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第4話─心が通ってるの。

ピピピピピピピピ……


朝になって、目覚ましが僕たちを眠りから覚ました。レイナは死神だった頃の名残りか、早朝には起きないし、僕も久々にたくさん体力を使ってなかなか起きれない。だから目覚ましをかけるようにした。運転手のおじさんからの言葉と残された時間を考えると、1日1日を無駄にしたくない…そう思ったから。


そして、なるべく多くの時間彼女と居られるように。


「ん…なにこのおと…。」


「おはよ…レイナ。」


「もう朝…?あと5ふん…。」


「だーめ、ほら起きて。」


僕は重い身体を起こして背伸びをした。


今日は午前中は雨で午後から晴れるらしいのでお昼までは映画鑑賞をして、午後から一緒に大掃除をする事にした。


「ねーぇ…。一緒にお風呂入る?」


「…なっ!?」


「ふふ、冗談だよーっ。」


「もう、朝からびっくりさせないでよ…。」


「ねぇ、今日はなにするの?」


「今日はお昼くらいまで一緒に映画観て、それから大掃除するよ。」


「大掃除?なんか楽しそうー!!」


「映画じゃないんだ…。」


「映画…って、何観るの?」


「ふふふ…。」


僕は引きこもっていた間、ほとんど娯楽がなかったので映画配信サイトに登録していた。ほとんどなんでも見放題だ。


「ほら、何か見たいのある?」


「お、多すぎ…選びきれないよこんなの…。」


「ゆっくりでいいよ。」


「わ、わかった。」


彼女は数え切れないほどの作品の中から、観たい映画を2つ選んだ。ひとつはホラー映画、もうひとつはミステリー映画だった。時間的に、2つ観終わった頃にはもうお昼になってしまう。


「先にホラー映画…観てみたい。」


「いいよ。でも、今日の夜眠れなくなっても知らないからね?」


「うぅ…。わ、わかった。」


そしてその映画を開いた…


数分後


「うわ…来そう。」


「えっ、ちょ、ちょっと、待っ」


バンッッッ!!!!


「ひぎゃっっっぁぁっ」


彼女は終始声にならない叫び声を出しながら泣いていた。映画が終わり、一息ついた頃。


「…。」


彼女は僕の腕にしがみついたまま離れようとせず、むしろ頭を埋めてきた。


「怖かった?」


「……こわかった。」


「よしよし。」


「ん…。」


僕が優しく頭を撫でると、彼女は安心したような様子で深く頭を埋めてきた。


「あったかい。」


彼女はそう言うとぐっすり眠りについてしまった。


「え…次の映画は…!?」


そのあとは結局僕ひとりでミステリー映画を見終えた。まだ雨は止みそうになかったので、少し休息がてら眠りについた…。


『おい!こんなだっせぇのでお金取るっていうのかよ!?』


『すみません、すぐ作り直しますのでもう少々お待ちを…』


『もういい!返金しろ返金!!こんなの要らない!!』


……僕は引きこもりになった。両親も誰もおらず施設で育ち、基本的なことはそこで習うことができたものの、ちゃんとした学校なんて行けず、そんなやつには働く場所もなかった。受け入れてくれる所…といえば最悪の労働環境の場所か、給料がありえないほど安いバイトくらいだった。


