2. サービス終了です
次、次、次。どさくさに紛れて鬱憤をぶつけてきた人には、私の鬱憤ごとお返しします。指示されていた人には、まぁ、少々手心を加えてお返しします。
聖女とはいえ、私は元々孤児です。由緒もへったくれもありません。飯を奪われたら奪い返す、殴られたら殴り返す、強者こそが正義。
殴り終えたら汚れた手をはたき、声と記憶を頼り会場を見まわします。
「懺悔室で人の告白を聞くのも、本当は嫌です」
中でも浮気常習犯の伯爵、これだけの騒ぎだと言うのに、見目のよろしい給仕係を口説いて、まったく反省していませんね。懺悔室にやってくるのは早朝だけですもんね。
「……神は許しても奥さんや裏切った相手が許すかどうかなんてわからないでしょう。罪の意識があるのなら、こちらに来る前にご本人に謝ってきてください」
聖女が守秘義務を守るのが当たり前ではなければ、全員暴露して地獄に落としています。
毎度毎度、どの女性をどう抱いたとか気分が悪くて仕方がないんですけど。詳細を語ってくるの、私だとわかってるからですよね?
「ねぇ、心当たりのある皆様?」
私は誰を示しているわけではありませんが、反応からしてバレそうな雰囲気ですね。自業自得です。骨は拾いません。
腹の虫が治まったところで、腹の音が鳴ったので、全ての元凶である教皇様を睨みつけます。
「そして教皇様。うっすいスープとパンが清貧だと仰るのなら、なぜご自身は片手にワインをお持ちなのでしょう。清貧な食事は足りません。私はまだ十代です。肉を食わせてください、肉を」
反抗すると思っていなかったのか、教皇様は目を見開いていますが、当たり前でしょう。
聖女との神託を受けた時は嬉しかったです。何も考えず抵抗せずに連れて行かれました。もう食べるものにも寝るところにも困らなくていいと思いましたから。
「その上、自分は空腹なのに、朝早くからお恵みまでしなければならないとか。自分は食べられないパンを好き好んで朝から配り歩くわけないでしょう?」
とんだ馬鹿でした。生き地獄の間違いでした。
教皇様は私を利用し、私腹を肥やすことしか考えていませんでした。悪辣な環境下においても、良心が傷まない人でした。良心なんてありませんでした。
「まず私は朝が弱いのですけど?? できればお日様が頭の真上にある時間まで寝たいですけど?」
お祈りも半分寝ながらやっていました。朝は眩暈がしますし、まだ起きるべきではないと体が言っていました。キツかったです。
「そもそもこの服だって、機能性はカスな上に寒いんですよ。私だって羽毛や羊毛たっぷりの冬服が着たいに決まってますよね?」
聖女なのに口が悪いって顔はやめてください。あなたこそ、女神様を信じず、華美で美食家で賭博好きで最悪なくせに。
裸足で大理石の上を歩かされている身にもなってください。今すぐそのご立派な靴を脱げ。
「最後に、王太子殿下。勝手に断罪して勝手に結婚とか良い加減にしてくださいませんか? 権威のために貴方様の側にいるのを強制されていただけです。結婚する流れとか知りません。恥を知ってください」
貴方様に媚を売ったことなんてありません。王妃の座を望んだこともありません。貴方様が望まれたからできるだけ行動を共にして他者を助け、その感謝を横取りされていただけです。他ならぬ貴方様によって。
「……もう、空気の読める聖女は今日でサービス終了でいいですか?」




