混沌化したカプリチオ
「はあ……なんか、最近ダメじゃね?」
「そうそう。ルフランだがなんだか知らないけど、せっかくダクディーヴァで人数有利取れかけたのに」
「しれっと、巨人除いてない?」
「いや、あれを含めても意味ないでしょ。よくある雑魚敵みたいな強さだもん、あいつら」
「言っていい事と悪い事があると思うけどな……」
怪獣はあいつらを倒す役割が、巨人はあいつらに倒される役割がある。まあもうちょい強くても良かった気がするが、仕方ないと片付けるしかない。
どこかのタイミングで、怪獣複数体で攻めてみるのもありかもしれない。
その時、一人の男が入ってきた。
「おやおや、巨人に対して失礼だとは思いませんか?」
「マジか、お前が一番最初に目覚めちまったのかよ。他だったらまだ交渉の可能性があったのに」
「この人、誰?」
「《ティンプルノイザ》が一人。アラベスクと申します。エンドとは既知の仲でありますが、フィシュさんは初めましてでございますね」
「やっぱりその敬語、気味が悪いな」
「知り合いなの?」
「そう。《ティンプルノイザ》ってのは、巨人の中でも人間と巨人の姿を使い分ける事が可能で、尚且つ圧倒的な戦闘能力を保有している存在だ」
「かつては、エンドもその一員でした」
「……さっきから思ってたけど、私の知らないところで隠し事し過ぎだからね? 肉親ってのを理解しなさい」
「それで、何の用だ?」
後ろで無視するなというかの如く椅子を揺らしているフィシュを無視しながら、アラベスクの方を向く。
「そうですね。警告、とでも言っておきましょう」
「警告? あぁそうか。お前達は俺らの計画、もう既に分かってるって事か。皆んな方針の違いでよく揉めて、結局耐えれなくなった俺が出ていったんだもんな」
「未来は、求めませんか?」
「お前ら、いやお前か。その求める未来は、絶望しか生まない。俺たちは、そういうのが嫌いなんでな」
終わりの地と呼ばれるこの地では、ざっくり三つの勢力がぶつかり合っている。
《ティンプルノイザ》のそれぞれの計画、その碌でもない計画を阻止しようという俺らの計画、その全てを打ち砕こうとしているグラシャライたちといったところだ。
「警告はしました。ここからは戦争です」
「「上等だ‼︎」」
楽しそうに微笑んでいるアラベスクは、特に返答をすることもなく出て行った。
「とりあえず、怪獣の準備をしてここから移動するぞ。あいつが律儀に歩いて出てったせいか、恐らく俺たちを捜索している奴にバレてる」
「あのアラベスクって奴のせいでもあるけど、近くにいたって事は時間の問題だったかもだね‼︎」
「そうだな。とりあえず急ぐぞ‼︎」
「うん‼︎」
Iが旅立ってから数日、俺達グラシャライとルフランが怪獣と接敵していた。
水を操る怪獣で、腐敗した海を利用した攻撃を得意としていて、大規模質量攻撃なのに当たれば一発アウト。体内の水分操作とかしてないだけマシと思え。
「怪獣は、水の籠に包まれていますね。地面は腐敗した水になっている……グラシャライが浮遊を可能としていなければ、間違いなく即死でしたよ」
「そうだな。だが、グラシャライはエンドネスフルビーム以外はほとんどが近接戦闘のみ」
「それを言えばこのルフランも、近接で仕留めるタイプです」
ルフランは俺らの趣味全開にしたから言い訳でしかないけど、どうして近接特化とかグラシャライと被る性能にしたんだろうか。
せめて遠距離であれば、もう少し連携とかもやりやすかったな。
「そもそもなんで青狸(猫)みたいな浮遊なんだよ‼︎」
「それが、グラシャライの中の人の限界だからですね」
