第37話「積み重ね」
落ちている。
いや。
沈んでいる。
いったい。
どこへ。
分からない。
光の中。
白の中。
音もなく。
どくん。
肩が脈打つ。
その瞬間。
止まった。
足が地面につく。
……地面?
違う。
見渡す。
白。
果てが見えない。
ただ。
今までとは違った。
足元。
無数の白が並んでいる。
ひとつ。
またひとつ。
拾えそうな距離に。
「……これ」
気付けば。
白へ手を伸ばしていた。
しゃがみ込む。
触れた。
『できた!』
幼い声。
知らない子供。
小さな手で。
誰かに何かを見せている。
次の白。
『ありがとう』
泣きそうな老人。
笑っていた。
次。
『また明日!』
走っていく子供たち。
次。
『大丈夫』
誰かの背中を叩く手。
クロノは固まる。
「……違う」
これは。
俺じゃない。
人影の記憶でもない。
知らない。
全部。
知らない人だ。
それでも。
胸が少しだけ温かい。
人影の声が響く。
『それも』
『置かれたものだ』
「……」
『願い』
ひとつ。
『約束』
またひとつ。
白が揺れる。
またひとつ。
「全部……」
『拾われなかったものもある』
白が静かに揺れる。
『それでも』
『ここへ来る』
クロノが周囲を見る。
無数の白。
どれだけある。
数え切れない。
「全部……?」
『そうだ』
その一言だけで。
十分だった。
「そんな……」
世界中の。
願い。
約束。
希望。
後悔。
全部。
ここに。
置かれている。
そう思った瞬間。
ぞわり。
足元の白が。
ひとつ。
またひとつ。
揺れる。
いや。
違う。
近づいてくる。
「っ!」
一歩下がる。
白は歩かない。
転がりもしない。
それでも。
距離だけが縮まる。
理解できない。
理解できないまま。
白が。
クロノの足元を囲んだ。
人影は動かない。
ただ。
静かに言う。
『選べ』
クロノが息を飲む。
『今度は』
『お前が』
『拾う番だ』
足元の白が。
一斉に。
クロノへ傾いた。
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