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異世界召喚の傭兵操者《マーシナリー・ランナー》  作者: RABE
第二章 流星《メテオール》
17/72

陸皇亀タラスク 3

「角度が合わないなら、合わせてやるまでだ!」


傾斜装甲というのはその名の通りに斜めに角度をつけた装甲により逸らす、現実では戦車の装甲がそれに当たる


俺もゲームの中で巨大な戦車型のボスを相手にした時に知った事だが、少なくともそれは戦車なんかの水平に攻撃が飛んでくる敵に対しての事だ


装甲に対して垂直に当てる、ジャンプからのバーニアで滞空しての砲撃なら傾斜は関係ない


とはいえ、今の《マスタング》だとこの戦法を行うには一つ問題がある


「反動制御、からの着地。そして再びジャンプ、この繰り返しだな」


キャノン砲の発砲と同時に背中のメインバーニアを最大推力で噴射、反動を受け止めてかつ着地の為に再びバーニアを噴射する


キャノン砲は固定兵装として手持ちではなく取り付ける形となるのは反動を抑える為だ


それでも完全に抑える事は出来ず、本来なら地面にちゃんと足を着けている状態で使わなければならない


今の動きみたいに不用意に空中で使うと反動で上半身が回転、頭から地面に落下という間抜けな事になってしまう事もある


というか俺が初めてキャノン砲使った時に格好つけようと思ってやったら頭から突っ込んで頭部カメラ全損、キャノン砲も機体の下敷きとなって破損という結果になったからよく覚えてる