限界なら仕方ないのかもしれないが、もうちょっと頑張ってほしい。飛行が出来ない分、避け辛いし感覚も掴みづらい。
『フロレートゥムドライバー‼︎ シードプラントセット』
「……誰です⁉︎」
大きな機械音のような声が聞こえ、前後左右を確認する。だが、やはり何もない。こういう時に考えられるのは……やはり上だな。
「変身‼︎」
『大開花……プリワズ‼︎』
「あっちゃ〜やっぱり警戒されてるね。まあ、上空から飛来した不審者なのは事実か」
人間サイズの戦士、というしかない見た目だった。彼……女? は、巨大な花に載って空中に佇んでいた。
上空から飛来した不審者、空から助けに来るヒーローも、遠目から見ればあんなのなんだろうか。
「貴方は、何者なんですか?」
「鈍鎧姫花。この姿の名前はプリワズ。世界を渡り歩く、1本の花かな。《次元旅行者》とも呼んで、時やマルチバースを移動出来るんだよ?」
「つまり、別の世界から来たって事か」
「そうそう‼︎ この世界の存在自体は知ってたけど、よくよく考えたら来た事なかったなって‼︎」
鈍鎧姫花。
微かに、耳鳴りのような音がする。かつて何処かで、俺はこの少女と会ったような感覚がある。
だがそれは、鈍鎧姫花という一つの名前で覚えているのではない。
それと、鈍鎧という苗字は、エイジーに聞いたところ、存在しない名字だという。
存在しない苗字を名乗る、推定俺の友達である鈍鎧清田。そして同じく鈍鎧を名乗り、時やマルチバースを移動出来る力を持つ姫花。
偶然……ではないよな。
「それで、何をしに来たんですか貴方は。邪魔しに来たとか言ったら、本当に迷惑なんですけど」
それはそうだな。
「いやいや、そんな事しないよ。まあ不審者っていう汚名に関しては、これから解消させてもらうから。さあ、舞う花の如く……散れ‼︎」
姫花は宣言通り巨大な花を回転させながら怪獣を囲っている水の籠を、強行突破した。
「さっき、遠距離攻撃が欲しいって思ってたな?」
その時、ラルガから通信が入った。
壊れて土に埋まってたイヤホンなどを再利用して、グラシャライとルフラン、ラルガ達の連絡に利用している。
「ルフランの新武器と、それを扱う為の武装も用意した。その名も、スウィートライフル‼︎」
「なんか甘そうな名前ですが……とりあえず了解です。これから私も、合体フェーズに入ります。初回ですので、そちらも調整をお願いします」
「もちろんだ‼︎」
浮遊してるグラシャライを踏み台にルフランは急速上昇、姫花は絶えず巨大な花を怪獣の籠に落とし続けている。
天高く舞うルフランは、右腕に新武器を接続した。
「ルフラン……スウィートライフルカスタム‼︎」
右腕に巨大なライフルが。そして、右肩にはライフルに繋がっている謎の武装がくっついていた。
「全五段階のエネルギー接続が可能です。接続が増えるほど攻撃力が上がり、減ると攻撃スピードが上がります」
「そうか。肩のそれは、接続の為のコンセントのような役割を果たしているのか。ルフランから右肩の武装に、右肩の武装からライフルに……って事か‼︎」
ロボットアニメ見てた者からすれば、こういうロボットでの無駄に思えるような作業が、ロマンに感じることが多い……はず。
あんまり想像で話すと怒られそうだからな。
「あっちは順調そうだな……じゃあ、満開‼︎」
今度は小さい花弁を散らせていたが、範囲も威力もかなりのもののようで、地面に浸っていたのもまとめて吹き飛ばしてくれた。
やっと浮遊を解除すると、チャージする。
「エンドネスフルビーム‼︎」
掠った。
直撃は避けられたようだが、ルフランがいるならそれで十分だろう。
