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【連載版】空気の読める聖女は今日でサービス終了です  作者: 秋色mai @ノラ令嬢発売中!


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21/26

21. 結婚式は


 結婚式の日が来てしまいました……。

 あれからキスに慣れたかといえばそんなことはなく。寝る前などに何度か試してみようとしましたが、逆にライアン様が頷きませんでした。


『それは良くない』

『何が良くないんです!?』


 良くないの一点張りでそれ以上言わないので、諦めました。そのくせ昼間にライアン様からの不意打ちは多いので、不服です。

 控え室でそんなことを思い出していると、ノックなしにドアが開きました。少し身構えましたが、顔を見てすぐに肩の力を抜きます。


「……綺麗だ」


 ライアン様でした。

 おっしゃる通りで、私も綺麗だと思います。デザイナーさんのウェディングドレスは白くてふわふわでひらひらで、布の量的に重いはずなのに全然そんな気がしません。


「エステルの良さを引き立てている」

「え、そっちですか?」

「それ以外の何がある」


 相変わらずの大真面目な顔のライアン様に、自然と口元が緩みます。ブレない人です。普段は黒い服を着ていることが多いですが、真っ白なスーツも似合います。


「ライアン様も、かっこいいですよ」

「そうか?」


 謎に袖や足元を確認し始めるところも含めて。


「そろそろですか?」

「ああ、そろそろだ」


 手を差し伸べられて、思わず握手をしてしまいました。


「最初に会った時みたいだな」

「同じ状況だと思ったみたいです」

「そうか」


 仕切り直して、手を取ります。

 孤児の私にはバージンロードを一緒に歩く人はおりませんので、最初からライアン様と一緒に歩きます。


 ドアが開くと、たくさんの人がこちらを見ました。聖女だった頃はこれ以上の人に見られていたはずなのに、なんだか怖く感じます。


「大丈夫だ。前だけを」


 ライアン様が小声で仰いました。その通りに視線を上げます。

 辺境伯領で一番大きく格式の高い聖堂は美しく、前に立つ司教様は小さいです。ふがふがしてらっしゃいます。横の最前列にいらっしゃるヴェクサン家の方々を見て、少し落ち着きました。


 事前に聞いていた通りに式は進みます。聖女として何度も立ち会ってきたはずなのに、不思議な感覚です。


 もし聖女のままだったら、私は王太子と結婚していたのでしょうか。教皇は金に眩んで差し出すかもしれませんが、聖女性を尊ぶ人は断固として渡さず、内部が荒れたかもしれません。そして私はきっと、民衆の納得する形を……。


「新郎ライアン・ヴェクサン。 貴方はここにいるエステルを、悲しみ深い時も喜びに充ちた時も共に過ごし、愛をもって互いに支えあうことを誓いますか?」

「誓います」


 ライアン様の力強い声で、想像から現実に戻ってきました。

 今の私に、もし、なんていりません。


「新婦エステル。貴女もまたここにいるライアンを、悲しみ深い時も 喜びに充ちた時も共に過ごし 愛をもって互いに支えあうことを誓いますか?」

「誓います」


 ライアン様は、聖女ではなく、私を雇い、慈しみ、愛すると誓ってくれたのです。

 私がすべきは、それに応える事でしょう。


「では、女神様との誓約を」


 ライアン様が私の肩に優しく手を置いて、かがみこみます。

 私は急に顔がこわばって、手の置き場に迷います。殴らないようにと考えて、私もライアン様の腕をがっしりと掴みました。太いので掴みづらいですが、そこはこの無駄な力の見せ所です。

 でも、想像していた感触は、なくて。


「フッ……ハハッ」


 ライアン様の笑い声が響きます。眉尻は下がり、口角は上がった……幸せそうで楽しそうな笑顔が目に入ります。


「なっ、なんで笑って!」

「凄い顔だ」


 ……凄い顔。

 確かに、目は無くなるんじゃないかってほどぎゅっと瞑っていますし、唇は変に窄めてしまっているかもしれませんが、それでも、そんな笑うことないじゃないで……いいえ、無茶を言いました。想像すると笑わない方が無理ですね。でも。


「緊張しているんです!」

「そうだな、うん」


 ギャンと鳴いてもライアン様は楽しそうに優しく微笑むだけ。


「エステルらしい」


 ライアン様は私の緊張が緩んだ瞬間を見逃さず、丁寧に口付けました。

 私は口元を押さえ、席からは歓声が上がります。


「新たな夫婦に妖精の祝福あれ」



 ────その瞬間、教会のガラスが全て割れました。

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