超常的存在達
今回の案件、ライダーズ関連ではないと言ってはいたが、どうにも危うく思える。
「地球の情報は、地球に問うのが一番でしょう」
地球には、あの村以外にも人間が活動している場所がある。あの村が見つかる前では、ほぼ唯一とされてきました。
月面帝国でも、その場所を知るのは国防に深く関わっているごく数名とされています。
「ま、私がその一人なんですけどね」
そんなわけで、勝手に大気圏突入。まあ、何かあってもカリバー隊長がなんだかんだ処理してくれるでしょう。
機密情報はバレてはいけないので、最先端の光学迷彩技術を使って移動しているから流石になんかあるとかもないはずですけどね。
そうして、無事に地球へ到着した。
現在の地球は、ただひたすら荒野や瓦礫の山になっているだけでガスマスクなどを使わなきゃいけないほど空気は汚くない。
「ですがまあ……目的地まで、マスクはつけましょう。そこまで汚くないだけで、そこそこ汚い」
その場所は、大きな結界で囲まれている。というか、じゃないと今の地球では生きられない。
この結界は物理的に触れる系の結界なので、ドアノックの感覚で何回か叩く。大きい音を出さないと、多分気づいてもらえませんから。
「あ……え〜っと、うぐいすさんですか?」
「え、ん……だぁっ、だっ、だぁぁぁぁぁぁ?」
「だ、大丈夫ですか?」
私はおっさんを探している……こんな美少女じゃない。ここを守っているのは、基本的に白髪のイケオジ。変装していただけで美少女とかじゃなければ、ありえない。
「え、えっとぉ……いや、落ち着け。わ、私は月面特殊部隊エイアのうぐいすと申しまして、今日は調べたい事があったので許可が得られればとぉ」
「ん……ああ〜じゃあとりあえず、あの人のところに案内しますね‼︎」
一見は小さい建物だと思われる大きさでしたが、この建物の本質は地下にある。地下深くに広がる、広大な図書室と呼ぶべき場所だ。
この図書室には、虚万歴録が眠っている。
虚万歴録というのは、元始以来のありとあらゆる全ての事象や想念などの情報が記録されているモノである。
あくまでこの世界に眠っているのは、かつて誰かの手によって分断された破片のようなモノであるが、それでもこの宇宙全ての情報が眠っているとされている。
それを抜きにしても、西暦時代に生み出された娯楽物がここにはたくさんある。
西暦の時代の話を知るには、ここが一番でしょう。
「……それで、これはどういう状況でしょうか?」
長ったらしい階段を下り終えて扉を開けると、そこではまたもや知らない少女……と、目的のおっさんがいた。
「貴方は確か、月面特殊部隊エイアに所属している……」
「うぐいすです。今日は、地球に関しての情報を得る為にここまで来させていただきました。協力、もちろんしてくれますよね?」
覚えられてなくて地味にショックだから、当てつけ気味に圧をかけてみる。
「それは……」
「天馬さん。いや、ライダーズの……エンドゥミオン」
西暦時代に戦っていた最古のライダーズ、その内の生き残りとされているのが天馬さんである。
三年前に起こった人神決戦でその力は失われていると聞くが、そんな今でもこの図書室をずっと守り続けているのである。
「と、い、う、か‼︎ なんでこんな辺境の地に、美少女二人連れ込んでるんですかあんたぁ‼︎ どういう関係じゃおりゃぁ‼︎」
「あ、すみません。私自己紹介してませんでしたね。というわけでどうも、天馬未来と申します。名前から分かる通り、この人のお嫁さんです‼︎」
「犯罪者じゃねぇかあああああああああああああああ‼︎」
私は深く深く深呼吸をした。そのまま天馬さんの肩を引っ張って、奥へと連れていく。
「あの未来って子、見るからに未成年だよな?」
「ああ……まあ、まだまだ高校に通える年齢だな」
あ、ダメだ。本物のホシだ。
「天馬さん、自首をお勧めしますよ」
「いや、あれは違……わないな。今は婚約者というか、それに近い関係である言えよう。決して、どこかから連れ去って洗脳してるとかではない」
「いや、いつから生きてるか知らないけど西暦時代から戦ってるって……少なくとも百歳は超えてますよね? なんかとてつもない犯罪臭がするんですが」
「……こっちにも、事情があるんだよ事情が」
なんか、歴史に残る英雄ってすごいんだなぁ……みたいなてきとうな感想を抱きながら、もう一つの疑問をぶつける。
「それで、もう一方は?」
「あいつは……」
「あ、いや、自分で言いますよ自分で」
もう一人。さっきからずっと本を読んでいた少女は、いつの間にか天馬さんと腕を組んでいた……いや正確には、その少女が天馬さんに絡んでるの方が正しいな。
「私の名前は……あ、鈍鎧姫花と申します。よろしくお願いしますね」
「ああ、よろしくお願いします」
軽いノリで握手を求められ、それに応える。
「細かい事情とかをざっくりと噛み砕いて伝えると、私は所謂《次元旅行者》という者です。特殊な力を扱う事で、時も空間も世界も超えちゃう存在ですね」
「初めて聞く存在ですね……それで?」