流石。俺と違って場数を踏んでるらしいゼルは、接続を瞬間瞬間で切り替えながら、怪獣の攻撃を出始めで潰し自分の攻撃は怪獣にぶち当てる。
「他の怪獣と比べ、かなり知性を感じる。ですが、私はそれすらも上回ってみせましょう‼︎」
ゼルは相手を寄せ付けないが、それでも怪獣の範囲攻撃は厄介。ゼルの攻撃も、倒すまでには至らない。
『マンカイチャージ。ダイセイチョウ‼︎』
俺たちは、一人ではない。
それが、俺たちの勝因である。ちょっと文句はあったけど、ルフランを作る路線で今なら良かったと思う。
「プリワズマーキック‼︎」
そのキックは、怪獣を貫通した。
「改めましてこんにちは。《次元旅行者》の鈍鎧姫花です‼︎ ここからしばらくお世話になります‼︎」
「あ、ああ。うん……」
「……やっぱり、迷惑でしたか?」
「いや、そんな事はないんだけど」
正直、あの謎の食料のおかげで人増える分には問題ないし、むしろ戦力が増えるなら良い事づくし……なんだけど。どういう事か、俺らの家で住むことになってしまったなので、気分はあまり良くない。
というか、俺らの家の男女比の女性傾きを誰かなんとかしてほしい。
「ああでもとりあえず、姫花さんは……」
「姫花で良いよ。知り合いのはずだし……というか、それについて話したいんじゃないの?」
「正解だな」
少し拠点から離れた場所。具体的に言えば、前にIが隠れていた場所へと移動した。
「単刀直入に聞く。怨念探偵とはなんだ? 鈍鎧清田とは何者なんだ……誰かもう言ったかもしれないが、俺達には記憶がない」
「多分私は、貴方の知りたい答えを持ってる」
「じゃあ……‼︎」
「でもね。私は、知ってるというよりか……知りすぎているという方が正しいの。私はこの先の未来についてのアドバイスは出来ても、答えは出さない。この世界の未来は、流石にこの世界の人々自身に判断してほしいから」
どうしてそこまで知っているのか。例えば、この世界の未来にも来たのだろうか……とか、色々と気になりはするけど仕方ないよな。
いや、マジで気になるけどね。
「あ、でも……強いていうなら、怨念探偵とは何かくらいは教えてあげてもいいかも」
「そうなのか? じゃあよろしく頼む」
「了解‼︎」
《怨念探偵》というのは、探偵……鈍鎧清田についていた異名。自称か他称かは定かではないけど、本人も嬉々として使っていた覚えがある。
「やっぱり、あいつだったか」
その頃……具体的に言うと2080年に、《怨念》と呼ばれる死んだ人間の残滓が生んだ怪物が出現した。
でも《怨念》は生み出した人間の心残りを果たせば消えるし、異常な力を持つ《特異点》でもなければ、世界が滅びる心配なんていらなかった。
だから、緩やかに対処されていってた。
「《特異点》か……」
そう。特異点。
元々怨念が世界のバグに近い存在だから、そのバグが世界の一部を破壊する程に至った時、そこから世界が修復しようとした時に生まれる力か、修復される前に別次元から得た力の、どちらかを持つ存在と定義されてる。
だけど、過去に存在していた様々な創作物と同様だと思う。世界的に、|特異《Abnormality》な点。
基本的には、世界を滅ぼしたり変えたりする存在だね。
例えば貴方達が知っている《特異点》だと、貴方が乗っているグラシャライもその一つだね。
「グラシャライもなのか……まあ妥当か」
「それ以外だったら、前の世界の宿命の皇帝だってそうだし……って知らないか‼︎」
グラシャライは、とある男が生み出した《特異点》を兵器として人間が乗れるように改良したもの。改良したのは、貴方達がエイジーって呼んでる存在だよ?
