アマテラス
「さあ潰れろ……潰れてしまえ‼︎」
普通に考えてそんな質量がくっついた時点でこの地球が崩壊してないとおかしい気がするが、技の一つであるのだったら、ある程度制御を可能としてるのかも。
例えば、当たればその干渉を受けるけど当たらなければどうという事はないみたいな。
「あれに触れるのは危険……なので、遠距離攻撃でぶち壊すしかありませんね」
『それならば私に一つ、策があります』
「カリバー隊長⁉︎」
カリバー隊長。確か、てっささん達の上司だったけ。どういう人かは聞いてなかったな。
「それで、策ってなんだぜ?」
『そこには、神託児と呼ばれる存在もいる。そして今私の手には、秘密裏に手に入れた太陽の力を秘めた結晶がある。その力を、この船から与えます。その上で、神を継いだ二人とうぐいすを貴方の回路を繋ぎます』
「回路って?」
「このパワードスーツには、エネルギーを通す為の特殊な回路があるんだぜ。宇宙船からどこからでもエネルギーを受け取る為なんだけど、そういえばエネルギーがあればそこからどうにかして繋げれるらしいぜ‼︎」
どういう原理か分からないけど、とりあえず見えない上に触れないエネルギーを供給するパイプのようなものがあるみたいだ。
太陽の力を秘めた結晶か……どんな感じなんだろ。
「私の力は、多分ほとんど村長が持ってます。じゃないと、先にあの化け物を奪うわけないですし。ですので、私たちにはもうあまり力が……」
『そんな事ありません。貴方の名前が、それを証明していると私は感じます』
「名前……?」
「アマテスとテラス。二つ合わせたらアマテラス。天照大神ってのは、有名な太陽神なんだぜ。二人揃って初めて、意味が発揮される」
「二人揃って初めてか……テラス君、やってみる?」
「うん。やってみよう‼︎」
空から炎のような光のようなものがてっささんの頭上に降り注ぎ、終わった後もパワードスーツが燃えているかのような状態へなった。
黄金の線でそれを支え、僕たちの力もそこへ注ぐ。
「ジャンズガンが……変化しまし、た⁉︎」
光り輝いたジャンズガンには、紅金のユニットが生まれていた。アマテラユニットとかだろうか。
「皆んなありがとう……蒸・神‼︎」
『ジャンズ、ジャンズ‼︎ ギャラクティック・トップオブ・サン‼︎ ア、アマ、アマテラ……アマテラス‼︎ 蒸の孤独な宇宙をも超え、世界を照らせジャンズブラスト・アマテラス……アマテラス‼︎』
それはもう、星々を照らすお日様のようだった。
俺はかつてずっと、感情を失っていた。喜びも、悲しみも、怒りも、この胸の中にはなかった。
だから、軍人……というか、カリバー隊長に育てられた時は人の形をしたマシーンとして徹するつもりだった。だけど彼は、俺に感情を教えようと試行錯誤してた。
まああの人忙しかった上に、何かを教えるの得意じゃないらしくて苦戦していた。
結局そのまま、軍人として任務に駆り出された。だけど俺達が救った人々が見せた笑顔や、大切なものを失った悲しみを見て……徐々に感情を取り戻した。
うぐいすを拾ったのも、元々はこの経験があったからだ。野良犬のようなあいつの姿は、どこか昔の俺に似て見えたから。
自己満足。そう、自己満足だ。あれもこれもそれも全部、自己満足に過ぎない低次元のこと。
皆んな俺を星々が輝いているようとか言ってるが、俺の本質は月だ。皆んなという太陽を、照らし返す事によってやっと輝きを取り戻す存在。
「だけど、今は皆んながいてくれるから。自分の輝きだけで、皆んなを照らせる……ように‼︎」
莫大なエネルギーをチャージする。制御やエネルギー維持の為に、まだうぐいすやテラス達との回線は繋ぎっぱなしにしている。
この力……‼︎ この判断は、正解だったみたいだぜ。
「アマテラ、ストライク……だぜぇ‼︎」
拮抗。
最初に、確かな拮抗を感じた……のだったら、押し返すまでは行けてなくても対抗は出来ているはず。
このまま……押し切るぜ‼︎
「うおおおおおおおおおおおだっ、ぜぇぇぇぇぇぇ‼︎」
さっきまでの戦いの分も含め、かなり疲労がこの体から確認される。長期戦は無理かもしれないけど、歯を食いしばってでも倒れたりなんかしないんだぜ‼︎
「「うおおおおおおおおおおおお‼︎」」
「「はああああああああああああ‼︎」」
ジャンズマグナム・アマテラス形態での必殺技は、確かに強いけど消費もどうやら激しいよう。だからとっとと決着つけないと……だけど。
やっぱり、どこか違和感あるな。
「あ……まさか、神装が解けかかってる⁉︎」
回路から放出しているエネルギーの量が、体感徐々に減ってきている。それに少し、ノイズのようなモヤのようなものが入っている。
この内にある力もまた、どこかから接続して受け取っている。それが宿命の皇帝かその内部からだとすると、そりゃあ使えなくなると思う。だって、こんな大規模な攻撃をしてるんだから。
恐らく、もうこの力は使えない。
「でも、今消えたら……⁉︎」
「うん。てっささんが、持たなくなる。今はとにかく、踏ん張るしかないよ‼︎」
「分かってる。分かってるけど……‼︎」
どうすることも、出来ない……?