『もっと真面目にできねぇのかよ!?!?』


『お前は本当に頭が悪いな。』


『どうしてこんなことも出来ないんだ!』


真面目に働いたつもりでも、僕はまともな人間にはなれなかった。誰にも愛されず、誰からも目を向けてもらうことはなかった。たった1人を除いて。


『ねぇ、その本何読んでるの?』


僕より少し年上くらいの男の子だった。施設で出会ってからずっと一緒だった。どこへ行くにも、どこで働くにも一緒だったんだ。


『また怒られちゃったのか…。まぁ、でも気にする必要はないよ。お前はちゃんと真面目にやってるんだから。』


何回も怒られた後、何回も慰めてくれた。こんな僕を、何も出来ない僕を。そんな僕と一緒に居てくれた。


『大丈夫か?お前、無理し過ぎたんだよ。少し家で休め。その間、俺が飯でもなんでも届けてやるから。』


僕が鬱になってしまって、家から出ることも、人と話すこともままならなくなって働けなくなった時、僕のことをいちばん支えてくれた。


『ごめん、これから少し仕事が忙しくなって、こっには帰って来れなくなる。』


仕事の転勤が決まって遠くへ行ってしまったその友達は、もう僕の所には来なくなってしまった。


そして、転勤先で事故が起きた。


横断歩道で、その友達が渡っている最中にブレーキが故障したトラックが真横から猛スピードで走ってきて…助からなかった。


即死だったらしい。そして僕はたしかその友達の転勤先に…行ったんだっけ?もう、あまり覚えていない。でも、そこからは完全に1人になってしまった。


それから僕はご飯もまともに食べられなくなってしまって、どうしようも無くなってしまった時、家でできる仕事というものを見つけた。

僕は早速デザイナーというものに手をつけてみたが、才能が無かったみたいだった。ださい、こんなの要らない…と何度も言われた。中には僕の作品を気に入ってくれた人も居たけれど、大半は使ってくれなかった。


「ね……ぇ、起…………きて。」


「あ………め止んだよ。」


目を開けると眠そうな顔をした彼女がいた。そして、”雨が止んだから起きて”と、僕を起こしてくれた。


「おはよ…レイナ。」


「大丈夫?結構うなされてたみたいだけど…。」


「…大丈夫だよ。」


「…。」


彼女は優しく抱きしめてくれた。そして、慰めるように頭を撫でてくれた。


「よしよし…大丈夫だから。」


多分、彼女は少し心が読めるのかもしれない。元々はこの人は死神だったんだ。だからきっと、ありえない話ではないはず。


「ありがと…。」


「いいよ…。」


「外、晴れたから一緒に大掃除しよ?」


「うん。しよう。」


「よーしっ、じゃあまずはいらないものをいっぱい捨てなきゃね。」


彼女は率先して大掃除を手伝ってくれた。まずいらなくなったものや溜まっていたゴミたちを一気に纏めてゴミ出しをした。次に、一度買い物に行って色々な掃除道具を手に入れたあと、床や壁を一気に洗い、ほかにも汚れていた所を綺麗にした。


そして数時間後


「ふー…片付いたかな!」


「見違えるほど綺麗になった…。」


「ふふ、私のおかげ〜!」


「あっ、もう…独り占めよくない!」


「ふふ〜んっ。」


「はぁ…疲れた…。」


バタッ…


「ちょっと、大丈夫?」


「もう動けない…。」


「全く……あなたから掃除するーって言い出したくせにー。」


「ごめ…Z z z …。」


「あーあ、寝ちゃった。こんな所で寝たら風邪引いちゃうよ………」


それから、数時間ほど経ったのだろうか…。どうやらそのまま寝落ちてしまっていたみたいだ。目が覚めると電気が消えていて、お布団に寝かされていた。僕の隣には熟睡中の彼女がいた。


「Zzz …。」


「可愛い寝顔だな。」


口からつい零れたその言葉に、彼女は少しビクッとした気がした。もしかして、起きているのだろうか?


「…寝てる?」


コクッ


彼女は小さく頷いた。そうか、寝ているのか………とはならない。どう考えても起きている。


「起きてるじゃん…。」


「お、おきてない!」


「嘘。起きてる。」


「…うー。」


彼女はそう言うと僕に抱きついて耳元で言った。


「寂しくて…寝れるわけないよ。」


…2日間、四六時中一緒に居たからだろうか。でも、たった2日だ。それだけでそんなに寂しくなるだろうか?


「…ばか。」


彼女はもっと強く抱きしめてきた。まるで僕の背骨を折るような勢いで。


「…レイナって、僕の心読めてるの?」


「…え?」


彼女は僕の言葉を聞いてぽかんとした表情で見つめてきた。どうやら、心を読めているわけではないみたいだ。


「…ぷぷっ。」


彼女が突然笑いだした。


「ど、どうしたのっ?」


「いや、なんだか…面白くって。」


「面白い…!?」


「うん。君って、何も知らないんだなって。」


「え、えぇ?」


「心が読めるんじゃなくって、心が通ってるの」


「だって、恋人だから。」


「そ、そっか…。」


彼女は戸惑っている僕を見て愛らしげに微笑んでいた。僕は…少し恥ずかしくなった。


「ほら、寝よう?もう夜中だよ。」


「う、うん。」


「ふふ、おやすみ。」


「おやすみ…レイナ。またあした。」


昨日と同じだったら僕が言っていたであろう言葉を彼女が言っていることに違和感を感じたが、同時に僕に似てきたような感じがして嬉しくなった。


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