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それでも、止める? ~終わり続ける世界で、たった一人がすべてを壊し始めた~  作者: Studio No.13
第1章 例外との出会い

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第8話「奥」

 境界の奥は、静かだった。

 あれほど歪んでいた空間が、嘘みたいに整っている。

 音もない。

 風もない。

 ただ。

 存在だけが、そこにある。

「……なんだ、ここ」

 思わず呟く。

 違和感がある。

 だが。

 今まで見てきた“壊れた世界”とは違う。

(……整いすぎている)

 不自然なほどに。

 ズレがない。

 歪みもない。

 だからこそ。

 異常だった。

 足を進める。

 地面はある。

 踏みしめた感覚もある。

 現実に近い。

 それでも。

 どこか違う。

 隣で、ミナが辺りを見回した。

「ここ……変」

「どこがだ」

「全部」

 即答だった。

 思わず、少しだけ笑いそうになる。

(……正しい)

 ここは。

 何もかもが“正しすぎる”。

 そのとき。

 視界の奥に、何かが見えた。

「……あれ」

 ミナが指をさす。

 そこに、“それ”はあった。

 巨大な、何か。

 形は曖昧。

 輪郭も定まらない。

 だが。

 確かに、そこにある。

 空間の中心。

 すべてが、そこへ集まっているようだった。

(……これが)

 喉が乾く。

(起点)

 今まで。

 ここまで来ることはできなかった。

 いつも。

 その手前で終わっていた。

 だが。

 今は見えている。

「……近づくぞ」

 ミナが頷く。

 二人で歩き出す。

 不思議と。

 歩幅が揃っていた。

 一歩。

 二歩。

 距離が縮まる。

 その瞬間。

 “それ”が、動いた。

「――っ」

 空間が揺れる。

 視界が歪む。

 何もしていない。

 なのに。

 こちらだけが、変わっていく。

 足元が消える。

 重力が反転する。

 上下の感覚が消えていく。

「……っ、クロノ!」

 ミナの声。

 だが。

 位置が分からない。

 音だけが遠ざかる。

(干渉されてる)

 あれは触れていない。

 ただ。

 存在するだけで、書き換えてくる。

 世界が。

 崩れては組み直される。

 知らない景色。

 見覚えのある終わり。

 記憶が混ざる。

 何度も見た崩壊。

 何度も迎えた終わり。

 その全部が、一斉に流れ込む。

「……やめろ」

 思考が削れる。

 意識が奪われる。

(また、ここで終わる)

 そう思った瞬間。

「クロノ!」

 手を掴まれた。

 世界が戻る。

 ミナだった。

 膝を震わせながら。

 それでも、立っている。

「……だめ」

 荒い呼吸のまま。

「これ……近づいちゃだめ」

 直感。

 だが。

 それだけじゃない。

 ミナは、何かを見ていた。

「何を見ている」

「……わかんない」

 首を振る。

「でも……これ、違う」

「違う?」

「終わりじゃない」

 その言葉に。

 胸の奥が、小さく揺れた。

「……続きがある感じ」

 沈黙が落ちる。

 目の前の“それ”を見る。

 終わりじゃない。

 むしろ――

「……始まりか」

 自然と、言葉が漏れた。

 何度壊れても。

 何度終わっても。

 ここだけは、終わっていない。

「クロノ」

 ミナが、小さく呼ぶ。

「これ……変えられる?」

 今までなら。

 答えは決まっていた。

 無理だと。

 何度も試したと。

 結果は変わらなかったと。

 でも。

「……分からない」

 初めて。

 そう答えた。

「でも」

 一歩、前へ出る。

「やる価値はある」

 ミナが、少しだけ笑う。

「うん」

 その瞬間。

 “それ”が、わずかに脈打った。

 まるで。

 二人の存在に応えるように。

 世界の終わりの、その奥で。

 何かが、静かに動き始めていた。

読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、フォローや評価いただけると嬉しいです。

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