三重奏のユニオン
三人三機が、再び結界内へと突撃する。
ダクディーバのエンドレスブーメランが旋回。流星を次々と打ち砕き、俺たちは遮られる事なくギャッシャスの元へと向かう。
光。
ギャッシャスは、光芒如く煌めかしい輝きを発し始めていた。その体は、水晶のように輝いていた。
「光線です。回避しなさい‼︎」
エイジーの警告とほぼ同時に、ルフランは急加速。ギャッシャスの狙いも、ルフランへと定められる。
「……来る‼︎」
ルフランは急加速したまま、紙一重で光線を回避。目標に当たる事なく放たれたその光は、彼方の空で大爆発。その爆風は、地上に近い俺たちも巻き込む強さだった。
間髪入れずに、流星が発射される。
「仕方ないか……バーストミサイル‼︎」
四方八方に放たれるミサイルによって、なんとか全滅を回避した。だが、バーストミサイルは基本的に使い切りだ。範囲攻撃は、あとエンドレスブーメランしかない。
「行くぞ……エンドネスパンチ‼︎」
「そうだね……ダクソード‼︎」
今度こそ、必殺技と呼べる技をぶつけた。それでもぶつけたと思えば、それと同時に吹き飛ばされてしまう。
ルフランとの攻撃でも感じていた事だけど、敵の攻撃は反射に近いものだろう。攻撃が命中した瞬間、その分衝撃波を放つもの。
「だったら遠距離で……ダクディーバガン‼︎」
やはり、衝撃波は遠距離攻撃する奴には届かない。それを補う為の光線なのだろうが、如何せん発動までが遅い分意味をなしていない。
ただ問題が、遠距離武器を持ってるのがダクディーバくらいしかいないことだが。
そして、そのダクディーバの攻撃でも突破口は見えていない。
「一か八か、エンドネスフルビームを試すしかないだろう。このルフランと、フィシュのダクディーバとの連携次第では……十分可能なはずだ」
「それに加え、ゼロ距離がいいでしょう」
「分かった。ブーメランでなるべく蹴散らすから、残ったものをそっちが蹴散らして。発動の少し前にデスウィップで掴んで飛ばして……って感じでOK?」
「OK!!」
ダクディーバは多彩な武器が特徴の機体だ。手数の多さは、組み合わせによって活かし方が変わる。
だからこそ、自己や他者の使い方が分かるのだろう。
「さてと、作戦実行だ‼︎」
俺はとにかく、エネルギーチャージを行う。
さっきよりも密度の上がった攻撃に、ルフランはグラシャライごと、機動力を活かして避け続ける事を選んだ。意外と上手く行っている。
いやそれにしても、大分風変わりな避け方とは思うが。
「今‼︎」
フィシュの叫びとほぼ同タイミングでグラシャライは投げ飛ばされ、そのままダクディーバのデスウィップに掴まれ更に加速させつつギャッシャスへと接近。
「「エンドネスフルビーム‼︎」」
喰らいつく用にギャッシャスを手と口で押さえつけ、直撃。衝撃波に抗いながら、耐えきれず吹き飛ばされるまでずっと光線を放ち続けた。
帯びた熱を放出できないと悟ると、お前も道連れだと言っているかのように大規模流星攻撃を繰り出す。
「これは……回避不能です。凌ぎなさい‼︎」
「凌げっつったってどうすれば……いや、愚痴なんて言ってる暇ないか。来るぞ‼︎」
地表で大爆発を起こした数多の流星は、絶え間なくこの大地を光で包んでいた。地表から連鎖的に、地表に達してない流星も大爆発を繰り広げていて、残酷的な輝きを見せびらかしていた。
その轟音の中でも、怪獣の遠吠えが大きくなっていっているのが分かった。それに光の中の影が、徐々に濃くなっている。
「おいおい。ここまで強いのかよ‼︎」
怪獣は、グラシャライの胴体に噛み付いたのだ。
ギリギリコックピットまでは達してないが、完全に噛み砕かれるのも時間の問題だ。だが下手に必殺を使えば、この熱量の中だとグラシャライが耐えきれない。
あちら二つと比べて、グラシャライの熱耐性はどちらかといえば低い方なのだ。
大爆発とそれが撒き散らす大轟音の中、怪獣は疾走する。黒き影を見ると、今度はどうやらダクディーバの方へと駆けているようだ。
「こうなったら……ダクソード‼︎」
下手に爆発中に起動すると熱に耐えきれず爆発する可能性もあったが、僅かな隙間でダクソードを起動させる。
ダクソードの熱量自体は、エンドネスフルビームに匹敵すると思われる。
怪獣の突進に対して、溢れた熱がすれ違いさまに切り裂く。それでも怪獣は傷一つついておらず、その歩みを止めることはできなかった。
小さな影が、目の前に現れるまでは。
「プリワズマーキック‼︎」
グラシャライの熱線、ダクディーバのダクソードによって多少なりとも弱体化していた装甲が、プリワズの必殺技によって初めて穴が開いた。