その後、ゲームでの大型戦車のボスもこうやって垂直に砲撃を叩き込む為に滞空しながらの砲撃が使われる事になった


そういえば攻略したその時は如何に空中でバランスを崩さないパーツ構成にするかというのが流行ったな、懐かしい


とはいえ撃ち込んでも《タラスク》の甲羅はまだ割れはしない、ヒビが入りはしてもまだ浅く見える


まだ貫くには足りないが、それなら貫けるまで続ければいい


「おかわり、うおっと!?」


次の徹甲弾を叩き込もうとジャンプの準備をしようとしたところで《タラスク》が動いた


首を出し、その口から火を噴いて《マスタング》を狙うが俺は機体を後退させて回避する


元から射程はそこまで長くはないらしい、距離をとって戦えば食らうような攻撃でもないだろう


むしろ頭部を狙うチャンスであり、その頭へとキャノン砲を向ける


「終わりだ」


モニターに表示された《タラスク》の頭部に合わさったカーソルが赤に色を変えロックした事を示す


素早く右手に握るレバーのトリガーを引けばキャノン砲から徹甲弾が放たれ、その頭蓋を穿った


血が辺りに飛び散り頭部を失った《タラスク》の巨体が地響きを立てながら地面へと倒れ伏す


「よし、後は瑠璃に解体して貰うとして、一度村に戻るか」


アーカイブによれば平均的なサイズの《タラスク》だったが、これだけの巨体からならどれだけの魔核が取れるか楽しみだな


前のジェノサイドグリズリーの時でさえかなりのCPを確保する事が出来たのだ、今度もそれ以上のCPが手に入るだろう


そう思い村の方へ進路をとろうと思ったその時、背を向けた途端に背後から火球が襲った


背部カメラで何かが光ったのを確認した瞬間、右へ回避行動をとっていた事で直撃は避けたが左腕を掠めた


通り抜けた火球は荒らされた畑の方に落ち、残っていた野菜の葉を焼くが、俺は機体を反転させ火球の発射位置の特定を行う


そして川に来た時に見付けた、《タラスク》の頭が水面から出ていて口の端から火の粉が漏れているのを


「二体居たのか!?」


見付けたのは更に上流、猫科動物を思わせる頭部には先程の個体には見えなかった鬣がある事からオスなのだろう


どうやら《タラスク》達は(つがい)だったらしい、群れで行動する生き物ではないらしいからこれで最後だとは思うが


「ゴガアァァァァァァァァァァッ!!」


「デカいな……」


不意討ちが失敗したと見て自分から陸に揚がってくる《タラスク》、その体は先程の《タラスク》に対して五割増しくらいで大きい


目が怒りに満ちているのは番だった個体を俺に殺されたからだろう、巨体で押し潰さんとばかりに俺の方へ駆けてくる


だが動きは遅く、全力で走っても《マスタング》が走った方が速い、突っ込んでくる《タラスク》の右側に回り込み、牽制の意味を込めてアサルトライフルを頭部に向け発砲、煩わしそうに首を振った《タラスク》が反撃とばかりに火球を放つ


それをバーニアを併用したジャンプで回避し空中でキャノン砲を発射、徹甲弾が甲羅に命中しヒビを入れるが、その大きさは先程の個体に当てた時よりもかなり小さい


どうやら体が大きい分、更に防御力も上がっているらしい、アサルトライフルも甲羅より軟らかめの頭部を狙ったにも関わらず弾かれていた


「硬いな。なら頭部に……籠ったか」


先程と同じで頭部を狙おうとするも、結末を見ていたのか《タラスク》はキャノン砲が稼働した途端に甲羅の中に隠れる


だがそれならば相手は動けず、俺は一点に集中して砲撃を続ければ甲羅を砕ける


だが目の前の《タラスク》はそう簡単に撃たせてはくれなかった


「何だ?回転してる、のか?」


甲羅の穴の一つが開き、火を噴き出し始めた


それにより《タラスク》の巨体がゆっくりと回転を始め、やがて高速と言っても過言ではない速度にまで加速していき、コマのように俺へと突っ込んで来た


それをバーニアを使って左に避けると《タラスク》は火の勢いを調節してカーブし、再び向かってくる


それを再び避けたところで《タラスク》は止まり、少し経った再び回転しながら向かってきた


「どこの大怪獣だテメェは!?」


某大怪獣のように空を飛ばずにコマのように回転してくるだけなのが救いとも言えるが、休息が必要とはいえそのインターバルが短く、キャノン砲を空中から撃つタイミングが掴めない


《マスタング》の滞空時間がもっと長ければ構わないのだが、今の状態ではコイツを倒す有効な手立てがない


いや、一つだけ手立てがあるにはあるんだが、少し時間が掛かる上にかなりむちゃくちゃだな


とはいえ確実に倒せる手段がそれしか思い付かない、ならば多少の無茶でもやらなければならない


そしてその為には機体の操作系統を少し書き換える必要がある、これが時間が掛かる理由だ


「スキル、《集中》!」


一瞬でも気の抜けない作業、それだけに俺は万全の状態へと持っていく為にスキルを使用する


それからシートの左にあるキーボードを前に持ってきて機体のシステム画面をモニターの左端に表示させる


これにより死角が出来るので常に《タラスク》を右側で捉えられるように維持する必要が出た


インターバルで休んでいる今の内にとシステム画面を操作していくが、途中で《タラスク》が動きだし、再び回避に専念する


避けた後、再び向かってくるまでの間に画面を操作、途中で向かってくる《タラスク》の回避を行いまた画面を操作する


機体の操作とシステムの書き換え、二つの作業の同時進行だがスキルの《集中》がなければ少しキツかったな


とはいえやるのは初めてじゃない、ゲームの中でも敵に対応する為にシステムを書き換えた事はある


今はそれ以上に能力が上がっているのだ、やれない訳がない


「チッ、操作設定の切り替えパターンが少ない」


今のレバーには射撃用のトリガーとなっているボタンが二つついてるだけだ、ゲームの中で使ってた機体なら最低でも四つつけてその組み合わせで機体の動作を変更するようにしていた


