表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/30

第21話「逆流」

 黒が、脈打つ。

 ドクン。

 ドクン、と。

 境界の奥。

 起点のさらに深部。

 そこから、“何か”が流れ込んでいる。

 空間全体へ。

 世界全体へ。

 まるで、血液みたいに。

「……溢れている?」

 ミナが、小さく呟く。

 クロノは視線を細めた。

 黒そのものを見ているんじゃない。

 その奥。

 さらに深い場所。

 そこから、何かが供給され続けている。

(流れてる)

 そう理解した。

 だから止まらない。

 だから再生する。

 だから、終わらない。

 外側を壊しても意味がなかった理由。

 止めても、また動き出した理由。

 全部、繋がる。

「……源がある」

 クロノが低く言う。

「源?」

「“それ”を動かしてる本体だ」

 視線を奥へ向ける。

 黒のさらに奥。

 今まで見えなかった場所。

 だが今は、微かに分かる。

 脈動。

 流れ。

 接続。

 全部が、そこから来ている。

「じゃあ……そこ止めれば」

「終わるかもしれない」

 ミナの言葉を引き継ぐ。

 その瞬間。

 黒が、大きく脈打った。

 ドクン、と。

 空間が揺れる。

 歪みが、一気に広がった。

「っ――!」

 視界が裂ける。

 黒が、押し寄せる。

 今までとは違う。

 広がる速度が、明らかに速い。

(来る)

 クロノは、前へ出た。

 反射だった。

 考えるより先に、手を伸ばしている。

 黒へ向かって。

「――止まれ!」

 空間が軋む。

 止まらない。

 押し返せない。

 黒が、迫る。

(足りない)

 一人じゃ。

 届かない。

 そのとき。

 隣から、手が伸びた。

「……っ、クロノ!」

 ミナだった。

 呼吸は荒い。

 まだ完全には回復していない。

 それでも。

 隣に立つ。

「一緒に!」

 その声。

 次の瞬間。

 二人の手の前で、空間が大きく歪んだ。

 黒が、止まる。

 いや――

 押し返される。

「……は!?」

 クロノの目が見開かれる。

 今までと違う。

 “止める”じゃない。

 流れそのものを、逆向きに押し返している。

 黒が、揺れる。

 脈動が乱れる。

 奥へ。

 深部へ。

 逆流するみたいに。

「効いてる……!」

 ミナが声を上げる。

 だが。

 同時に。

「あっ……!」

 ミナの膝が揺れた。

 クロノが即座に腕を支える。

「無理するな!」

「でも……!」

 黒が、崩れている。

 今までになかった反応。

 確実な変化。

 起点が、“嫌がっている”。

(届いてる)

 初めて。

 本当に。

 向こう側へ。

「もう少し……!」

 ミナが、歯を食いしばる。

 空間が軋む。

 黒が、震える。

 その瞬間だった。

 ドクン。

 今までで、一番大きな脈動。

 黒が、一気に膨張した。

「――っ!!」

 押し返される。

 空間ごと。

 まとめて。

 吹き飛ばされる。

「う、あ……!」

 ミナの体が浮く。

 クロノが咄嗟に引き寄せる。

 地面へ叩きつけられる直前、抱き込む。

 衝撃。

 世界が揺れる。

 黒が、再び広がる。

 だが――

 違った。

「……削れてる」

 クロノが呟く。

 黒の一部が、崩れている。

 ほんの少し。

 だが確実に。

 今まで存在しなかった“欠損”。

 ミナも、それを見ていた。

「……壊れた?」

「ああ」

 短く答える。

 呼吸が荒い。

 体も重い。

 それでも。

 口元だけが、わずかに上がっていた。

「……やっと、傷つけられた」

 黒が、脈打つ。

 だが。

 さっきまでより、不安定だ。

 乱れている。

 揺らいでいる。

 つまり――

(通じる)

 このやり方は。

 届く。

 終わりへ。

 その可能性へ。

 ミナが、小さく笑った。

「なんかさ」

「……なんだ」

「ようやく、戦ってる感じする」

 一瞬だけ。

 クロノは、言葉を失った。

 そして。

「……今さらかよ」

 小さく笑う。

 黒が、揺れる。

 世界が、軋む。

 崩壊は、まだ止まっていない。

 それでも。

 今までとは違う。

 初めて、“向こう側”が傷ついた。

 なら。

 届く。

 もっと奥へ。

 もっと深くへ。

 終わらせる場所まで。

読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、フォローや評価いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