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異世界召喚の傭兵操者《マーシナリー・ランナー》  作者: RABE
第二章 流星《メテオール》
15/72

陸皇亀タラスク

「そろそろ一時間よ。休憩にしましょう」


「そうだな。ちょっと足が疲れてきた気がする」


瑠璃の提案に従い、大人しくトレーラーを街道から離れた場所に停める


出発から一日が経ち、今も南へ向かって移動を続けている俺達だが、こうして一時間に一度くらいの頻度で休憩を挟んでいる


座りっぱなしで足の血流が悪くなるエコノミークラス症候群などを予防しての事だが、このトレーラーだと運転席から少し移動するだけでベッドもあるマイルームに行けるから楽だ


助手席に座っていた瑠璃も同じように立ち上がっては足を曲げ伸ばしして血流をよくしている、俺も少しハンガーまで歩いて血流をよくしようか


「それにしても、随分と南に来たんじゃないかしら?」


「そうだな。既にヴィレージュ王国の南側と言えるだろうが、まだ半分といったところか。まあ気長に行こう」


「そうね。魔物にも追手にも会わないし、気楽だわ」


「この間の村には既に教会の騎士連中が入ってたけどな。お陰でポーチに眠ってる毛皮の換金も出来ん」


取り敢えずは魔物を狩って魔核を手に入れCPに変換する事で飢えたりする心配はないが、やはり何かの時の為に現金を用意しておく必要はあるだろう


その為に地図で事前に街や村といった人の多い土地を探し、街や村といった点を線で結んでいくような移動をしている


だが街には入らず遠目に眺めているだけだった、教会の尖塔が防壁の向こうから見えている事から瑠璃が入るにはリスクがあり、村を見つけても周囲を警戒していたのか、青地に金の杯というリリウム教の旗と同じエンブレムを付けた《鉄騎兵》が数機で駐留していたりしたからだ


俺達はトレーラーを置いて徒歩で近付きバイザーの望遠機能を使って偵察するという手段を使っていたので位置は露呈していないが、時として街道沿いで見付ける事もあり、村で換金といった目的を果たす事が出来ないでいる


次の村には連中が居なければ良いんだが、もうこの国では望み薄かもしれないな


「次の村で換金出来なければいっそのこと街へ俺だけでも入って換金してくるか?」


「そうしましょう。私もファンタジー世界の街とか興味あったんだけど、仕方ないわよね」


「エクレニウス皇国に辿り着いてからのお楽しみって事になるかね。とはいえ本当に金がないと面倒だからな。皇国に入るのに入国税とかあったら払えないし、密入国は後々に面倒な事になりそうだし」


「それもだけど、ステータスの確認とか求められたらどうするの?私達、称号のところに《異世界人》ってあるわよ」


「それなんだよなあ……」


能力を覚醒させる時に使ったクリスタルのように、ステータスを確認する道具がないとは限らない


特に俺のステータスなんかは滅茶苦茶だ、傭兵(マーシナリー)操者(・ランナー)なんて職業もそれに関連するスキルも、他にない存在だから目立つ


いざとなれば《マスタング》の事を《鉄騎兵》と偽って《鉄騎兵》を扱う傭兵とでも名乗ろうか


「とはいえ、そればかりはその時次第だからなあ。隠したくはあるが、この国にいるよりマシだろう。例え皇国に伝わって政治利用されるにしても、魔族を受け入れている国なら此処よりはマシだ」


いざとなれば身分証を手に入れて更に他国に渡る手もある、皇国もわざわざ他国に渡った人間の為に情報を渡したりはしないだろう、逆に他国に囲われる可能性だってあるのだから


