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英雄達の忘備録  作者: 雪下ソユキ
Record2:銀河の片隅で
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贄る願いのカルテット

 うぐいすさんから伝えられた情報から考えるに、今神逸村に残っているのは邪神に値するものだ。


 神秘的だったし、それで僕も魅入られる理由は理解できる……というか、邪に染まった存在の癖に神々しいのかなり悪質だなぁ。


「てっささん、こっからどうなると思います?」


「もしアマテスの要求が通ったとしても、村長にとって俺たちの存在そのものが邪魔なんだ。良いとこ軟禁だぜ」


「ですよねぇ〜」


 なんか勝手に来ただけとはいえ、アマちゃんというカードを切ってしまった僕達に出来ることはない。

 これを言ったらおしまいだけど、なるようになれだ。



 この時間の間に整理しよう。


 特に、神託児とはなんなのか。

 うぐいすさんからの情報にはなかったけど……あ、でもその情報が書かれていたのはかなり前の書物だったと言っていた。恐らく、神逸村から脱出した人だとも。


 書かなかったわけではなくて、書いた後に生まれた存在。それか、そもそも著者が知らなかったか。


 神託児というのは……名の通りとは言っていたけど、託されるのは神かその力か。


 ん……やっぱり現時点じゃ分かんないか。



「次に、生贄を捧げる……準備しろ」


 いけ……にえ? いや、でも……このままじゃ、それでもそんな事は、ありえないはず。


 願いというにはあまりにも無様なその感情は、湖を染めていく紅色によって否定されたことを知った。そうして流れた惨めな涙も、溢れ落ちていた。


「へーリオスぅ⁉︎」


「ま、ず、は……そう、一人目だ‼︎」


 憎たらしいほどに、村長は笑顔だった。


「どうして……最初に殺すのが子供なんだよ⁉︎ こんな村の中でも、将来を楽しみにしてたはずなのに。というか、これじゃあ子孫とか作れないだろ⁉︎」


「一七一四回目はなぁい‼︎ ここで完遂させる。それに、最悪の場合は神託児とその騎士がなんとかすれば良いそう、今までだってそうやって続けてきた‼︎」


 かなり前の話だろうとはいえ、嫌な生い立ちを聞いたな。

 それに、ここで完遂させるとか言いながらそうやって続けてきたって……それで失敗してきたんでしょ、絶対。


 馬鹿みたいだ。本当、馬鹿みたい。


「では……続けろ‼︎」


 一人一人、死んでいった。

 僕達は、何も出来ずに、ただただ命だけが潰えていく。悔やみも、悲しみも、置き去りにするように現実は、時は淡々と進んでいった。


「やめろよ、やめてくれよ‼︎ こんな事があるかよ……⁉︎」


 てっささんは叫んだ。対して、僕はもう声すら出なかった。


「あぁる‼︎ 秩序や平穏の為に何かを切り捨てる、何処の為政者も行っていた事だ。何が違う……何が変わる?」


「それは西暦の考え……時代遅れの他責論者だぜ‼︎」


 そうだった。今、西暦じゃないんだった。母から西暦って名前は教えてもらってたけど、まさか変わってるとは。

 

