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狩り 2

その後、周囲が暗くなるまで魔物を狩っては大鍋で素材に分解しての繰り返しとなった


そして今、夜に備えてハンガーを出して端末の前に来て今日の成果を確認しているのだが


「思った以上に貯まらないな」


「そうね。マップで位置を確認して狩り続けてもこの調子なら、普通の人間はどれだけ狩れるのかしら?」


朝から昼休憩を挟んで一日ずっと狩りを行ったが、手に入った魔核を変換したポイントは全部で3,000弱、AF用の兵器で一番安い拳銃でも10,000CPとなれば、あまり良い結果とはいえない


それでも良かった点を挙げるとするならば瑠璃のレベルが3にまで上がった事と、命の駆け引きというVRよりリアルな経験を積めた事だろう


「まあ、まず最優先は食料だよな」


「そうね。予算としては、1,000CPくらいかしら?」


「装備を買う予定だからな。少なくとも銃があればより手早く仕留められるようになるだろう」


この森で狩れる魔物はゴブリンと、頭に一本の角が生えていたホーンウルフという魔物の、基本的には二種類だ


ゴブリンは雑魚で複数を一度に相手しても余裕で勝てるが、ウルフは森の中では向こうの方が慣れているからか攻撃を避けられる回数が多く、囲まれると少し危険だ


そのウルフの魔核だがCP換算で平均150CP、ゴブリンの50CPよりも効率の面では良い


だから銃で楽に仕留められれば明日は今日以上の稼ぎが狙える筈だ、ゴブリンは剣で十分


「じゃあまずは食料品ね。ウルフ肉があるから、野菜と主食になりそうな物を中心に見ていくわ」


「ああ、任せる。俺が料理すると全部茶色になるからな」


実は今回の狩りで意外だったのは肉食獣であるホーンウルフを《分解》したところ魔核の他に毛皮と肉を落とした事だ


毛皮は普通の事だから分かるのだが、肉は少し予想外だった


普段食べている肉は基本的には草食動物の物だ、肉食動物の肉がどんな味なのか、少し怖くはある


いや、肉や魚を食べる熊やアザラシも分類は肉食動物だが、食べられているか、食わず嫌いになるから止めておこう、どっかの国は犬食べるし


とはいえ俺の料理は基本的に焼くか炒めるしか出来ない、凝った味付けなんか出来ないから味付けも塩コショウや醤油、マヨネーズの類いだ


取り敢えず肉があれば焼けば食える、そして変な事さえしなければ不味い物は出来ない、そんな感じになる


その点、瑠璃は共働きの両親に代わって普段から妹や弟たちの食事を作っていたから腕は十分だ


仕事の内訳見ると俺が狩るだけで解体や調理は瑠璃となるから、もっと俺の仕事増やさないとな、ハンガーの掃除でもするようにしよう


「うーん、取り敢えずはこの辺りね。三日分は優にあるから、狩りが不調になっても少しは大丈夫よ」


「助かる。これでちゃんと予算通りってのが凄いな」


「寧ろ、予算に対して物価が安いのよ。食パン一斤で50CPって、ゴブリン一体でも狩れれば何とかパンは食べられるって事じゃない。どんな基準なのかしら?」


「あくまでもおまけ要素だったからな、料理。大抵のプレイヤーは空腹状態にならないようにする為だけにチューブ飯って感じだったし」


ゲーム内では空腹ゲージというのが存在していて、一定時間食料アイテムを食べなければ目眩のバッドステータスがついた


完全没入型(フルダイブ)VRゲームを始め、仮想現実では味覚まで再現していた


どれだけの量をゲーム内で食べても太らないというメリットがあり、それによりダイエットが可能なレベルで再現されていたが、AFWのプレイヤーの内、俺を含めた上位陣は『飯食ってる暇あるなら出撃だ!』の精神でチューブ飯、今考えればかなり寂しかったな


「安心しなさい、私がそんな食生活にはさせないわ」


「ありがとうな、本当に」


「良いのよ。アンタが狩らないと私は何も出来ないんだから。じゃあ、承認ボタンを押すわよ」


「そういえば《ショップ》機能を使うのは初めてだな。どんな感じになるんだ?」


まさかネットショッピングのように配達に来る訳ではないだろう


それでどうなるかと思ったら、ダンボールが部屋に置いてあるテーブルに現れた


いつ現れたのか分からないが、どうやら転送されるような形で出現するらしい


「ちゃんと入ってるわね。どうなってるのかしら?」


「さあ、魔法だからじゃないか?」


「そうね、魔法なら何でもありね。それで、早速調理してくるわ。ちょっと待ってなさいよ」


「頼んだ。俺は銃を探しとくわ」


ダンボールの中身が先程選んだ物である事を確認した瑠璃は調理の為にキッチンへと向かった


その間に俺は銃を見るが、歩兵用の武器はハンドガンやアサルトライフルといった基本的な物からミサイルやマシンガンといった大型の物まで多岐に渡る


たまに戦闘開始早々機体から降りて全員で歩兵戦をやったりしたが、それもまたゲームの楽しみかたの一つだ


そしてそんなゲームだから銃の扱いにも慣れている、リアル志向の高いゲームだったから銃の操作方法は現実と全く変わらない操作になっていたのだ


そんな銃の中で今の状況に合った物、威力があって瑠璃でも扱えるタイプ、そして森の中で取り回しが良い物か


「……コレと、コイツを念のために俺が持つか」


選んだ銃を三挺、その弾丸と共に選んで購入する


AFWはAFによる戦闘がメインである為、AF以外の物は基本的には安めにされているのが救いだろう


そしてその中で選んだ銃は専用のケースに入って送られてきた


中を開けて確認すると、確かに注文した物と同じであり、試しに持ってみるとゲームの中での感触と同じく、冷たく重い物だった


H(ヘッケラー)&K(コッホ) HK45Tが二挺、それにS(スミス)&W(ウィルソン) M500、その弾薬の45口径弾と50口径弾がそれぞれ100と50。注文通りだな」