だが無ければ無いで最低限を振り分けるのみ、必要なのは腕と指の動きだけだ


「これが終わったらコックピット周りをフル改造だな」


予算が無いと我慢していたしそこまで強い敵はいない事から油断していた、だからこの《タラスク》の魔核で得たポイントで改造しようと心に誓う


とはいえ最低限のシステム変更は出来た、後は《タラスク》のインターバルを狙うだけ


「……今だ!」


少し離れた位置で止まり休息に入った《タラスク》に向けてバーニアを全開にして接近する


近付いてきた事に気付いたのか《タラスク》が腕を出し引っ掻き攻撃をしてくるが上に回避、そのまま《タラスク》の甲羅に乗る


「腕の動きを自由化、伏射姿勢、甲羅の隙間を掴む!」


そしてその背に腕と膝を支点に四つん這いで乗り、《マスタング》の指を甲羅の隙間に差し込み掴ませる


AFの操作はある程度は自動化されている、例えば射撃時にライフルを持った腕は照準に連動して勝手に銃口の先を向けてくれる


ナイフや剣といった近接武器も装備してからレバーを動かす方向やトリガーを引いたタイミングによって事前に登録した動きをしてくれる


だがランキング上位に行くにはそれだけでは足りない、その辺りの人間はそれぞれ自分で動きを設定して柔軟な動きをしてくるのだ


特に近接武器の扱いではそれが顕著だ、事前に決めてられた動きをするならその動きは相手も知っている、対応する動きを登録してしまえば全て捌き反撃する事さえ可能としてしまう


だから俺も独自にモーション設定を弄っていた、その辺りの設定も出来るのがAFWだからだ


そして今俺が登録したのは腕の動きの自由化、登録された動きではなくレバーの操作によって全てマニュアルで動かす基本的な設定だ


だが腕を動かすのも移動方向に機体を動かすのもレバーになる、コックピットを改造してレバーの数を増やしたりしない限りは腕か移動のどちらかしか取れない


だから腕か移動、その切り替えを行えるようにボタンの組み合わせで設定するのだが、今回はレバーのボタン数が少ないから登録に難儀した


状況に応じてシステムを切り替えて戦法に幅を持たせる、そうしてやっとランキングへと名を連ねられるようになるのだ


とはいえボタンを押した長さや回数での切り替えになるから両手のレバー含めた四つで使える設定は多くない


今回は甲羅に乗った後にシステム切り替え、腕を自由に動かしてから四つのボタンを全て押し込む事で登録した『掴み』の動作を行わせ、再び普段の移動にシステムを戻すといった作業をしたのだ


