そこは逸話か偽りか
サブタイトルの、語感がいい気がする。
僕は、てっささんと情報交換しながら霧の中を進んでいた。
さっきは無我夢中で通ったから分かってなかったけど、この霧……めちゃくちゃ濃い上に霧を抜けるまでかなりの時間がかかる。
「それで、祭りというのはなんなんだ?」
「この村に伝わるお祭りで、去年の余った米の一部を村の中心で燃やす事によって厄を払って豊穣を祈る祭りだよ」
こういう感じで、とりあえず情報交換をした。
アマちゃんは、一旦はあの牢獄に戻りたいらしい。もう村には居場所がないし、今行っても迷惑になるだけだからって。
「必ず迎えに行くから。待ってて?」
「うん。分かった」
アマちゃんの笑顔は、成長した分更に美人さんだった。
「あ、テラスがよそ者連れてきた〜‼︎」
「「連れてきた〜‼︎」」
「大丈夫ですか? すみませんね、うちの友達共が」
「元気なのは良い事なんだぜ‼︎」
森の中で子供達を見つけて、皆んなで村へと向かっていた。皆んなどうやら、てっささんに興味津々みたいだ。
「父さん? とうさ〜ん‼︎」
家の方には父さんはおらず、いつもの村なのに何処か不気味さを感じていた。
やはりあれは、父さんだった……?
「……うんぇ⁉︎ そ、そいつは?」
「あ、アポピス村長。紹介します。この人は、外の世界から迷い込んだらしくてお連れしました、てっささんです」
あくまで『潜入』だから話を合わせて欲しいと頼み込まれ、とりあえず簡単に誤魔化しておいた。
そもそも何故、アマちゃんは牢獄に閉じ込められた? 僕達が気づいていないだけで、もっと強大な陰謀に近しい何かが動き始めてるんじゃないのか?
「ああ、そうでしたか。なら、私の家に空いている部屋があるので、そこで泊まってください」
「はい‼︎ 分かったぜ‼︎」
うちの村は、いつも夜は宴か村長の屋敷で飯を食べる。
村長の屋敷はかなり大きく、村長以外にも何人か支えてる人が住んでいて、屋敷の中の巨大なお座敷で皆んなが集まって食べるのだ。
つまり、宴じゃなくても結局うるさくなるのがオチだ。
「それじゃあな、少年‼︎」
「はい‼︎」
屋敷でのお食事の時も、てっささんは村の人達と仲良くしていた。てっささんもだけど、うちの村の人達初対面の人に対して仲良くなるのが早い早い。
その後、村長から呼び出され村長の部屋へと向かった。
「さあ、其方の父親についての話じゃったな」
「はい。答えてくれるんですか?」
「もちろんじゃ。まあといっても、お主がいなくなったのに気づいた村の人達によって話を聞いたら、罪を犯した事を認めたから今は牢獄行きになったのじゃ」
「……そうですか」
まさかそんなに嫌われてたなんて。信じたくないけど、信じる以外の選択肢もないだろう。
「まあ今日は帰りなさい。送っていってやろうか?」
「大丈夫です。一人で帰れます」
「……迷った。この村無駄に広いんだよなぁ〜」
この村とその周辺の森は、いつも思ってるけど無駄にだだっ広い。アマちゃんが見つからなかったのも、そういう事だろう。
僕達子供もあまり遠くには駆け回らないから、森の奥に隠されていたら気付けない。
「あれ、この辺川とかあったっけ?」
滝のような……川のような? とにかく、水が流れてるかのような音が耳に入ってきた。
「父さん……?」
その滝には、一部が黒焦げになった父さんの死体が浮かんでいた。
なんで。今は牢獄にいるって、さっき村長はそう言ってたはず。じゃあ、嘘つかれた?
