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英雄達の忘備録  作者: 雪下ソユキ
Record2:銀河の片隅で
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引き裂かれる運命たち

「ふはははははは‼︎ 貴様ら、その程度かぁ‼︎」


 アマちゃんと二人がかりで戦っているのに、やっぱり大口叩くだけはある……村長、めちゃくちゃ強い‼︎


 単純なパワーとかはこっちの方が勝ってるけど、刀の使い方とかの細かいところで技量の差が出てる。こうなるんだったら、てっささんにも手伝ってもらえばよかった。


 どこか隙を見つけないと、永遠に終わらないっぽい。


「神の言葉にも耳を貸さない、相当落ちぶれた存在だったんだな。いや、まさか最初からか?」


「そうとも。かつて、偉大なる男を殺してからずっと……全てを完遂させ、神になる時を待ち望んできた‼︎ 完遂は出来なかったが、今こそ好機‼︎」


「偉大なる男……ってまさか村長、不老不死⁉︎」


「そうとも。年季が違うのだよ年季が」


 村長に左右から攻撃し、それを両肘で防いだのを確認しつつ強力な蹴りを叩き込む。ダメージは確かにあっただろうにすぐ反撃され、僕達は吹き飛ばされる。

 村長はすかさず攻撃に転ずるが、僕はなんとか回避。


「でも昔に戦闘経験があったにしては弱いし、そもそもそんな昔にその刀あったっけ? 中途半端だし、老いは怖いねぇ」


 煽りは、こんなものでいいだろうか。


「確かに怖いものだな。老い故に過ちを犯すことは……しかし、それでも貴様らはわしには勝てん。何故かって? フッッ……ガキだからさ‼︎」


「「舐めるなああああああああ‼︎」」


 くっ……冷静になるんだ‼︎ ゴリ押しだけじゃ勝てない。的確なタイミングでゴリ押しするしか、村長に勝てない。


 村長、今度はエネルギー弾を次々と打ち出している。僕だったら回避も容易だけど、戦い慣れてないアマちゃんは違う。

 あのエネルギー弾、回避しなくても大丈夫そうに見せかけて後々詰ませるんだろう。村長はそういう事する。


 エネルギー弾の隙間を抜けて、勢いよくアマちゃんを捕まえながらまた隙間を抜ける。


「アマちゃん、大丈夫⁉︎」


「あ、ありがとう……テラス君」


 やっと、騎士としてちゃんとした事出来た気がする。

 少しだけでも為せた事実が、僕の存在肯定においてほんのり残っただろう。


「よくここまでやってくれたな……反撃開始だ‼︎」


 エネルギー弾に当たらないようにしながら村長に接近。

刀を振り翳そうとする村長に対して、僕はカウンターの構えを取る。


 村長は刀をどこから仕入れていたのか分かんなかったけど、あの老いに対する謎の信仰を見るに、恐らくずっと昔のを使っていると考えた。それを村長のエネルギーでなんとか使っているっぽい。


