第39話「青に映るもの」
青だけが。
残っていた。
静かに。
揺れている。
「……」
さっきまで。
そこにあった白は。
もうない。
拾った。
そのはずだった。
なのに。
手の中には。
何も残っていない。
残っているのは。
目の前の青だけ。
水面みたいに。
静かに揺れていた。
クロノは。
ゆっくりと手を伸ばく。
触れる。
青が揺れる。
瓦礫。
煙。
崩れた校舎。
空は黒い。
知っている。
知らないはずなのに。
知っていた。
その景色の奥で。
一人の男が立っていた。
後ろ姿しか見えない。
服も。
背格好も。
自分によく似ていた。
「え……俺?」
声は届かない。
その先には。
黒。
男は。
一歩。
また一歩。
歩く。
「……っ」
傷だらけだった。
それでも。
止まらない。
その姿から。
目が離せなかった。
青が揺れる。
景色が崩れる。
瓦礫が。
煙が。
黒が。
ゆっくりと溶けていく。
白い空間だった。
クロノは。
その場に立ち尽くしていた。
「クロノ。」
ミナの声。
すぐ近く。
「大丈夫?」
肩へ手が触れる。
そこでようやく。
息をしていなかったことに気づいた。
「……見えた。」
小さく呟く。
「何が?」
少しだけ。
沈黙。
「……俺。」
少しだけ首を振る。
「……いや。」
「多分、俺。」
ミナが首を傾げる。
「でも。」
「……何かが、違った。 」
言葉がまとまらない。
違う。
同じ。
どちらも正しい気がした。
ただ。
一つだけ。
どうしても。
分からないことがある。
「……馬鹿だ。」
「え?」
「もう。」
青を見つめる。
「あんなになってまで。」
少しだけ笑う。
自嘲じゃない。
呆れたわけでもない。
理解できない。
そんな顔だった。
「……なんで。」
誰に聞くでもなく。
呟く。
「なんで、諦めなかった。」
青は。
何も答えない。
ただ。
一度だけ。
静かに揺れた。
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