とはいえ情報がないから皇国がどんな手段を取るか分からない、静観してくれるだけなら嬉しいんだが、これもその時になるまで分からない


希望的観測なら幾らでも出来るが、先の展望が読めないっていうのも不安にはなるな、それでもやらなければならないんだが


「さて、休憩も終わりにして、先に進むか」


「もう良いの?もう少し休んだ方が良いと思うのだけど」


「他にやる事がないからな。落ち着いたら本でも買おうか」


「そういったアイテムは《ショップ》で売ってないのね」


「本棚はあってもダミーが並んでるだけのインテリアだからな。何か追加されていない限り、は……」


そういえば家具のページとかはあまり覗いてないな、直ぐには必要ないと考えて手付かずのままだ


この世界に来てから色々とゲームとの差異も把握してきていたが、まだ端末の全てを探った訳ではない


ならば俺の知らないアイテムが追加されているかもしれない、アーカイブが変化していたように


「《ショップ》を見てみようか。アイテムが追加されていないか、ちょっとな」


「そうね。休憩がてら覗いてみるのが良いと思うわ」


休憩時間の延長という訳で、俺は端末から《ショップ》を呼び出して追加されているアイテムがないか調べる


機体パーツの方は大抵のアイテムは知っている物で、特に追加された様子はない


だが家具や消耗品のページには色々と増えている、主にゲーム内では必要なかったが現実では必要になる物が多い


例えば筆記用具など、ゲーム内ではメモ機能があったから存在しなかったのにノートやペンが追加されていた


家具も掃除道具などがオマケとして増えていたりする、最早家具なのか疑問だが部屋が汚れたりしないゲームでは存在しなかったのは変わらない


他にも色々と追加されていたが、全部を見ていたらかなりの時間を消費してしまうので、この辺りで止めにしておこう


そろそろ移動を再開しなければならないしな


瑠璃も一緒に運転席の方へと向かい、助手席の方に座る


それから二時間程が経った頃だろうか、地図によると近くに村が存在するらしく、少し街道から離れて走行し始めた時に瑠璃が外の異変に気付いた


「ねえ、あの煙を見て!明らかに普通の煙じゃないわ!」


「マジだな……分かった、ちょっと偵察に行こう。武装するぞ」


昨日、余裕のある内にと俺が使う武器としてベルギーのFN社が開発したSCAR-H、通称MK17と呼ばれるバトルライフルを購入してある


口径は7,62×51mmのNATO弾仕様、装弾数30発、ピカティニィー・レールと呼ばれる規格によりグレネードランチャーやフラッシュライト等のアクセサリも装備可能、命中精度も、まあそれなりの物だ


今は安定性を高める為に銃身下部にフォアグリップ、近距離で素早く照準を合わせる為のダットサイトを付けているが一応は狙撃用に10倍の倍率のスコープも持ってきている


ただし前述の通りMK17は命中精度が少し悪いので本当に一応ではあるが


そして予備の弾倉を左右に三つずつの計六つと大振りのナイフを装備可能なタクティカルベストを着込む、追加装備でありゲーム内では銃弾のダメージ軽減の効果もあるように、この世界でもセラミックプレートが仕込まれていて軽量ながら防御力は高い


なおタクティカルベストは防弾チョッキ等の上から着るが、操者(ランナー)用のスーツ自体が軽い防弾性能を持っているので着る必要はない


そもそも普通のプレイヤーはタクティカルベストどころか歩兵用の装備を基本的に着けないのだが、今は素直にAFWの凝りすぎた品揃えに感謝だ


「よし、行くぞ」


「回復系のポーションとその材料も持ったわ。何かあっても治療は出来るわよ」


丁度いい位置にあった小高い丘の陰にトレーラーを停め、俺達は丘を登っていく


そして丘の頂上についた時、煙の発生源の様子が見下ろす形で目に入ってきた


「酷い有り様ね……」


「そうだな。単なる火事、には見えないな」


「盗賊とか、この世界にも居るのかしら?」


「アーカイブによるとかなりの数、盗賊団は存在するらしいぞ。ただ、これは盗賊の仕業じゃなさそうだ。建物の倒壊具合が人の手によるものとは思えない。それに村の向こう側を見てみろ、足跡だ」


