表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それでも、止める? ~終わり続ける世界で、たった一人がすべてを壊し始めた~  作者: Studio No.13
第2章 過去の残響

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/44

第14話「代償の輪郭」

 黒が、ゆっくりと脈打つ。

 止まりきってはいない。

 それでも。

 崩壊は始まらない。

 歪んだまま。

 世界は保たれていた。

(……まだいける)

 クロノは空を見上げる。

 亀裂。

 その奥。

 起点へ続く層。

 さっきより。

 少しだけ近い。

「……もう一度やる」

 低く言う。

 ミナが顔を上げた。

「……さっきと同じ?」

「ああ」

「俺が前へ出る」

「お前は止めろ」

 短い確認。

「……いける?」

 少しだけ弱い声。

 クロノは前を見たまま答える。

「やるしかない」

 ミナは静かに息を吐いて。

「……まかせて」

 そう笑った。

 さっきより。

 少しだけ重い笑顔だった。

(気づいてる)

 それでも。

 何も言わない。

 言えば。

 止めることになる。

「行くぞ」

 踏み出す。

 空間が軋む。

 黒が反応する。

「ミナ!」

「——止まって!」

 世界が歪む。

 黒が押し返される。

 前よりも。

 深く。

(精度が上がってる)

 一気に踏み込む。

 距離が縮まる。

 歪みの奥。

 さらに先。

 見える。

 前より。

 ずっと。

「もう一度!」

 一瞬遅れて。

「……っ、止まれ!!」

 空間が大きく揺れる。

 黒が押し戻される。

 道が開く。

(届く)

 あと少し。

 手を伸ばした。

 その時だった。

「……あれ?」

 後ろから声がした。

 振り返る。

 ミナが立っている。

 少しだけ困ったような顔。

「……どうした」

「えっと……」

 首を傾げる。

「……なんだっけ」

 胸の奥が冷えた。

「ミナ」

 名前を呼ぶ。

 その瞬間。

「あ」

 小さく声を漏らした。

「ごめん」

 苦笑い。

「なんか急に分かんなくなった」

 笑おうとする。

 でも。

 笑えていなかった。

(……削られてる)

 ただ疲れているんじゃない。

 力を失っているだけでもない。

 何かが。

 少しずつ欠けている。

 記憶。

 認識。

 その境界が。

 静かに薄くなっている。

「戻るぞ!」

 クロノは即座に叫ぶ。

「……うん」

 少し遅れて返事が返る。

 黒が大きく脈打った。

 抑えが緩む。

 空間が崩れ始める。

(まずい)

 ミナの手を掴む。

 一気に引く。

 境界へ。

 歪みが追ってくる。

 それでも。

 二人は飛び出した。

 次の瞬間。

 空が裂ける。

 黒が広がる。

 だが。

 速度は遅い。

(……変わってる)

 完全じゃない。

 それでも。

 確かに届いている。

「……クロノ?」

 振り向く。

 ミナはいつもの顔だった。

「……大丈夫か」

「うん」

 少しだけ笑う。

「なんか変な感じだけど」

 軽い調子。

 その言葉だけが。

 妙に重かった。

(戻ったわけじゃない)

 そう思った。

 一度欠けたものは。

 元には戻っていない。

 ただ。

 今は思い出せているだけだ。

「……最悪だな」

 小さく漏れる。

「え?」

「いや」

 首を振る。

 まだ言えない。

 言えば。

 きっと止まってしまう。

 空を見上げる。

 黒は。

 まだ動いている。

 止めきれてはいない。

 それでも。

 確実に変わっていた。

「……もう一回、行くぞ」

 その言葉に。

 黒がわずかに脈打つ。

 ほんの一瞬だけ。

 こちらを見返した気がした。

読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、フォローや評価いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