怪獣がしばらくのたうち回っている間に、結界の外へと再び退避。形勢の立て直しが必要だ。
「先程ので、ダメージが少し入ったと思われます」
エイジーからの報告ではっきりしたが、のたうち回ってるのは痛みからか。
「これで、やっとダメージが入った程度⁉︎」
「中々に厄介ですね。我々にとっての最大火力でもあるエンドネスフルビームでもダメージが入ったわけでもないと考えると、色々と考え直した方が良さそうですね」
「そうみたいだが……もう回復したようだぞ?」
のたうち回ってた怪獣は、再び結界内で鎮座した。装甲が復活しているのを見るに、さっきのダメージはもう回復していると推測できる。
こいつの攻略法は、大火力を一気に与えて焦点突破。だが俺たちには、その大火力がないに等しい。
「万事休すってこと……?」
「その通りです。しかし、そういう状況を断ち切れなければ我々がここにいる意義がありません」
「その通りだ。何か方法を考えるしかない」
自分がヒーローのような精神性を持ってるとは思ってないが、少なくとも終わりの地に住む人々にとってこのグラシャライはヒーローに近い存在なんだ。
それに、今回は二人の協力もある。負けは許されない。
「でも、今可能な事は大方試したよ?」
「そう、なんだよな……」
実際俺も、その方法とやらを思いつけてるわけじゃないし、思いつける気もあまりしてない。純粋な火力不足に、対策があるかと言われたらないからだ。
「いや、一つだけあります。ただし、かなり成功確率は低いと思われますが……」
そんな時、クリルラ博士からの通信が入った。
よくよく考えたら、ダクディーバといつも普通に会話していたのだが、あれはグラシャライがどうにかしていたのだろうか。
今も平然と会話できてるが、別に回線繋いでるわけじゃないしな。
クリルラ博士の声も聞こえてることを願おう。
「可能性がほぼ0だろうと構わない。教えてくれ」
一つ。そのたった一つすら思いつかなかった俺達にとっては、可能性があるだけまだマシだ。というか、今は本気で少しの可能性に縋るしかない。
「それは、グラシャライとルフラン、そしてダクディーバによる……」
「による……?」
フィシュが、無意識的に復唱しているのが少し愉快で笑いが溢れそうになってるが……真面目な会話中だし我慢しようそうしよう。
さてと、どんなのが来る?
「三体合体です‼︎」
「ゆ、ゆにおん……? あ、三体合体⁉︎」
「いや、え……可能なんですか?」
「え、めちゃ熱じゃん‼︎ めちゃくちゃロマンの塊じゃん⁉︎ 本当に出来るとしたら凄い嬉しいんだけど⁉︎」
うん……三者三様だな。本当に合体なんて可能なのか?
フィシュがロボットの浪漫を理解しているとは、本当だったらラルガと気が合ったんだろうな。
「前々から、グラシャライは本気を出せてないと思っていたんです。だから、ルフランを設計した時点で考えてはいました。それで数日前、設計図をラルガと共に完成させました。三機の性能を、これまで以上に発揮できるものを」
「三機の? グラシャライだけでなく?」
その返答は、ラルガから返ってきた。
「そうだ。グラシャライだけでなく、ルフランの機動力やダクディーバの汎用性を含めている。三機のこれまでの出力が80%だとすると、120%を超えるように」
「それは……確かに凄いですね。ですが、そもそも合体する為の変形機能はもう付いているんです?」
「ああ。ルフランは、最初から付いている。むしろ、問題があるのはグラシャライの方だろう。グラシャライの装甲は自由に変形するからこそ、三人の息のあった操作が必要となるからな」
説明的に、ある程度はプログラムでやってくれそうだが細かい調整に関しては手動で頑張るしかないのだろう。練習なしでそれをやるのは、かなり難しいだろう。
細かさの程度にもよるが、成功確率が低いと言うからには相当厳しいと予想できる。
「それでも……俺達なら超えられるはずだ‼︎」
自信を持て。成功するかどうかで一々悩んでいたら、それこそ失敗するに決まってる。だったら、とことん自分を鼓舞していこう。
「……当然です‼︎」
「そうそう。私達ならきっと成功できるよ‼︎」
ゼルもフィシュも、考えている事は同じみたいだ。二人に関しては、そもそも一瞬も悩んでなさそうだけど。
そうだ。隣に仲間がいる……少なくとも、今は。
「データは既にグラシャライもといエイジーに届いているはずです。三体合体の発動条件は、三人で三体合体と叫ぶ事になっています」
「準備はいいか? それじゃあ……未来を頼むぞ」
深呼吸をする。心を整え、その言葉を口にする。
「「「……三体合体‼︎」」」
今回、愛音のテンションがいつもより若干高めなのは素直に共闘が嬉しいからですね。