足掻いても足掻いても、もうそろそろ僕の神装は解けると本能で理解している。
「かみ……さまぁ‼︎」
生まれてこのかた、正しく神を信仰した事はない。
神々しさを感じたり、アマちゃんに向けた崇拝みたいな感情もあるけど……というより、その辺の感情全てをアマちゃんにぶつけてた。
神がいなくたっていい。信じてなくても、自分ではどうしようもない事に対して、僕たちは願うのだろう。
「「神様……‼︎」」
「俺を呼んだか?」
いつの間にか、果てのない白い空間にいた。さっきから、空間を軽々と変える人達多いなぁ……どうやったら出来るんだろ。
ってそれより、この目の前の人だ。
「貴方は……神様?」
「そうだな。俗に言う神様……さっき天馬が言っていた、人の身から神と成りし存在だな。せっかくだ。力を貸してやろう」
「いいんですか? 私は正しい意味での神ではありませんけど、あれに接続したせいで少し知識はあります。それによると、神様からの干渉は——」
御法度。もしくは、また別の何か。接続が長かったとはいえ、知識が入ってくる事もあるのか。
「少なくとも今は、心配しなくていい。それに、手伝うと言ってもやる事は神装を永続的に可能とする事だけだ。それだけあれば、行けるよ?」
「もちろんです‼︎」
白い世界は、瞬く間に崩壊していく。本当の神様は、文字通り格が違うなと思う。
「……貴方の、名前は?」
「フッ。神様の名前なんて聞いてどうすんだよ……あえて名乗るなら、レッド。簡潔で簡素な三文字だ」
赤。それは、炎の神か、怒りの神か。それとも、人間の時の名前に関するモノなのか。あまりにも遠い存在で、答えを知る機会ないかもだけど。
でもなんだかんだ人間臭さが残っていて……とても、良い神様なんだと感じた。
『エルドナイトドライバー‼︎』
『神託ドライバー‼︎』
「「……シェイプシフター、神装‼︎」」
『神をも守る金色の騎士……金色の騎士‼︎』
『継承。神を託され、託す。神は我で我は神なり……神託の顕現‼︎ デ、ア、ト、ラー‼︎』
滞りなく、神装が完了した。これだったら、行ける‼︎
「てっささん、今だ‼︎」
「あぁ。アマテラ・ストライク……全開だあああああ‼︎」
「ば、馬鹿なぁ……このわしの、地を侵する・偉大な星屑が破られるなんてぇ‼︎」
「分かったか‼︎ これが僕たち人間の、未来を求める意志。そしてその……力だ‼︎」
「決着をつけるぜぇ‼︎」
再び、皆んなでエネルギーチャージを行う。今度は一つに繋げるんじゃなく、それぞれの意志を込めて。
「オーラブレード‼︎」
「ジャンズスラッシュ‼︎」
二種の斬撃で宿命の皇帝にくっついている足などをスパスパと切り落とし、本体にもダメージを与える。
連携の最初は、相手のこの後の行動を狭めるのが基本。
「コンデミア‼︎」
その一撃で、宿命の皇帝は完全に破壊された。だけどまだ終わってない。神々しい力を取り込んだ、村長は未だに諦めてない。
ここまで来ても諦めないのは、素直に凄いと認める。その根性を、もっと別に活かせなかったのか。
「ダイナミック・アマテラスラッシュ‼︎」
それは、オーラブレードと似て非なる、ジャンズガンに太陽のエネルギーを纏わせて剣へと変化させる技。
その剣で、一撃‼︎ でも、まだ足りない。
「倒せないのなら、何度でもやるまでだぜ‼︎」
「このわしがわしがわしがわしがぁ……⁉︎ この神の力すら受け取ったのに、負けるなどありえん‼︎ こんなのは、何かの間違いだ‼︎」
「諦めなければ、ありえない事なんて何もない‼︎」
四方から高速で切り刻み、村長に攻撃をする暇を与えてない……流石、てっささん。でもその代わり、僕らからも攻撃出来ないけど。
