にアクセスしなければならない


「なーなー、兄ちゃん何やってるんだ?」


待っている間、トレーラーの運転席ドアにもたれ掛かって左手の端末を操作していると声を掛けられた


声の方を見れば村の子供の一人、十歳程の少年が居た


「ん?ああ、あのモンスターを倒すのに俺の機体が壊れただろう?だから新しく組み立てる設計図を作ってるんだよ」


端末やらトレーラーやら、この世界の人間には何をしているか分からないだろう、文字も日本語なのだ、多くの事は見られても知られはしない


だから素直に答えてやるが、その子供は目を輝かせて興奮した様子で続ける


「スッゲー!兄ちゃん《鉄騎兵》も作れるのか!?」


「まあ、な。このリングとか、色々と使ってやっとだ。一から作るなんて真似は無理だがな」


あくまでゲームのシステムを模倣して使っているような物だ、完全に俺の力って訳じゃない


「そんなことねーよ!兄ちゃんの《鉄騎兵》、めっちゃ強かったじゃん!あれだけ動かせるって事は、兄ちゃんもかなり強いって事だろ!?なあなあ、おれも兄ちゃんみたく強くなれるかな!?」


「さて、な。お前は強くなりたいのか?」


「当たり前だろ!あの亀のバケモノにみんな酷い目に遭わされたんだ!隣の家のズックなんて、ばあちゃんを殺されたんだぞ!」


「そうか。なら一つアドバイスしてやる。お前、名前は?」


「マルス!昔の勇敢な戦士と同じ名前だって父ちゃんが言ってた!」


マルス、確か地球でもローマかギリシア辺りの軍神が同じ名前だったな


俺はロボット関係は詳しいが神話関係はあまり興味なかったからな、後で瑠璃に聞いておこうか


「分かった、マルスだな。マルス、ならまずは目標を持て。強くなって何をしたいのか、それを考えるんだ」


「目標?兄ちゃんは何を目標にしてるんだ?」


「俺か?そうだな、アイツを護りたいって事かな」


「そっか、兄ちゃんは姉ちゃんの事が好きなんだな!」


「……まあ、それで良いか。俺みたいに誰かを護りたいっていう気持ちは強い力になる。その気持ちが本気なら本気なだけ、力が湧いてくる。後はひたすらにトレーニングだ。そして辛い、止めたいと思ったら目標を思い出すんだ。そうすれば諦めるかっていう力になる」