「そんなことだろうとは思ってたが、やっぱそうか」
《怨念探偵》の仕事は、基本的に怨念に関する依頼を解決する事。でもその頃はテロや大事件が頻発していた時代だったから、そっちでも大忙しだったよ。
「そうだ。夢の中で、信仰教団メフィヴェントってのが会話の中で出てきてたんだが、それも何か関係あるのか?」
「は? え、あ……そうですね。清田さんは、その教団の闇を暴く為に活動していたこともありますよ。知り合いがいるからって言ってました」
「そう……か」
まあ、とりあえずはこんなものですかね。
「そうなのか?」
「だって、細かい怨念とかの事情なんて知っても意味ないですし、かなりの時間かかりますよ?」
「どのくらいだ?」
「休憩なしで数日は」
「……確かにそれは、無理だな」
よし。じゃあ終わり‼︎
「貴方は、何者ですか?」
私ことゼルは、拠点から遠く離れた場所で独特の雰囲気を漂わせる謎の男と接触していた。
こんな世界には似合わない、宝石を身に纏っていた。
絶対当たるわけでなくても、こういう勘には従っておくべきだな。外れても、そん時はそん時と割り切ろう。
「巨人の変異種。《ティンプルノイザ》の一人……名を、アラベスクと申します。どうぞよろしく」
「ゼル。ルフランのパイロットだ」
よろしくするつもりはないが、名乗られれば名乗り返すくらいの礼儀はしておいた。
にしても、人に成れる巨人ですか。前の鏡ではなく、元からそういう種と言った方が近いのでしょうか。とにかく、厄介なのが増えたと見て……間違いないでしょう。
「単刀直入に聞きます。あなた、不老不死に興味は?」
「は……?」
不老不死なんて、ない。
ない……で、片付けて良いわけではない。でも、こいつは何が目的だ。もしかしたら、私の目的を知っている?
甘い話には裏があるとは言うが、これは甘い通り越して砂糖がぶ飲みレベルの話だ。信じるなど、論外である。
「《ティンプルノイザ》ってのは、特異点の力に触れて変質した四人の巨人が、永遠を目的に集った組織ってわけです」
「永遠ですか。詐欺師でもなかなか使わない言葉ですね」
「ほらほらあなたも、医者の端くれらしいではありませんか。永遠ってのは美しいですよね……既に、理論は完成しているのですよ?」
医者の端くれ……何故それを知っている?
「胡散臭い。理論は完成しているとは言うが、自分にはそれを信じる証拠になるものがない」
「永遠自体は、お好きですか?」
「そりゃそうだ。自分はずっとずっと、それを求めてきたんだからな」
交渉のテーブルは破壊しないようにしよう。それに、永遠の理論が本当にあるのだとすれば、それを奪ってから裏切るのも悪くはない。
まあ、その《ティンプルノイザ》側につく事はないでしょうけどね。
私はどこまで行っても、人類側ですから。
「理論を見せたとしたら、《ティンプルノイザ》に入りますか?」
「ああ。もちろんだ」
これは罠かもしれない。でも今動かなければ、永遠は永遠に失われるかもしれないと考えると、怖くなってしまう。
それに、愛音と姫花の二人体制になっても、きっと大丈夫でしょう。それに、ルフランも私個人の所有物ではない。乗ってくれる人が現れるかもしれません。
「だったら来てください。《ティンプルノイザ》の本拠地は流石に無理なので、代わりに永遠を研究している隠れ家へでもよろしいですか」
「ああ」
「ちょっっっと待ったあ‼︎」
今、一番聞きたくありませんでしたね。
恐らく、私が永遠について考えたりしていて気づかなかったのでしょう。いつから聞いてたのかは……ま、分かりませんね。
「さっきから永遠永遠って……お前、まさかそんなに永遠が大事だったとはな。まさか、俺たちを裏切っても構わないくらいにとはな?」
視線で分かる。これは、あっちも理解してる。
愛音と姫花だけなのも、運がいいのかもしれない。この二人であれば、ちゃんと察してくれそうな二人だ。そう、私の勘が告げている。
「私は永遠を求めてる。その願いは、どんな存在が立ち塞がろうとも、捻じ曲げようとも、決して揺るがない‼︎」
「そうか……じゃあ、お前は俺が止める‼︎」
「じゃあ、私の相手は……貴方、だね‼︎」
「面白いですね。やってやりましょう‼︎」
混沌。そんな現状に埋もれるのにも、ちょっとした悦びを覚える自分がいた。
永遠を求めているのは嘘ではないし、それを決して揺るがせないのもまた事実だ。嘘をつく時に真実を混ぜるのが良いとは、こういう事だろうか。
混沌に悦びを覚えているのは、永遠を求めているのと矛盾するかもしれない。
だけど今は、これで良い。
姫花さん、堂々参戦‼︎
それにしても、永遠を求めてる男が乗る機体がルフランなんですよね。ちょっとした皮肉?




