第2話「例外の証明」
——手を引かれる。
強く、無理やり。
「走って!」
ミナの声だけが、はっきりと届く。
周囲の景色は、静かに消えていく。
校舎の端が、音もなく欠けていく。
アスファルトが、色を失い、輪郭ごと削られていく。
——ここまでは、いつも通りだ。
なのに。
——僕だけが、そう思えなかった。
「なんで、お前……動けるんだよ」
「そんなの分かんない!」
即答だった。
「でも、止まったらダメな気がするの!」
——感覚で動いている。
ありえない。
そんな存在は、これまで一度も——
足元が崩れる。
落ちる。
——そのまま、終わるはずだった。
なのに。
ミナが僕を引き戻す。
——初めて、生き延びている。
「こっち!」
ミナが、迷いなく踏み出す。
何もない空間へ。
だが、その足は沈まない。
見えない“道”が、そこに“存在している”。
「……ありえない」
それでも、僕はその後を追う。
一歩。
二歩。
三歩。
崩れない。
世界が、僕の知っている法則から外れていく。
ミナが手を伸ばす。
その手の向こうで、世界がさらに崩れていく。
空が割れ、黒い“何か”が広がる。
——終わりは、すぐそこだ。
なのに。
僕たちは、まだ進んでいる。
「なんで、そんなことができる」
「分かんない」
ミナは言う。
「でも、止まったら終わるって思った」
——それだけで。
世界が、変わっている。
「……ふざけるなよ」
何千回も、何万回も。
僕は失敗してきた。
なのに。
「……でも」
口にしてしまう。
「まだ、終わってない」
それは、初めての言葉だった。
その瞬間。
世界が、止まった。
崩壊が、ぴたりと止まる。
音も、光も、すべてが静止する。
——初めてだ。
完全に。
止まった。
……なのに。
空の奥で。
“何か”だけが、動いていた。
「お前……何者だ?」
「ただの高校生だけど?」
——違う。
そんなはずがない。
だって、こいつは。
世界を止めた。
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