俺の場合は瑠璃を護りたいと思ったから精神的に強くなった、世界の頂点に立ちたいと思ったからAFの操縦技術を磨けた、何事も目標を定めて一心不乱に進む事だ


それが上手く行くかはその本気がどれだけの物かで決まる、成長のスピードが違っても俺はそう思うんだ


「誰かを……兄ちゃん、おれ何か分かった気がする!ありがとな!」


「おう、頑張れ少年」


とは言うものの、俺にはここまで偉そうに語れるようなものなんて、本当はないんだけどな、子供の夢を壊してはいけないから言ったけど


と、そこで大きく腹の虫が鳴った、俺ではなくマルスの腹がだ


「あはは……まだ飯食ってなかったや」


「締まらないな。待ってろ、確かに此所に……あった、ほらよ」


その様子に俺は苦笑し、端末の画面を閉じてポケットを調べた


スーツの胸ポケットに入れておいたと思うお菓子、チョコレートバーをマルスに渡してやる


「兄ちゃん、これ何だ?」


「お菓子だ、甘いぞ」


「本当か!?ありがとな、兄ちゃん!」


「どういたしまして。それは袋のギザギザから開けるんだ。ほら、こうしてな」


どうやって食べるのか分からない様子だったから端の方を少し開けてやる


開け方が分かったからか包装を剥がし、チョコレートにコーティングされたスナック菓子を出すとまず匂いを嗅いだ


少し甘い匂いがしたのかワクワクした様子で一口食べると驚きに目を見開いて大声で叫んだ


「うんめー!?何だこれ、めちゃくちゃうめー!?」


「分かったから落ち着いて食え。別に取られたりはしないって」


とはいえ初めて食べるお菓子だろうからな、それなりの大きさはあったのにあっという間に夢中になったマルスの腹の中へと収まっていった


今は食べ終わった後の余韻に浸っているといったところか


「兄ちゃん、このお菓子って何て名前なんだ?」


「チョコバーだ。チョコレートっていう菓子とトウモロコシとかの粉を棒状にして揚げたスナック菓子を組み合わせた物だ」


「チョコバー……おれ、もっとでっかくなったら外に出てもう一回チョコバーを食べるよ」


「そこまでか。まあ、他に何処に売ってるかは知らないけどな」


スナック菓子なら作り方は簡単だから再現は出来てもカカオ豆はこの世界だと何処で手に入るんだろうな


チョコレート自体は古くからあるらしいし、組み合わせれば作れなくはないだろうが


と、そこに肩の方をちょいちょいとつつかれて振り替える


その際、肩に手を置いたまま人差し指で頬をつつくという定番のノリがあったが、相手は瑠璃だった


確か荷卸をしている間に他の子供達と遊んでいたような気がしたが、帰ってきていたのか


「どうかしたのか?」


「いえ、楽しそうにしてるところ悪いけど、あんな状態になってるわよ」


「あんな?あっ……」


見れば、マルスがチョコバーを食べているのを羨ましそうに見ている子供達の姿があった


成る程、確かにあれだけ大声で騒いでいれば他の子供達が気付かない訳がないか


「分かった分かった、持ってくるからちょっと待ってろ」


マルスだけでなく俺にまで視線が集まるから追加で箱買いして配ってやる事にした


人数はマルスを含めて二十三人か、数本余るとして一人三本くらいずつ渡してやろう


あまり食べ過ぎてもダメだからな、それくらいが丁度いいだろう




「何だ、随分とウチのチビッ子どもになつかれたみたいだな」


「お菓子を与えたらこれだよ。お前ら、食ったら歯を磨けよ。虫歯になるぞ」


『はーいっ!』


返事は元気いいが後でちゃんと歯磨きしないと地獄を見るぞ、特にこの世界だと医療歯科は発展してなくて抜歯するしかなさそうだからな


子供達がチョコバーを食べている間に俺は戻ってきた男の方に向き直った、何処かへと去っていった時と違うのは右手に一通の封筒を持っている事だが、瓦礫に埋もれた家も多い中で無事だった家から持ってきたのだろうか


「コイツを持って南にあるカレスコ砦っていう場所に行ってみてくれ。この手紙を書いた爺さんの息子のモーガンがそこで百人隊長をしてるんだ。爺さんは砦の指揮官とも顔見知りだから上に話を通してくれると思う。これなら国境を越えるのに役立つと思ったんだ」


「良いのか?」


「勿論だ。むしろ、少しでも恩を返させて欲しいからな」


「そうか、ならありがたく受け取っておくよ。そういえば、まだ名乗った事は無かったな。今更だが、俺は奏多だ」


「ハハハ、色々とバタバタと忙しかったからな。オレはダミアンだ。ダンと呼んでくれ」


互いに色々とあってまだまともに名前も聞いていなかったのを思い出し、俺達は名乗りあった


男、ダンから受け取った手紙はありがたい物で、国境をどうするか悩んでいた事が解決した


後はエクレニウス皇国への入国の方だが、そこはまた考えるとしよう


もう少し機体の構築を終えてから出発にしよう、そう思ったところで村人が一人駆けてきた、北の方からだ


「おーい!教会の連中だ!《鉄騎兵》を三体連れてやってきやがった!」


「何だと!?」


「俺達の位置を知っていた、とは考えにくいな。巡回している部隊の一つと見た」


「くっ……アンタ達は隠れててくれ!オレたちで誤魔化しておく!」


「すまない、頼んだ。トレーラーは隠しておくからな」


スキルで出し入れが出来るからトレーラーを消しておく


その様子に村人達が驚いた様子だったが、俺は近くにいた瑠璃と共に行動する


「こっちだ!ハンス、お前の家に匿え!」


「おう!恩人、こっちだ!窓から見えない位置で隠れててくれ!」


ダンに手招かれハンスと呼ばれた男の家に転がり込む


上手く誤魔化してくれるとは言っていたが不安もある、とはいえ《マスタング》は使用不能で新型も構築が出来ていない、いざとなれば生身で《鉄騎兵》を三機相手にする必要がある


「取り敢えず準備だけはしておくか……」


AFWでも歩兵の状態でAFを攻略する事は出来たんだ、それより性能の低い《鉄騎兵》にも通用する筈だ


スキルの《簡易ショップ》にて武装を購入、対戦車用の兵装をメインに揃えて《アイテムインベントリ》へと収納していく


それとついでに外の様子を把握する為の手段も用意した、指向性マイクとヘッドホンだ


これを身に付けてから窓を開けてマイクを向ければ準備完了、何かあればすぐに対処できるようになった


そして、窓の向こうから《鉄騎兵》の立てる足音が聞こえ、村の入り口の辺りで立ち止まった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