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それでも、止める? ~終わり続ける世界で、たった一人がすべてを壊し始めた~  作者: Studio No.13
第4章 拾われた願い

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第31話「残された願い」

 ギィ――。

 重い音を立てて。

 扉が開く。

 白い光が漏れ出す。

 眩しいほどではない。

 むしろ。

 どこか弱々しい光だった。

 クロノとミナは。

 ゆっくり中へ入る。

「……」

 言葉が出なかった。

 部屋は広く。

 天井も。

 壁も。

 見えない。

 ただ。

 暗い空間の中に。

 白い光だけが浮かんでいた。

 ひとつ。

 ふたつ。

 いや。

 数え切れないほど。

 無数に。

 漂っている。

「なに……ここ」

 ミナが呟く。

 クロノは答えない。

 分からなかった。

 見たことがない。

 はずなのに。

 胸の奥がざわつく。

 懐かしい。

 そんな感覚だけがあった。

 ドクン。

 肩が脈打つ。

 すると。

 近くの白い光が。

 ふわりと揺れた。

「っ」

 自然と手が伸びる。

 指先が触れる。

 その瞬間。

 景色が流れ込んだ。

 ――走っていた。

 誰かを探して。

 必死に。

 必死に。

 探していた。

 だが。

 見つからない。

 間に合わない。

 届かない。

 それでも。

 最後まで。

 諦めなかった。

『助けたかった』

 声。

 知らない声。

 なのに。

 どこか自分に似ていた。

「はぁ……これって……」

 息が漏れる。

 苦しい。

 今まで流れ込んだものとは違う。

 絶望じゃない。

 後悔でもない。

 ただ。

 胸が締め付けられる。

「クロノ?」

 ミナが覗き込む。

「平気」

 反射的に答える。

 だが。

 平気じゃなかった。

 ドクン。

 肩が脈打つ。

 また別の光が揺れる。

 今度はミナだった。

「あれ?」

 そう言って。

 白へ触れる。

 瞬間。

 ミナが目を見開く。

「っ……」

「見えたのか」

 ミナはゆっくり頷く。

「誰かいた」

「誰だ」

「分からない」

 首を振る。

「でも」

 少しだけ迷って。

 続けた。

「すごく頑張ってた」

 クロノの視線が止まる。

「頑張ってた?」

「うん」

 ミナは白を見る。

「諦めてない感じ」

 その言葉が。

 なぜか引っかかった。

 諦めていない。

 そんなの。

 当たり前だったはずなのに。

 今は。

 遠い言葉みたいだった。

 クロノは小さな別の光へ触れる。

 今度は短い。

 本当に短い断片。

『守りたかった』

 次。

『まだ終わりたくなかった』

 次。

『もう少しだった』

 次。

『あと一歩だった』

 次。

『頼む』

 次。

『忘れるな』

 そこで。

 クロノの手が止まった。

 忘れるな。

 聞き覚えがある。

 何度も。

 何度も。

 聞いてきた気がする。

 なのに。

 思い出せない。

「クロノ」

 ミナの声。

 振り返る。

 彼女は白い光を見上げていた。

「なんだ」

「この人たちさ」

 少し考えて。

 言葉を探す。

「ずっと待ってたんじゃない?」

 クロノは眉をひそめる。

「誰を」

 ミナは当然みたいに答えた。

「クロノを」

「……は?」

「だって」

 ミナは周囲を見回す。

 漂う白。

 無数の光。

 消えそうで。

 それでも消えないもの。

「全部」

「クロノのこと知ってるみたいだから」

 ドクン。

 肩が脈打つ。

 その瞬間。

 部屋の奥で。

 ひとつだけ。

 少し大きな白が脈打った。

 今までより強く。

 まるで。

 こちらへ応えるように。

 クロノとミナは顔を上げる。

 部屋の最奥。

 闇の向こう。

 そこに何かがあった。

 見えない。

 だが。

 確かにある。

 そして。

 脳裏に声が響いた。

『ようやく』

 男の声。

 聞いたことがある。

 何度も。

 何度も。

 聞いてきた声。

『辿り着いたな』

 クロノの表情が固まる。

 その声は。

 今まで聞こえていた声と。

 同じだった。

 部屋の奥の白が。

 再び脈打つ。

 まるで。

 待っていたかのように。

 静かに。

 静かに。

 ――呼んでいた。

読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、フォローや評価いただけると嬉しいです。

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