引き裂かれる運命たち
「ふはははははは‼︎ 貴様ら、その程度かぁ‼︎」
アマちゃんと二人がかりで戦っているのに、やっぱり大口叩くだけはある……村長、めちゃくちゃ強い‼︎
単純なパワーとかはこっちの方が勝ってるけど、刀の使い方とかの細かいところで技量の差が出てる。こうなるんだったら、てっささんにも手伝ってもらえばよかった。
どこか隙を見つけないと、永遠に終わらないっぽい。
「神の言葉にも耳を貸さない、相当落ちぶれた存在だったんだな。いや、まさか最初からか?」
「そうとも。かつて、偉大なる男を殺してからずっと……全てを完遂させ、神になる時を待ち望んできた‼︎ 完遂は出来なかったが、今こそ好機‼︎」
「偉大なる男……ってまさか村長、不老不死⁉︎」
「そうとも。年季が違うのだよ年季が」
村長に左右から攻撃し、それを両肘で防いだのを確認しつつ強力な蹴りを叩き込む。ダメージは確かにあっただろうにすぐ反撃され、僕達は吹き飛ばされる。
村長はすかさず攻撃に転ずるが、僕はなんとか回避。
「でも昔に戦闘経験があったにしては弱いし、そもそもそんな昔にその刀あったっけ? 中途半端だし、老いは怖いねぇ」
煽りは、こんなものでいいだろうか。
「確かに怖いものだな。老い故に過ちを犯すことは……しかし、それでも貴様らはわしには勝てん。何故かって? フッッ……ガキだからさ‼︎」
「「舐めるなああああああああ‼︎」」
くっ……冷静になるんだ‼︎ ゴリ押しだけじゃ勝てない。的確なタイミングでゴリ押しするしか、村長に勝てない。
村長、今度はエネルギー弾を次々と打ち出している。僕だったら回避も容易だけど、戦い慣れてないアマちゃんは違う。
あのエネルギー弾、回避しなくても大丈夫そうに見せかけて後々詰ませるんだろう。村長はそういう事する。
エネルギー弾の隙間を抜けて、勢いよくアマちゃんを捕まえながらまた隙間を抜ける。
「アマちゃん、大丈夫⁉︎」
「あ、ありがとう……テラス君」
やっと、騎士としてちゃんとした事出来た気がする。
少しだけでも為せた事実が、僕の存在肯定においてほんのり残っただろう。
「よくここまでやってくれたな……反撃開始だ‼︎」
エネルギー弾に当たらないようにしながら村長に接近。
刀を振り翳そうとする村長に対して、僕はカウンターの構えを取る。
村長は刀をどこから仕入れていたのか分かんなかったけど、あの老いに対する謎の信仰を見るに、恐らくずっと昔のを使っていると考えた。それを村長のエネルギーでなんとか使っているっぽい。
村長の力と同程度にあえて調整して、反発し合う力達を均等にさせて刀本体をぶち壊す。
「な、なにぃ⁉︎」
「言ったでしょ? 反撃開始だって‼︎」
これまたキレさせたのか、大量にエネルギー弾をこちらに放ってくる。だけどずっとメインウェポンだった刀を壊したのなら、さっきよりかは有利に戦えるはずだ。
だけど問題は……近づけないなぁ、これ。
「やっと理解した。神霊よ、森羅よ、生ける万物達よ‼︎ 私達の命により、悪を除排せよ‼︎」
木の幹や光り輝く霊のようなものが、村長の周りを包んでいく。これも、彼女の起こしたモノなんだろう。
「行こうテラス君。私達の未来を取り戻そう‼︎」
「うん。これで終わりにしよう‼︎」
掌に意識を集中させ、決着をつける為の準備をする。それと同時に、アマちゃんも……どうやらこっちは足に力を集めているらしい。なんか光ってるし、多分そうだろう。
「エルドスマッシュ‼︎」
「神託の一撃‼︎」
「そ、そんなバハマあああああああああ‼︎」
終わったよ。仇は、ちゃんと取ったよ。
インティ、ライチ、ルイチとへーリオス。僕はずっと、皆んながいてくれたおかげで生きてこれたんだ。
本当、ありがとう。
「村長は倒したんだぜ?」
「貴方達が今回協力してくれている原住民ですか。ご協力、感謝致します」
「遠くから見てたけど凄かったんだぜ‼︎ まだ戦えるなら一緒に戦ってほしいけど、無理だったら休むんだぜ‼︎」
あ、そうだった。まだ戦いは終わってないんだった。
「いえいえ。僕達もまだ——」
その瞬間、空間が裂けた。
地面が轟き鳴り響き、森は震え怖がるかのように、先の輝きを失っていた。ただただ揺れているんじゃない……これは、この星が動いているんだ。