「天馬さんといるのは単純な理由ですよ。最初にこの世界に来た時、偶然出会って、泊めてもらった。以来、定期的にこの世界に来る時は、立ち寄るようにしてるんです」
理由は分かった。分かりましたが……こういう仕事だから仕方ない部分もありますが、あんまり触れてはいけない所があっち側から迫ってきてる気がしますね。
秘密を知って得することなんてほとんどありませんから、やめて欲しいんですけどねぇ。
「さて、ひと段落がついたところで……この図書室で、何を探そうとしている? 大方、あの村についての事だろうと私は考えているが」
この空間、一人称が「私」の人しかいないようですね。
「あぁなるほど。カリバー隊長に例の村についての情報を提供したのは天馬さんでしたか」
「それならば話は早いな。着いてきたまえ、姫花もだ」
「分かりました。ありがとうございます」
「え、私も⁉︎」
「さっきの話について、私からも考えがあるんだ。それについてもついでに話す」
「はぁ〜い」
図書室を少し進むと、天馬さんは少し古びた書物を手に取った。西暦の書物の中でも、またかなり昔のものだと予測されます。
「この書物に、あの村……神逸村の誕生経緯について記されていた。とりあえず、簡単に訳して読み上げるぞ」
「はい。お願いします」
子供に読み聞かせるかのような気分と思っているのでしょうか。少し、懐かしいと感じていそうな顔をしていますね。
私は子供の頃、まともな読み聞かせをされなかったので知識だけですが、やる側も楽しいものなのでしょうか。
ま、とりあえず聞くとしましょう。
「かつて日本が奈良時代であった頃、周りは仏教を信仰している人々ばかりだったのに、一人の思念と呼ばれる力を行使する男を崇拝する変わり者達がいた」
「それが、神逸村の原型ですか」
「そう。変わり者達の集団は仏教徒から疎ましく思われていて、そのせいで森の奥で暮らすしかなかった。そこの地名を、仏逸と呼称。変わり者の連中はそれを元に、自らの地名を神逸としたらしい」
仏教から逸脱したから、仏逸というわけですか。そして神逸としたのは……大方、自分達が神を逸脱したとでも勘違いしたのでしょう。
今の時点でも、碌な未来が見えませんね。
「驕った神逸の連中だが、それでもなんだかんだ普通に暮らしていた。が、突然崇拝されていた男が殺された。犯人はその男の力を、自分のものにしたかったらしい」
「愚か……というか、同じ世界で呼吸をしていた事実だけでも嫌なくらいの愚か者ですね」
「元々は純粋だったはずが、周りの影響でかなり俗物になっていた男は、殺されて完全に邪に落ちた。周りのやつ含めて結界に封じ込め、定期的に人を生贄に捧げないと日本が滅ぼされてしまう……という、経緯らしいな」
「やけに詳しいですね。その本の著者」
「そりゃそうだろう。何故ならこの本を書いたのは昔、神逸村にいた人らしいからな。基本的には周りから隠されてるらしいが、稀に結界が脆くなる時があるらしい」
良くも悪くも、ありがちな話でしたね。というか、なんですか日本が滅びるって。そんな簡単に国が滅んでたまるかって話ですよ。
いや、日本がどういう国だったか知らないので、めちゃくちゃ小さいとかだったらまだ分かりますけど。
でもま、とりあえず、しれっと録音したデータをカリバー隊長にでも纏めてもらえばいいでしょう。
「さてと、私はそろそろ……」
「満足な情報を得て帰ろうとしているところ悪いが、せっかく情報を与えたんだ。一つ、頼みを聞いてくれないか?」
「後出しで頼みをするなんて犯罪に近いですが……まあ、良いでしょう‼︎ 出来る範囲でなら聞いてあげます」
ライダーズ相手に頼み事される。テンションが上がってしまい大きい声を出してしまいましたが、ここからはなるべく冷静に行きましょう。
「この案件の間、姫花を連れて行ってくれないか?」
「「は、はあああああああああああああ⁉︎」」
かけらも、れいせいに、いけなかった。
「さっき言っていた計画、こうやって着いていけば何か進むと思うぞ。というか、こいつらが一番それっぽい」
「それっぽい……とは?」
「流石にまた私が答えますが、私はご存知の通り次元を渡ります。それは必然的に様々な世界の様々な出来事と遭遇する事になります。ですが……」
「です、が……?」
「色んな、歴史の波に埋もれる物語だって沢山あります。それを忘れないように、忘備録として書き残しておきたいって話を、天馬さんにしたんです」
確かに、私達はあまり表舞台に立ちません。記録は残るかもしれませんが、ちゃんと私達個人としては残る事はあまりないでしょう。
そう考えると、合致しているのか……?
「まあ、邪魔しないならいいですよ。私は……というか、次元を旅するなら、情報漏洩以前の問題ですし」
「え、良いんですか? じゃあ……お願いします‼︎」
その後、一度月面に戻ると、てっさが協力を要請しているのを確認。戦闘の準備を始めるのだった。
やっと物語全体の縦軸が始まりましたね。
結局ライダーズの人が一人出てきましたが、この人もガチで関わるかと言われたらあんまり関わりません。
少なくとも、この世界では。