そしてこれで《タラスク》に取り付いた、回転されても振り落とされる事のないように機体を固定した上でな


「グガアァァァァァァァァァァッ!!」


「おっと、暴れるなよ。今、終わりにしてやるからよ」


両手は機体の固定を行っているから使えないが、腕を使わないでも撃てるキャノン砲がある


それを跳弾の恐れがない場所へ向けて発射、振り落とそうと回転を始めた《タラスク》の甲羅にヒビを入れる


「まだまだあるぜぇ!」


《マスタング》の重量があるからか回転のスピードが少しだけ遅くなった《タラスク》の背で立て続けに砲撃を行い、そのヒビを広げていく


しかし、甲羅を砕くより先に徹甲弾が尽きる、予備の弾倉の五発も使って残りの弾は少なくとも貫通するのには向いていない


だがヒビはかなり大きく入っている、だから手はある


右膝からナイフを取り出し、砲撃した甲羅のヒビに突き立てる


隙間から入ったナイフの刃は奥の肉を傷つけたらしく、ヒビから血が滲み出す


右手の制御を手動に切り替えナイフを振るう、隙間から梃子の原理で甲羅を剥がすようにすると少しずつ甲羅に覆われていない、肉の露出した部分が増えてくる


もう少し広げれば十分だろうと、そう思った時、不意に左腕に異音が響いた


見れば関節部分から火花が散っている、最初の火球でシステムでは分からない程に僅かに損傷を受けていたのか、今になって悪化したらしい


「クッ、マズッ!?」


次の瞬間、左腕の動力系が死んだらしく《タラスク》の甲羅を掴んでいた左手の力が抜けていく


そして右手にナイフを握っていた事で機体を固定出来なくなった《マスタング》は遠心力によって外へと投げ出される


そのまま回転しながら飛んでいく機体に対応出来ず、地面へと打ち付けられてしまった


「ガァッ!?…………グゥ」


シートに体を固定していて助かった、そうでなければ今頃はコックピットの中をピンボールのように跳ね回っていただろう


それでも機体からの衝撃は凄まじい物だった、一定以上の痛みはシャットアウトしてくれるVRでは分からない痛みだ


だが俺は意識は手放していない、五感は全て冴え渡っている、スキル《集中》の効果だろう


「機体状況は……全身イエローないしレッドか。こりゃあ、後で修理が大変だな」


機体のステータスを見れば全身にダメージを負っている、キャノン砲も砲身が歪んで使用不能、むしろメインバーニアが無事なのが奇跡に近い大破状態だ


《マスタング》は性能の低さから修理コストや時間の短さというメリットがあるが、それでも全身となれば半日は掛かる


まあ、それも目の前の奴を倒してからなんだけどさ


「グウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」


「ハッ、そんなに慌てなさんな。別に逃げたりはしねえよ」


傷付き瀕死と見たのか《タラスク》が首や足を出して近付いてくる


直ぐにでも起き上がれはするが、俺はそのタイミングを窺う


そして奴が右の前足を上に振り上げた瞬間、俺はバーニアを全開にして飛翔する


「コイツで、終わりだぁぁぁッ!!」


空中で姿勢制御し、背部のキャノン砲の弾倉から一発の砲弾を取り出す


それをまだ無事な右手に握らせ《タラスク》の甲羅に着地、先程まで開けていた穴に突っ込む


砲弾は肉の中に埋まってはいたがまだ浅すぎる、より深く押し込む為に腕を一度引き、勢いをつけて思いっきり更に押し込んだ


今のでイエローの表記だった右腕もレッドに変わり完全に死んだ


これ以上は押し込めない、だからこれで決まってくれと祈りつつレバー上部のボタンを二度押し込む


徹甲榴(APHE)弾、起爆!」


本来であればキャノン砲から空けた穴に撃ち込むつもりだった砲弾が機体からの信号を受けて起爆する


「ゴガアァァァァァァァァァァッ!?」


可能な限り奥深くまで突っ込んだ砲弾により《タラスク》の内臓が食い荒らされ、突っ込んだままの右腕からも衝撃が伝わってくる


これで終わらなければ機体を捨てて脱出という事になるが、どうなる?


「………………やった、のか?」


運よく心臓などの重要な臓器の近くで起爆したのだろうか、《タラスク》は力を失い地面へと倒れ伏す


それと同時に《マスタング》の右腕が傷口から抜け、手の吹き飛んだ手首が肉片をまとわりつかせながら露になる


思えば、腕を突っ込んだままにしていたのが良かったのかもしれないな、爆発が空いた穴の方に向かう事なく暴れまわる形になったのだから


「フゥー……疲れた……」


スキル《集中》を解除し、シートに思いっきりもたれ掛かって息を吐き出す


今回は死を覚悟したかもしれない、今までの相手が楽に倒せたから《マスタング》を使って此処まで追い込まれるのは予想外だ


「もう少し休んだら戻るか……」


正直、《集中》を解いた途端に《タラスク》の背で回転していたからか目が回ってきた


さっきまでは何ともなかったのはスキルのお陰なんだろうが、いきなり来るのは慣れないな


幸い、あれだけ高速回転しておきながら吐きそうな程ではないので少し我慢して待機する


酔いがやっと収まってから俺はボロボロの《マスタング》を歩かせ村の方へと戻っていった

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