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それでも、止める? ~終わり続ける世界で、たった一人がすべてを壊し始めた~  作者: Studio No.13
第4章 拾われた願い

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第32話「残された道」

 『ようやく』

 男の声が響く。

 聞いたことがある。

 何度も。

 何度も。

 聞いてきたはずの声。

 『辿り着いたな』

「……誰だ」

 クロノが呟く。

 返事はない。

 ただ。

 部屋の最奥。

 ひとつだけ大きな白が脈打つ。

 ドクン。

 肩が脈打つ。

 呼応するように。

 白も脈打った。

「クロノ」

 ミナが袖を引く。

「あれ」

 視線の先。

 大きな白へ導くように。

 小さな白が並んでいた。

 今までは漂っているだけに見えた。

 だが違う。

 よく見ると。

 道みたいに並んでいる。

「……誘導してる?」

「かもな」

 クロノは答える。

 だが。

 嫌な予感もしていた。

 今まで声に従って。

 良いことなどなかった。

 失敗。

 後悔。

 絶望。

 そればかりだった。

「ならやめとく?」

 ミナが聞く。

 クロノは少し考える。

 そして。

「やめる理由はある」

「うん」

「行く理由はない」

「うん」

 そこで会話は終わる。

 はずだった。

「じゃあ行こう」

「は?」

 クロノが振り返る。

 ミナは当然みたいな顔だった。

「いや待て」

「だって」

 ミナは白を見る。

「ここまで来たじゃん」

「だから危険だ」

「今までも危険だったよ」

 即答だった。

 クロノが言葉を失う。

「根拠もないし」

「それはそうだな」

「でも」

 ミナは少しだけ笑う。

「最初からそんな感じだったでしょ」

 その言葉に。

 胸が痛んだ。

 最初から。

 そうだった。

 助かる保証なんてなかった。

 世界が止まる保証も。

 なかった。

 それでも。

 進んでいた。

 いつからだろう。

 保証を求めるようになったのは。

「……」

 クロノは視線を落とす。

 何も言えない。

 ミナの方が。

 正しかったから。

「行くよ」

 ミナが先に歩き出す。

「おい」

「危ないなら止めて」

「お前な……」

 思わず頭を抱える。

 だが。

 止められない。

 昔の自分を見ているみたいだった。

 そして。

 少しだけ。

 羨ましかった。

 ミナが最初の白へ触れる。

 ふわり。

 光が揺れる。

 そして。

 声が響いた。

『ありがとう』

 二人が止まる。

「……え?」

 ミナが目を丸くする。

 今まで聞いたものとは違う。

 後悔でも。

 願いでもない。

 感謝だった。

『ありがとう』

 もう一度。

 優しい声。

 消えかけの声。

 それでも。

 確かに残っていた。

 ミナが振り返る。

「聞こえた?」

「ああ」

 クロノも聞いていた。

 そして。

 理解できなかった。

 誰に向けた言葉なのか。

 なぜ残っているのか。

「……行こう」

 今度はクロノが言った。

 ミナが少し驚く。

「珍ら」

「うるさい」

 ぶっきらぼうに返す。

 だが。

 足取りはさっきより軽かった。

 二人は進む。

 小さな白の道を。

 一歩。

 また一歩。

 その度に。

 様々な声が聞こえる。

『助かった』

『間に合った』

『良かった』

『笑ってくれた』

 断片。

 短い言葉。

 だが。

 どれも今までとは違う。

 失敗じゃない。

 絶望じゃない。

 結果だった。

 誰かを救えた結果。

 守れた結果。

 叶えられた結果。

 クロノは足を止める。

「……おかしい」

「何が?」

「失敗だけじゃない」

 今まで見てきたもの。

 流れ込んできたもの。

 それは全部。

 失敗だった。

 なのに。

 ここにあるのは違う。

「成功も残ってる」

 ミナは少し考える。

 そして。

「当たり前じゃない?」

「は?」

「だって」

 ミナは笑う。

「頑張ったことしか残らないなら変じゃん」

 クロノは黙る。

 その発想はなかった。

 失敗ばかり見ていた。

 だから。

 失敗しかないと思っていた。

 でも。

 違うのかもしれない。

 ドクン。

 肩が脈打つ。

 その瞬間。

 最奥の白が。

 今までで一番強く光った。

 部屋全体が震える。

「っ!」

 ミナが目を細める。

 クロノも顔を上げる。

 白の中心。

 そこに。

 ぼんやりと。

 人影が見えた。

 立っている。

 こちらを見ている。

 顔は見えない。

 だが。

 分かる。

 知らない。

 なのに。

 知っている。

 そんな感覚。

 そして。

 その人影が。

 ゆっくり手を上げた。

 まるで。

 手招きするように。

 静かに。

 こちらへ。

 来いと告げるように

 ――待っていたと言うように。

読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、フォローや評価いただけると嬉しいです。

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