「なに、が……起こってるんだぜ⁉︎」
「とんでもないエネルギーを感じます。認めたくはありませんが、まるで神様のようです」
「アマ、ちゃん……? アマちゃん‼︎」
さっきまで近くにいた彼女がいない。周りを見渡そうとしても、まるで金縛りか、それとも水の中にでもいるのかのような感覚……動けなくなってる。
「私は、神と一つになった。人の裏にも触れて、それで理解した。一緒に叶えよう? その願いを」
何を、言っているんだ。アマちゃんらしくない、だけどその言葉は何かに乗っ取られているとかもなく、間違いなく彼女が紡いだ言葉だ。
人の裏ってなんだよ。願いってなんだよ。
理解出来ないとは言わないし、むしろ理解出来るように頑張る。だからせめて、説明くらいしてよ。
「先程、カリバー隊長から連絡が来ました。このままあれを放置していると、地球の滅亡。更に、超新星爆発と同等の爆発を誘発して人全てが滅びる危険もあります‼︎」
「な、なんだってだぜ⁉︎」
すーぱーのば? 珍しく母さんに教えられてない言葉だったけど、てっささんの碌なもんじゃないみたいだ。爆発とも言ってたし、物騒すぎたのかな。
「す、すうぱぁのばって?」
「超新星爆発は、本来でかい星が最後に色々と残して大爆発を起こす事なんだが……あ、大爆発大爆発言っても、星レベルだからとんでもねぇぜ‼︎」
「この星……地球でしたっけ? って、銀河的に見たらそんなに大きくありませんよね」
「だからやばいんだぜ‼︎ 地球じゃあり得ないはずの爆発が、どういう事か理論的に起こりかけてるんだぜ‼︎」
ざっくりどういう状況かは分かった。神は私で私は神と言っていたけど、まさかここまでちゃんと引き継がれているなんて。
というか、あの神擬きにこんなに力があったんだ。
やっとてっささん達との話には付いてこれたけど、それでもまだ頭が混乱してる。仕方ないとは思うけど。
「まさか、三年でこんな事件が起こるとは……このまま、掌の上で転がり続ける事はしない‼︎」
知らないイケおじが投げた羽根が目の前を通り過ぎたと思えば、いつの間にか僕達は身動きが取れるようになっていた。
「ありがとうございます。天馬さん」
そのイケおじは微笑んで、別の場所へと歩いていった。
「さてと……私達の仕事は、あの少女の殺害ですかね」
「は……いや、待ってよ‼︎ 彼女は、アマちゃんにも何か考えとか事情とかがあるはずだよ。お願いします。殺害はしないでください‼︎」
彼女がまだ何をしようとしてるか分かんないけど、それでも僕はアマちゃんを信じたい。
覚悟は、揺らがない‼︎
「あれは、十分もない内に世界を滅ぼすでしょう。人に、あらゆる全てに敵対する者は、私だけでも排除します。保護などを考えられる余裕はないんです。それが正義です‼︎」
覚悟、誓い、何が正しい? 何も守れないのなら、そんな正義は無価値に等しいんじゃないのか。さっき痛いほど思い知った。
倫理的に正しいと思っても、それで後悔する事もある。
冷静な判断をし過ぎたから、無価値な正しさに基づいた判断をしてしまったから、あいつらは死んだ。
「殺したくないのは構いません。せめて私をあの少女の元へ通してくれれば、私が全て終わらせますから」
「うぐいす‼︎」
「なんですか? まさか、正義を裏切りますか?」
「違うだろ、その言葉だけは違ってるだろ。そうじゃぁ、そうじゃないんだよ‼︎ 分析は出来るのに……どうしてそう配慮が出来ないんだよお前は‼︎」
てっささんが殴り飛ばしても、うぐいすさんはまた立ってこちらに向かってくる。
こっちの立場に立ってみて分かる。何度でも立ち上がる正義の味方が厄介だと、目障りだと思う理由も分かる気がする。
「ごめんなさいてっささん……」
「ははっ。いつかは、そうなるかもとは思ってたぜ」
てっささんは、笑いながらも悲しそうだ。その心を傷つけたのは、間違いなく僕だ。
僕は、こうなると思ってなかった。楽観的だったんだ。
だけど、覚悟をしたんだ。こうなったら、もう僕は変えることは出来ない。変える事を選ばない。
「僕は何があっても、アマちゃんを守り抜く。その果てがたとえ過ちや終わりだとしても、ここは通さない‼︎」
それが、僕と彼女の誓いだ。
とんでもない事になっとる。




