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それでも、止める? ~終わり続ける世界で、たった一人がすべてを壊し始めた~  作者: Studio No.13
第1章 例外との出会い

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第4話「起点」

世界は、まだ壊れていない。

それだけで、異常だった。

空はひび割れたまま止まり、街は崩れかけの形で静止している。

時間が引き延ばされたみたいに、すべてが中途半端に残っていた。

「……どれくらい持つと思う?」

ミナの声。

「分からない」

即答する。

「でも、長くはない」

視線を上げる。

ひびの奥で、黒がゆっくりと脈打っている。

止まっているようで、止まっていない。

(侵食は続いてる)

静かに。

確実に。

境界を溶かすように、それは広がっている。

「ねえ」

ミナが袖を引く。

「さっきの、やってみる?」

軽い調子だった。

だが、それしかないのも事実だ。

「……やれ」

短く言う。

ミナは少しだけ真剣な顔になって、空を見上げる。

「えっと……止まれ?」

何も起きない。

沈黙。

「……違う」

「だよね」

あっさり引く。

「もう一回やれ」

「うん」

今度は目を閉じる。

何かを思い出すように。

「……逃げなきゃって思ったとき、だったよね」

呟く。

空間は、変わらない。

ひびの奥の黒が、わずかに広がる。

「ダメか」

「うーん……」

ミナは首をかしげる。

「怖かったから、かな」

「何が」

「全部。壊れるの」

その言葉。

感情。

(……トリガーはそこか?)

極限状態。

強い恐怖。

無意識の選択。

理屈は組める。

だが――

「再現性がない」

それでは意味がない。

「じゃあ、怖くなればいい?」

「やめろ」

即座に否定する。

無理に引き出すものじゃない。

壊れる。

何が、とは言わない。

そのとき。

地面の影が、揺れた。

「……っ」

視線を落とす。

影だけが、遅れて動く。

「え?」

ミナも気づく。

周囲の建物は止まっている。

空も止まっている。

なのに。

影だけが、ズレる。

(侵食が深くなってる)

境界が、曖昧になってきている。

安全じゃない。

むしろ――

黒は、はっきりとこちら側に近づいている。

(侵食が――違う)

一瞬の違和感。

思考が、書き換わる。

(これは、侵略だ)

「加速してるな」

「え、やばくない?」

「やばい」

即答する。

ひびの奥にあったはずの黒が、距離を失っている。

向こう側ではない。

もう、すぐそこだ。

「ミナ」

「うん?」

「一回でいい。さっきみたいにやれ」

「だからそれが分かんないって!」

少しだけ声を荒げる。

焦りが出ている。

当然だ。

世界が壊れる中で、“やり方不明の力”を使えと言われている。

普通なら、折れる。

でも。

「……でも」

ミナは、空を見る。

「止めたいとは思ってるよ」

その一言。

それだけだった。

空間が、歪む。

「っ――!」

ひびが、わずかに縮む。

黒の侵食が、ほんの一瞬だけ押し返される。

成功。

だが――

次の瞬間、戻る。

むしろ、さっきより濃く、重く広がる。

「……っ、はあ……」

ミナが息を吐く。

「今の……できた?」

その直後。

「……あれ?」

ミナが、少しだけ眉をひそめる。

「なんか……変な感じした」

——来た。

ほんのわずかだが。

確実に、“何かが削れている”。

「一瞬だけな」

使える。

だが、不安定すぎる。

このままじゃ意味がない。

(条件が必要だ)

(そして——代償もある)

何が引き金で。

どうすれば再現できるのか。

それを掴まない限り――

勝てない。

「……なあ」

口を開く。

「これには“起点”がある」

「きてん?」

「始まりだ」

空を指す。

ひびの奥。

黒の中心。

「あれが、どこから来てるのか」

「何で起きてるのか」

「それが分かれば、止められる可能性がある」

ミナは少し考えて、

「じゃあ、探す?」

軽い。

いつも通りの調子。

だが。

「……ああ」

それでいい。

初めてだ。

こんな選択をするのは。

終わりを待つんじゃない。

終わりに、向かう。

「次の崩壊までに」

「起点を見つける」

それが――今回のルールだ。

黒が、さらに広がる。

その奥で。

“何か”が、こちらを見ていた。

世界が、軋みを上げる。

残された時間は、少ない。

でも。

もう、止まらない。

——止まれない。

「……行くぞ」

「うん!」

止まった世界の中で。

初めて、“先に進む”ために動き出した。

読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、フォローや評価いただけると嬉しいです。

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