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それでも、止める? ~終わり続ける世界で、たった一人がすべてを壊し始めた~  作者: Studio No.13
第4章 拾われた願い

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第35話「捨てた理由」

第35話「捨てた理由」

 胸が痛い。

 息が苦しい。

『見ただろう』

 人影が言う。

『お前が捨てたものだ』

 クロノは答えない。

 答えられない。

 頭の中では。

 さっきの笑顔が繰り返されていた。

『楽しいな』

『次は上手くいく』

『諦める理由にはならない』

 意味が分からない。

「……違う」

 気付けば口にしていた。

『何がだ』

「俺じゃない」

 即答だった。

「そんな奴じゃない」

『そうか』

 人影は否定しない。

 ただ。

 静かに聞く。

『では』

『いつから違う』

 クロノが固まる。

『いつから』

『下を向くようになった 』

『いつから』

『失敗を恐れるようになった』

『いつから』

『挑まなくなった 』

「っ……」

 言葉が出ない。

 図星だった。

 痛いほど。

 図星だった。

 人影が一歩近付く。

『お前は忘れていない』

 クロノが顔を上げる。

『勘違いするな』

『忘れたのではない』

『捨てたのだ』

 部屋の空気が変わる。

『傷つく度に』

『ひとつ』

『またひとつ』

『置いてきた』

 周囲の白が揺れる。

『夢を』

『約束を』

『可能性を』

 白が明滅する。

 まるで。

 同意するように。

「違う……」

 クロノが呟く。

 だが弱い。

 自分でも分かっていた。

 違わない。

『違わない』

 人影が言う。

『だからお前はここへ来た』

「……」

『拾うためだ』

 その言葉に。

 クロノの視線が揺れる。

『捨てたものを』

『もう一度』

『選ぶために』

 沈黙。

 長い沈黙。

 そして。

 隣から声がした。

「ならさ」

 ミナだった。

「別にいいじゃん」

 クロノが振り返る。

「何がだ」

「捨てたなら」

 ミナは首を傾げる。

「また拾えば」

 あまりにも。

 簡単そうに言う。

 人影が黙る。

 クロノも黙る。

 だが。

 なぜだろう。

 その言葉だけは。

 少しだけ。

 信じられる気がした。

 人影が初めて笑った。

『そうだ』

『だからお前はここにいる』

 周囲の白が。

 静かに揺れた。

読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、フォローや評価いただけると嬉しいです。

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