AFWの銃は現実に存在する物と、架空の物があるが、この二つは現実の物だ


二種類選んだのには理由があるが、まずは試しに撃ってみてゲームとの差異を確かめよう


そう考えて俺はHK45Tを一つ持ち、弾倉を装填してハンガーの外に出る


再び開けた場所に展開しているハンガーだが、バイザーには遠巻きに此方の様子を窺っているゴブリンが映っている


バイザーの暗視装置によって夜間でも問題なく見えるが、威力を試すには丁度良い相手か


距離は大体で10メートル程、ゴブリンも夜目が利くらしいが、俺が何をしようとしているのかは分からないだろう


何しろ銃という武器の存在自体がないのだ、その小さな武器の威力なんて知りようもない


ゲームの中よりも重く感じる手の中の拳銃だが、バイザー越しの標的を狙うのはゲームと同じ、ゴブリンの頭部に狙いを定めた一撃は乾いた銃声と共に弾丸を撃ちだし、その頭蓋を砕いた


「まだ腕は鈍ってはいないか」


「ちょっと!今の音は何があったの!?」


「ああ、大丈夫だ。ちょっと試しに銃を撃っただけだから。威力は十分、明日から使えるぞ」


「そう、なら良かったわね。ところで、そろそろ出来るから戻ってきなさい」


「分かった。今日のメニューは?」


「ハンバーグよ。スキルの中に《料理》スキルがあるからか、手際が自分でも信じられないくらいに良かったわ」


「道理でこの短時間に……」


そもそもAGIが一般人よりは高い事も要因の一つかもしれない


とはいえ手早く調理が可能になったのは良い事なのだろう


もう一つも試したかったが呼ばれては仕方がない、大人しくハンガーの中へ戻る事にした


そしてホーンウルフの肉を使って作られたハンバーグだが、脂が少なくてあっさりとしていた


日本でよく食べていた肉汁溢れるハンバーグも美味かったが、これはこれで美味い


野菜類は付け合わせとした並んでいたが、少し残念なのはロールパンだという事か、米で食べたかった


まあナイフでパンを縦に割って、そこに挟んでハンバーガー気分で食べていたが、この辺りは瑠璃がフランス人とのハーフだと実感する一例だな


とはいえ美味しい食事を食べる事が出きるのには感謝している、俺一人なら此処でもチューブ飯だけの食生活を送っていてかもしれない


「ごちそうさま、美味しかったよ」


「お粗末様、口にあったようで良かったわ」


食後にコーヒーを貰い、ミルクと砂糖を入れて一口啜る


苦味が甘味で緩和されてようやく飲める、まだ俺はブラックでは飲めないからな


「明日はまた狩りだが、獲物がちょっと弱いから、明後日からは場所を移そうと思うんだが」


「そうね。正直、後ろから見ているだけでもアンタの動きには余裕があるわね。私も、もっと錬金術の素材を手に入れないといけないし、移動には賛成よ。ところで、《マスタング》で移動するの?」


「いや、ハンガーが自走可能だからな。速度は最高で60キロ程だが、大丈夫だろう。見た感じ、燃費は良さそうだし」


そもそもがプレイヤーの移動拠点なのだ、移動は可能だ


運転はゲームと同じなら俺が出来るし、この世界には道路交通法なんて物も存在しない、適当に走らせるだけなら簡単だ


後は他の人間の目だが、マップで近くに集落がある場合は迂回しよう、通行人とかに関しては道を通るのは極力避ける事にする、遠目に見て何かの魔物と勘違いしてくれる事を祈ろう


「良いわね、トレーラーで旅するのって。なんだかとっても楽しそうだわ」


「俺もだ。これが荒野とかならもっと映えるんだろうけどな」


行くのは緑溢れる平野だ、どうにもミスマッチに見えるが、仕方ない


とはいえそれは明後日の話で、明日はまた普通に狩りを行う、その為にも準備をしないとな


「さてと、今の内に銃の扱いをレクチャーしておこうか」


「大丈夫なのよね?その、反動とか……」


「大丈夫だろ、筋力が上がってるから力で抑え込める。俺も、コイツの試し撃ちをしてないからな」


「何でそんな馬鹿デカい銃も買ったのよ?」


「知ってるか?熊って、生半可な拳銃じゃあ効果ないんだぜ」


「熊……もしかして、出るの?」


「たまにな。どうにも外から迷い込んでくる個体がいるらしい。それも、年に十数回と結構な頻度で」


ランクにしてCとこの森のどの魔物よりも強い、バーサークグリズリーという種類の魔物がいるらしい


その名の通りに一度獲物と認識すれば止まらずに攻撃を仕掛けてくる狂暴な種だとか


俺が購入したM500というリボルバー拳銃は大きく、口径も50口径(約12.7ミリ)と拳銃の中では破格の大きさだ


というよりも『世界最強の威力を持つ拳銃』として開発されたのだ、弾も専用のマグナム弾であり、数発撃っただけで手が痺れ、場合によってはそれが数日続くというアホみたいなスペックを持っている


今なら向上した能力で扱えるだろうが、これはお守りみたいな物だ


像の頭蓋も砕くという力、バーサークグリズリーにも効果はあると思う


そうそうあるとは思わないが用心しておくに越したことはない、だから俺は瑠璃を伴って外へと射撃の練習へ向かったのである

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