第40話「届かなかった声」
青は。
動かない。
クロノは。
もう一度だけ。
手を伸ばす。
触れた。
動かない。
……
一度だけ。
揺れた。
瓦礫。
煙。
崩れた校舎。
さっきと同じ景色。
男は。
まだ歩いていた。
一歩。
また一歩。
足を引きずりながら。
それでも。
止まらない。
「……」
今のクロノは。
ただ見ている。
男の視線は。
黒じゃなかった。
その先。
瓦礫の陰。
「……!」
誰かがいた。
小さな影。
こちらへ。
必死に手を伸ばしている。
声は。
聞こえない。
男は。
迷わなかった。
黒へ向かっていた足を。
そのまま。
かげへ向ける。
「っ!」
クロノは。
思わず一歩踏み出した。
届くはずがない。
分かっている。
それでも。
「行くな……!」
初めて。
声が漏れた。
男は振り返らない。
ただ。
走った。
瓦礫を越えて。
手を伸ばく。
その瞬間。
黒が。
全てを呑み込んだ。
青が揺れる。
景色が。
白へ溶けていく。
クロノは。
肩で息をしていた。
「クロノ!」
ミナが駆け寄る。
「今度は、何が見えたの?」
すぐには答えられない。
さっきまで。
分からなかった。
どうして。
あんなになってまで。
諦めなかったのか。
でも。
今なら。
少しだけ。
分かる。
「……助けたかったんだ。」
「え?」
「勝ちたかったんじゃない。」
小さく首を振る。
「止めたかったんでもない。」
青を見る。
「ただ。」
少しだけ。
息を吸う。
青は。
また。
静かに揺れていた。
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