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それでも、止める? ~終わり続ける世界で、たった一人がすべてを壊し始めた~  作者: Studio No.13
第1章 例外との出会い

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第3話「止まった世界」

音が、消えていた。

風も、崩れる音も、悲鳴もない。

空はひび割れたまま、止まっている。

まるで世界そのものが“呼吸をやめた”みたいに。

——なのに。

ミナだけが、動いている。

「……なんで」

思わず声が漏れる。

こんなことは、一度もなかった。

どの世界でも、最後は必ず——完全に壊れた。

途中で止まるなんて、ありえない。

隣に立つ少女を見る。

ミナは、ただ空を見上げていた。

「ねえ」

俺は低く呼びかける。

「これ、お前がやったのか?」

「え?」

ミナは振り返る。

本当に分かっていない顔だった。

「わかんない。でも……」

彼女は少しだけ考えて、

「逃げなきゃって思った」

それだけだった。

理屈も理由もない。

ただ“そう思ったから動いた”。

(……ふざけてる)

何千回も繰り返してきた。

どの選択も、どの行動も、全部試した。

結果は全部同じだった。

なのに。

この少女は、それを——壊した。

「ありえない……」

呟きながら、空を見る。

ひびの奥で、黒い“何か”が滲んでいる。

止まっている、はずだった。

だが。

「……動いてる」

ほんのわずかに。

黒が、広がった。

「え?」

ミナも気づく。

ひびの奥。

世界の外側みたいな場所で、それはゆっくりと形を変えている。

まるで——こちらを見ているみたいに。

「終わってない」

自然と口から出た。

「止まっただけだ」

「……また来る」

その言葉に、ミナは少しだけ黙る。

「じゃあさ」

彼女は、あっさり言った。

「止めればいいんだよ」

その言葉。

何度も、何百回も聞いてきた言葉。

誰もが言った。

そして、誰もできなかった。

だから俺は——それを否定してきた。

はずだった。

「……無理だ」

言葉が、少しだけ鈍る。

「無理じゃないよ」

ミナは即答する。

「だって、さっき止まったでしょ?」

根拠になっていない。

論理も破綻している。

なのに。

(否定できない)

事実として、止まっている。

今、この世界はまだ“存在している”。

それがすべてだった。

「お前は……」

言いかけて、止まる。

——何なんだ?

その問いに、まだ答えはない。

そのとき。

空のひびが、大きく脈打った。

「っ!」

黒が、一気に広がる。

ミナの足元の影が揺れる。

「来る」

直感だった。

次の“崩壊”が。

ミナは、ぎゅっと拳を握る。

「……じゃあ、もう一回やる」

「は?」

「止める」

その目に、迷いはなかった。

理由も、方法も知らないくせに。

ただ“できると思っている”。

(……なんだ、それ)

理解できない。

理解したくもない。

でも。

ほんの少しだけ。

ほんの、わずかに。

胸の奥で——何かが揺れた。

黒が、さらに広がる。

世界が、再び壊れ始める。

その瞬間。

ミナが手を伸ばした。

「——待って」

空間が、歪む。

ひびが、一瞬だけ止まる。

ほんのわずか。

本当に、ほんの一瞬だけ。

だが確かに——“現実が書き換わった”。

沈黙。

「……今の」

言葉が出ない。

理解が追いつかない。

ミナは、ぽかんと自分の手を見ていた。

「……え?」

一拍。

「……あれ?」

眉をひそめる。

「今、なんで手伸ばしたんだっけ」

——違う。

さっきまでの流れを、忘れている。

使うたびに。

何かが、消えている。

記憶か。

感覚か。

それとも——

「でも、止まってるよね」

ミナは、少しだけ笑う。

「よかったじゃん」

——無自覚。

だからこそ、危険だ。

(こいつが——鍵だ)

世界を壊す“何か”と。

それを止める“何か”。

その両方に——繋がっている。

「……なあ」

ゆっくりと口を開く。

「次が来る前に」

「それ、調べるぞ」

ミナはきょとんとしてから、

「うん、いいよ!」

と笑った。

軽すぎる返事。

だが——

(それでいいのかもしれない)

空のひびが、再び動き出す。

止まっていた世界が、少しずつ崩れ始める。

終わりは、まだ来ていない。

だが。

初めて。

ほんの少しだけ——抗える気がした。

……その代わりに。

何かを、失いながら。

空の奥で。

黒が、わずかに形を変える。

——近づいている。

読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、フォローや評価いただけると嬉しいです。

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