 ……想像以上に冷静だよね、僕。


 悲劇も、苦痛も、慣れてしまえば涙も枯れる。それは別に悪いことではないし、当然の事でもあるけど、失っても泣けないのは……ただただ虚しいだけじゃないか。


「あ? あぁ。涙、枯れたか‼︎ 大事な存在を失ったのに泣いてないなんて、血も涙もないやつ……いや、血は流れてたな‼︎ 実に、哀れだ‼︎」


「俺にとっては、人をたくさん殺してもなおそうやって笑顔を続けてるお前の方が……哀れなんだぜ」


「はぁ? 良い事じゃないか、失った事がないのは」


「いや、違う。僕は知っている。失った事がないんじゃない、失うものが最初から無かっただけ……てっささんの言う通りだ。本当に、哀れでしかない」


 その瞬間、場を沈黙が支配した。


 わずか数秒後、僕でも感じられるほどの殺気がこちらに襲いかかってきた。痛みを感じる……そんな事、ありえないはずなのに。


「そうか‼︎ 哀れか……騎士を殺すのは良くない事だが、実に仕方のない事だ。お前達を、殺す‼︎」


 村長は、怒りのまま人型の化け物へと変化した。

 いくつも管が繋がっていて、まるで妖怪のようで……でも、少ししか生き物の熱が感じられない。


 村長は刀を取り出して、僕達の前に立ち塞がる。


「死ぬ気はあるか?」


「覚悟とか気持ちとか、俺はそういうのは特にないぜ。だけど、いつかはこうなる日が来るって最初から分かってたし、怖くはないぜ‼︎」


「……僕もそうだよ。覚悟は、ずっと出来てる‼︎」


 誓い。あるのはそんな薄っぺらいものだけ。それか、それもないのかもしれない。

 だけどそれにもし、力があるとするのなら。


 運命は——。



「私を置いて、テラス君に何してる?」


 アマちゃん……アマちゃん⁉︎


 さっきまで儀式をしていたその瞳は光り輝き、元々美人さんだったけど、一層美しくなった気がする。それに加えて、確かに神々しい。


「い、いや〜もう儀式は終わられたのですか? でしたら少し待っていただけると……」


「神の意思は私の意思。私の意思は神の意思。故に、私は神であり神は私でもある」


「そ、そうですが〜それが何か?」


 アマちゃんは再び、湖の中心へと戻る。その手には、見たことがない物体が握られていた。でもそれはまるで、僕が腰に巻いていた物体と少し似ていた。


「神託は通ずる……神装(しんそう)‼︎」


 白い閃光と金色の稲妻。その二つに彼女は包まれると、その光は神が宿ったかのように装甲を生み出してゆく。


 それは、てっささんや僕みたいな変身する者(シェイプシフター)に今彼女が成ったという事実を証明していた。どうやら村長にとっては予想外みたいだったけど。


「託されし神言を命ずる……お前は、ここで粛清する」


 彼女が光の光線を放つと、村長はそれを回避した。だけど彼女はそれを予想してたようで、それにより僕達の拘束が解かれた。

 完璧な調整と言えよう。


 そのままアマちゃんは落ちていた僕達の武器を取り返しつつ、それをこちらに投げ渡す。


「ありがとうアマちゃん‼︎ 行くよ、てっささん‼︎」


「もちろんだぜ‼︎」


 てっささんは、ジャンズガンのトリガーを三度押しつつエネルギーが溜まるのを待つ。

 僕の方は、前も使った謎のベルトのようなモノを腰に巻き付けてそこに意識を集中させる。

  

『ジャ、ジャン、ジャジャジャンズ‼︎』


 これで互いに準備完了‼︎


「蒸身‼︎」


「神装(しんそう)‼︎」


『敵は全て撃ち落とせ‼︎ ジャンズ……マグナム‼︎』


 これが、変身音声っていうものなのかなぁ。


 それぞれ変身し終わると、村長がそこで律儀に待っていた。律儀に待つんだ……意外だ。


「終わったか。興醒めな事はしないと決めてはいたが、こりゃあ確かにちと厳しいな‼︎」


 爆発の轟音が響く。


 僕が戦った化け物よりも、更に大きい化け物達が地中から次々と現れ、さっきまで仮面をつけていた村の皆んなを襲い始めた。


「そんな、どうして⁉︎」


「良い加減離反されそうじゃしな……さ、始めよう‼︎」


「畜生な奴だぜ……だけど、そっちが総力戦を仕掛けてくるならこっちにも考えがある。さあ、こっちも総力戦といこうぜ‼︎」


 また、轟音が響いていた。


 しかも、上から。見上げてみると、見た事ないけど心強そうな者達がやって来ていた。それに、ジャンズマグナムと似て非なる者もいる。あれがうぐいすさんだろう。


「ナイスタイミングだぜ‼︎」


「怪獣達の駆除を最優先に、可能な範囲で原住民の保護や確保を行え。月面特殊部隊エイア……出撃‼︎」





 さあ、始めましょう。

 私、うぐいすはジャンズブレードに蒸身して既に戦闘を開始していました。


 今回の敵は、怪獣とも呼べる大きさであり、戦い慣れているわけではありませんが、まあなんとかなるでしょう。


 ジャンズソードを振り回し、ダメージを与えていきます。


「ジャンズスラッシュ‼︎」


 皮膚自体はかなりの硬さですが、口の中や目などに攻撃すればかなり効いています。


「E(遠距離部隊)は口の中を狙撃、K(近距離部隊)は目の方を攻撃してください。可能であれば一撃撃破をしてください。一撃じゃなくても、口の中と目のどちらもを攻撃すればほぼ確実に撃破可能です」


 戦闘において、私はてっさには勝てません。元が感覚派の天才の上に、ちゃんと努力もする超人ですから。なので、私はてっさの出来ない分析を伸ばした。


 補い合えば、不可能なんてありませんから。


「おお〜‼︎ こう……軍師って感じ‼︎」


「あながち間違いではありませんね。ところで、せっかくついてきているのであれば少し手伝いませんか?」


 姫花さんの方向を見ると、想像以上に悩んでいる彼女の姿があった。嫌とかならまだ分かりますが、どういう悩みなのでしょうか。

 実は、使ったら代償がある能力とか?


 次元旅行者ですし、あらゆる可能性が考えられますね。


「まあいいや。ちょっとだけだからね‼︎


「助かります」


 姫花さんは疑っている顔をしていましたが、事実戦力はあるだけ良いものです。


『フロレートゥムドライバー‼︎ シードプラントセット』


 姫花さんは、ベルトのようなものを腰に巻き付け、その中に花の種のようなものを装着する。


 さながら、花壇に種を植えるという事でしょう。


「変身‼︎」


『大開花……プリワズ‼︎』


 どういう戦闘かと眺めつつ、私も怪獣をどんどんと倒していく。厄介ではあるが、慣れれば簡単……サクサク倒せてしまいます。


「……舞う花の如く、散れ‼︎」


「いや、えっぐ」


 舞っていた花弁が、怪獣達を一瞬で倒してしまった。どうなってるんですかね、あれ。仕組みは分からなくても、使うのを悩む理由は少し分かりますね。





 さあさあ、どんどん倒していくぜ‼︎


 さっきうぐいすが《怪獣》とした敵達は、これまたうぐいすの言った通りかなり厄介。やっぱりあいつは、めちゃくちゃ凄い奴だぜ。


「おらおらおら、撃ち抜き続けるぜぇぇぇぇ‼︎」


 怪獣の牙を掴みながら、口内でジャンズガンを乱射。

 口の中だったら、ジャンズガンのエネルギー弾数発で全然余裕で倒せる。


「ジャンズブラスト‼︎」


 チャージ時間が必須のジャンズブラストだったら、怪獣のあの硬い皮膚も全然ぶち抜けるぜ。


「テラスとアマテスに戦わせちまってるんだ。あんな小さいのに……だからこそ、俺達も出来ることを最大限為せるだけ為すんだぜ‼︎」


 だから頼んだぜ……二人とも‼︎

次回、村長死す‼︎

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