「見てしまうとはのう。だが、こうなってしまったのなら生かしてはおけんのう」
遠くからゆっくりと村長が近づいて来た。
薄々勘づいてはいたけど、信じたくはなかった。村で何かが起こってるのじゃなく、最初からこの村自体がおかしかったんだ。
「今頃、お主が連れて来た外来の者も、わしの忠実なる僕によって殺されている頃だろう。ま、諦める事をおすすめするぞ」
「……諦めたりなんか、するもんか‼︎」
僕は全力疾走で、森を駆けていく。
「ほう。だが、逃しはせんがのう‼︎」
後ろを振り向けば、昨日の化け物が僕達を追って来ていた。それも、三体も。
「追いつかれて……たまるか‼︎」
「わしはこの森に何十年も住んでいるのじゃぞ? たかが運動神経の良い子供一匹……取り逃すと思うか?」
「思うね‼︎ 歳取ってるし‼︎」
「年齢差が戦闘における決定的な戦力差になりえん事を知らんのか? それはそれとして……殺す‼︎」
やばい。怒らせちゃった。
村長の言ってる通り、どれだけ上手く逃げてもすぐに追いつかれてしまう。
「……祠? あっ……⁉︎」
目の前に見た事ない祠を見つけ、一瞬不思議に思ったらその勢いで石につまづいて転ぶと、そのまま祠にぶつかってしまった。
祠の中に入ってた黒い長方形の物体が、僕の頭上に落ちた。
「王手じゃ。さらばじゃ、テラス‼︎」
「まだ……僕は彼女を助けるまで、死ねない‼︎」
僕はその物体を、僕の胸に打ち込んだ。その瞬間、僕の周りを黒い閃光と金色の稲妻が包んだ。
「まさか……何故、その力が使える⁉︎」
変化したその物体を腰に巻くと、僕は唱えた。
「……神装‼︎」
僕は、閃光と共に黒金の戦士に変貌していた。
「シェイプシフターとなったか。まさかお主が選ばれるとはな。いや、アマテスの事を考えれば当然の道筋ではあったか」
「アマちゃんを知ってるの⁉︎」
「おお、お主も会ったか。ま、アマテスをあそこに監禁したのはわし……とでも呟いておこうか」
「倒す‼︎」
変身した事によって格段に戦闘能力が上がった僕には、もう化け物なんて些細な障害でしかなかった。
「エルドスマッシュ‼︎」
一撃で、化け物達を全て倒した。
「……逃げたか」
周りを見渡すと、既に村長は影も形もなかった。ここからどうするか考えていると、遠くから声が聞こえた。
「お〜い、お前テラスか?」
てっささんが走って来た。
「え、分かるの? というか、大丈夫だったの? 村長が、貴方を殺しておくって」
「質問が多い‼︎ まず、なんとなく分かる。で、今は全然余裕だぜ‼︎ そしてやっぱ、村長が黒幕だったのか……」
村長の部屋に泊めてもらっている際、俺は何か不穏な気配を感じていたのか寝たふりをしていたぜ。
ずっと優しく接して貰っていたけど、たまに色仕掛けっぽい事もされてたから、すっごいうっさんくさかったし、多分そのせいだと思う。
それで夜、本当に仮面をつけた数人の男達が俺の部屋に忍び込んできた。
「……村長の命だ。ここで死んでもらう‼︎」
こんな露骨な事を言って、本当に暗殺しようとしてるのか怪しいと思ったぜ‼︎
あ、「そもそも外の人はてっささんが初めてだし、暗殺なんて慣れてるわけがない?」確かにそうだ。
「来ると思ったぜ‼︎」
布団の中に隠していたジャンズガンを取り出し、人間相手だからまだ蒸身はせずに剣を弾き飛ばした。その後は、とりあえず手刀で気絶させていった。
「でもとりあえずは、逃げる‼︎」
そうやって一旦、テラスと合流しようとした次第だぜ。
とりあえずこっちの情報も伝えて、てっささんと二人で作戦会議をしていた。
ただし、森を彷徨いながらほぼほぼ何も思いついていないんだけど。
「……とりあえず、アマちゃんとも合流しよう」
「そうだな。そうしよう‼︎」
そしてまた迷子になって、アマちゃんの場所に辿り着くまで三時間以上かかってしまった。
「ここの落とし穴に落ちたら……」
「面倒な感じだな」
「確かに。まあ、見つかりにくさを天秤にかけたらそうなったんじゃないんですか?」
落下したら、また落ち葉が敷かれていた。だけど前と違って何か、匂っている。
てっささんが、暗いからと目の前に灯りをつけてくれると、目の前には赤い液体が広がっていた。
「血⁉︎ アマちゃん大丈夫⁉︎」
血を辿っていくと、そこには血だらけのアマちゃんが眠っていた。
「あ……‼︎ 良かった。まだ生きてるよ‼︎」
「……そうだな」
だけど、僕はまだ気づいていなかった。アマちゃんの傷は少しの切り傷のみで、大量の血はアマちゃんじゃない……別の人の血だという事に。
味方陣営が強すぎて、なんかもうサクサク進んでいきますね。