 村長の力と同程度にあえて調整して、反発し合う力達を均等にさせて刀本体をぶち壊す。


「な、なにぃ⁉︎」


「言ったでしょ? 反撃開始だって‼︎」


 これまたキレさせたのか、大量にエネルギー弾をこちらに放ってくる。だけどずっとメインウェポンだった刀を壊したのなら、さっきよりかは有利に戦えるはずだ。


 だけど問題は……近づけないなぁ、これ。


「やっと理解した。神霊よ、森羅よ、生ける万物達よ‼︎ 私達の命により、悪を除排せよ‼︎」


 木の幹や光り輝く霊のようなものが、村長の周りを包んでいく。これも、彼女の起こしたモノなんだろう。


「行こうテラス君。私達の未来を取り戻そう‼︎」


「うん。これで終わりにしよう‼︎」


 掌に意識を集中させ、決着をつける為の準備をする。それと同時に、アマちゃんも……どうやらこっちは足に力を集めているらしい。なんか光ってるし、多分そうだろう。


「エルドスマッシュ‼︎」


「神託の一撃(コンミデア)‼︎」


「そ、そんなバハマあああああああああ‼︎」


 終わったよ。仇は、ちゃんと取ったよ。

 インティ、ライチ、ルイチとへーリオス。僕はずっと、皆んながいてくれたおかげで生きてこれたんだ。


 本当、ありがとう。


「村長は倒したんだぜ?」


「貴方達が今回協力してくれている原住民ですか。ご協力、感謝致します」


「遠くから見てたけど凄かったんだぜ‼︎ まだ戦えるなら一緒に戦ってほしいけど、無理だったら休むんだぜ‼︎」


 あ、そうだった。まだ戦いは終わってないんだった。


「いえいえ。僕達もまだ——」




 その瞬間(とき)、空間が裂けた。

 地面が轟き鳴り響き、森は震え怖がるかのように、先の輝きを失っていた。ただただ揺れているんじゃない……これは、この星が動いているんだ。


「なに、が……起こってるんだぜ⁉︎」


「とんでもないエネルギーを感じます。認めたくはありませんが、まるで神様のようです」


「アマ、ちゃん……? アマちゃん‼︎」


 さっきまで近くにいた彼女がいない。周りを見渡そうとしても、まるで金縛りか、それとも水の中にでもいるのかのような感覚……動けなくなってる。


「私は、神と一つになった。人の裏にも触れて、それで理解した。一緒に叶えよう? その願いを」


 何を、言っているんだ。アマちゃんらしくない、だけどその言葉は何かに乗っ取られているとかもなく、間違いなく彼女が紡いだ言葉だ。


 人の裏ってなんだよ。願いってなんだよ。


 理解出来ないとは言わないし、むしろ理解出来るように頑張る。だからせめて、説明くらいしてよ。


「先程、カリバー隊長から連絡が来ました。このままあれを放置していると、地球の滅亡。更に、超新星爆発(スーパーノヴァ)と同等の爆発を誘発して人全てが滅びる危険もあります‼︎」


「な、なんだってだぜ⁉︎」


 すーぱーのば? 珍しく母さんに教えられてない言葉だったけど、てっささんの碌なもんじゃないみたいだ。爆発とも言ってたし、物騒すぎたのかな。


「す、すうぱぁのばって?」


「超新星爆発は、本来でかい星が最後に色々と残して大爆発を起こす事なんだが……あ、大爆発大爆発言っても、星レベルだからとんでもねぇぜ‼︎」


「この星……地球でしたっけ? って、銀河的に見たらそんなに大きくありませんよね」


「だからやばいんだぜ‼︎ 地球じゃあり得ないはずの爆発が、どういう事か理論的に起こりかけてるんだぜ‼︎」


 ざっくりどういう状況かは分かった。神は私で私は神と言っていたけど、まさかここまでちゃんと引き継がれているなんて。

 というか、あの神擬きにこんなに力があったんだ。


 やっとてっささん達との話には付いてこれたけど、それでもまだ頭が混乱してる。仕方ないとは思うけど。



「まさか、三年でこんな事件が起こるとは……このまま、掌の上で転がり続ける事はしない‼︎」


 知らないイケおじが投げた羽根が目の前を通り過ぎたと思えば、いつの間にか僕達は身動きが取れるようになっていた。


「ありがとうございます。天馬さん」


 そのイケおじは微笑んで、別の場所へと歩いていった。


「さてと……私達の仕事は、あの少女の殺害ですかね」


「は……いや、待ってよ‼︎ 彼女は、アマちゃんにも何か考えとか事情とかがあるはずだよ。お願いします。殺害はしないでください‼︎」


 彼女がまだ何をしようとしてるか分かんないけど、それでも僕はアマちゃんを信じたい。


 覚悟は、揺らがない‼︎


「あれは、十分もない内に世界を滅ぼすでしょう。人に、あらゆる全てに敵対する者は、私だけでも排除します。保護などを考えられる余裕はないんです。それが正義です‼︎」


 覚悟、誓い、何が正しい? 何も守れないのなら、そんな正義は無価値に等しいんじゃないのか。さっき痛いほど思い知った。

 倫理的に正しいと思っても、それで後悔する事もある。


 冷静な判断をし過ぎたから、無価値な正しさに基づいた判断をしてしまったから、あいつらは死んだ。


「殺したくないのは構いません。せめて私をあの少女の元へ通してくれれば、私が全て終わらせますから」


「うぐいす‼︎」


「なんですか? まさか、正義を裏切りますか?」


「違うだろ、その言葉だけは違ってるだろ。そうじゃぁ、そうじゃないんだよ‼︎ 分析は出来るのに……どうしてそう配慮が出来ないんだよお前は‼︎」


 てっささんが殴り飛ばしても、うぐいすさんはまた立ってこちらに向かってくる。


 こっちの立場に立ってみて分かる。何度でも立ち上がる正義の味方が厄介だと、目障りだと思う理由も分かる気がする。


「ごめんなさいてっささん……」


「ははっ。いつかは、そうなるかもとは思ってたぜ」


 てっささんは、笑いながらも悲しそうだ。その心を傷つけたのは、間違いなく僕だ。


 僕は、こうなると思ってなかった。楽観的だったんだ。


 だけど、覚悟をしたんだ。こうなったら、もう僕は変えることは出来ない。変える事を選ばない。


「僕は何があっても、アマちゃんを守り抜く。その果てがたとえ過ちや終わりだとしても、ここは通さない‼︎」


 それが、僕と彼女の誓いだ。

とんでもない事になっとる。

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