狙撃用に持っていたスコープを瑠璃に渡し、望遠鏡代わりに使わせる


俺はバイザーの望遠機能を使っているが村の向こう側、かなり大きな川が見える方向にはかなり大きな足跡が見える


数は一体だろうが歩幅からして二足歩行じゃないな、かなり大型の四足以上の魔物だ


「村の外れ、多分だがこの村に住んでた村人が集まってる。魔物の姿が見えなくなって避難していたのが戻ってきたってところか」


「どうするの?私達には関係のない話かもしれないけど……」


そう言うが、瑠璃の言葉には明らかに何か出来る事があるならしたいという雰囲気が伝わってくる


この国の人間が魔族に対し敵対的で、瑠璃が魔族の吸血鬼になっている事から接触はあまりしたくないのだが、それで納得してはくれないだろう


それに俺も見て見ぬふりをするのは寝覚めが悪い、魔物だというなら《マスタング》が役に立つ可能性もあるからな


「旅人として話を聞くだけ聞いてみよう。十中八九、魔物による襲撃だろうから可能なら排除して魔核や素材を貰う。もしも出来るなら手持ちの毛皮や素材は安くで売っても良い。何にせよ、接触してみよう」


「そうね。ところで旅人ってどういう設定なの?」


「お前が錬金術師だから、俺はその護衛で良いだろう。旅をしながら素材集めをするのに護衛が居てもおかしくはあるまい」


魔族だとしてもそれならこの国に居る理由としては、苦しいにしても無くは無いだろう


これで敵対してくるようなら引き返せばいい、あの状況で敵対するような人間なら助ける義理はないし、俺の良心も痛まないからな


「行くぞ。一応、警戒はしておく。何かあれば即座に動くからな」


「そう、ね。私が魔族だものね」


「そういう事だ。まあ、それなら助ける義理はないし、逃げに徹する」


全ては相手の出方次第だが、出来れば友好的な相手である事を願おう


丘を下っていき、村人達が集まっている場所を目指す


やがて距離が詰まってくると向こうも俺達に気付いたのか、大人達が前に出て警戒した様子で見ていた


俺の服装は操者用のスーツにタクティカルベスト、手にはMK17で右太腿にHK45Tのホルスター、ベストにナイフ、頭にはバイザー、瑠璃は初めて能力を覚醒させた時のドレスで腰にポーチと錬金術用の大鍋と、かなり怪しさ満点の二人組だ、俺ならまず警戒するからそういった反応は仕方ない


この世界でも通用するかは分からないが、銃から手を放して両手を挙げて近付く


そして互いに会話が成り立ちそうな位置になったところで、リーダーらしき大柄の男が口を開いた


「何者だ?」


「二人で旅をしている。途中で煙が複数見えたから気になって立ち寄ったんだが、何があったんだ?」


「……魔物にやられたんだ。何か買いたかったなら残念だが、そんな余裕さえないんだ。無駄足だったな」


「そうだな。だが、見たところ怪我人が多いな。薬は足りてるのか?」


「足りてないさ。だがこんな有り様だ。金も、どれだけ見付かるか……」


まあ、元から農村らしきこの村ではそこまで裕福といった様子には見えないからな


村の向こう側に広がっていたんだろう、畑も魔物に踏み荒らされている


まだ他の方角にも畑は見えるが、この状況じゃあ落ち着いて農作業に戻ればしないだろうな


これからどうすれば良いのか、彼等の表情には未来に対する絶望しか見えない


怪我人も多く、彼等の怪我が治るまで作業は出来ない、でも食料は消費される、何よりも近くに魔物の死体がない事から襲撃してきた魔物はまだ生きている、それが戻ってきた時の事を考えれば村を捨てる事も視野に入れているのだろう


だが彼等の中に、他の場所への伝を持っている人間がどれだけいるだろうか、何も知らない土地で何の元手も無しにやっていくには不安しかないと思う


だが此処にはお人好しな吸血鬼が一人いる、少なくとも俺も敵対する気はない


だから俺は彼等に取引を持ち掛けた


「今、手持ちには幾つかのポーションと食料がある。こっちの求める物を提供してくれるなら、それらを格安、もしくは無料で渡してもいいぞ」


「……それは、何だ?」


「此処を襲った魔物の情報、それとソイツの魔核だ」


必要なのはその二つ、魔核が手に入れば食料はかなりの量を購入出来る、そして魔物が居なくなれば村としても助かる、どちらにしても損はない取引の筈だ

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