「馬鹿な馬鹿な馬鹿な‼︎ そんな——」
「……これで、止めだぜ‼︎」
苦し紛れの攻撃をも回避し、胴に強烈な一撃を叩き込んだ。村長はもうその場から動けなくなって、サイボーグの体が次々と崩壊していってた。
「そんな……つか、むしえ……わし、さまああああああうううううああああああああああああああああああ‼︎」
最期は、小規模のしょぼい爆発だった。
これでやっと、この村が終わったんだ。あまり実感が湧いてこないが、何年も暮らしていたんだ。愛着は、ちゃんとあったんだろうな。
「後始末については、別の部隊がやってくれます。私達は、生き残った村の人達も含めて宇宙船で月へ向かいましょう」
「おう‼︎ 話したい事とかまあ色々とあるだろうが、とりあえず移動するぜ?」
「あ、分かりました」
移動。でも宇宙船は村の外に停泊してるらしいから、すぐに移動しても移動時間はかなり暇だ。
だからなのか、アマちゃんから話を切り出した。
「そういえば、村長はさいぼ〜ぐ? ぽかったですけど、昔からあんな技術あったんですか?」
「え、いや、普通はないと思うぜ‼︎ まあ、古代兵器という古代に封印された技術を使って作られたものがいくつかある。その一つかもなんだぜ‼︎」
「それか、悪質な《次元旅行者》の可能性もあります」
「「じげんりょこうしゃ?」」
「私もさっき知ったのですが、《次元旅行者》というのは世界を超える力を持っていて、その力を行使して世界を旅する人……って、あれ、そういえば、ひめか、あ‼︎」
「なーに、私を忘れてくれちゃってんですか」
いつの間にか、後ろに知らない少女がいた。なんというか、これが俗に言う美少女ってやつなのかなぁ。あんまり興味ないけどさ。
「あ、す、すみませんね」
「……まぁ良いですけど。あ、貴方がてっささんですね? 後で話聞かせてください。書きたいものがあるんです」
「お、良いぜ良いぜ……なんでも聞いてくれだぜ‼︎ ああちなみにそれってつまり……小説家になりたいって、ことなんだぜ?」
「どうなんでしょう。私はちょっと、特殊な事情を持っていますから……というか、私と貴方会ったことありませんでしたっけ?」
「え、そうなんだぜ?」
移動時間も案外、退屈しなさそうだ。
「ふお、ふおおおおおおおおおおおお‼︎」
「……綺麗だね」
月が、今、目の前にある。
月に行ってみたい。届かない夢だと思っていたそれに、到達しようとしている。近づいてみると、地球から見るのとは全く違う。
もしも僕がどこかで諦めていたら、こんな事にはなっていなかったはず。
「喜んでくれたなら、良かったんだぜ‼︎」
「私達は今更感動なんてありませんが、人が喜んでいるのを見ると……意外と、心が動くものですね」
「はい……ありがとうございます‼︎」
早く着いてほしいという気持ちと、このままこの感動を味わっていたいという気持ちがある。
僕とアマちゃんは、これからどうなるんだろう。未来がどうなっているかなんて分かんないから、不安ももちろん心にある。
でもきっと……大丈夫だよね?
「ちょっとだけ、不安そうな顔してる?」
「かもね。これからどうなってくかな〜とか、とりあえず教育されるのはよく分かるけど」
最終的に、村から生き残った人もそこそこいたよう。だけどこのままだと、常識がないせいで社会に出られない。
特にアマちゃんは、その辺の知識が乏しい。その上、村長のせいで変な事をたくさん教えられてるはず。あの村は、終わっても毒をちゃんと残して逝った。
「大丈夫だよ。私達は、いつだってどんな時だって一緒なんだし……それにさッ‼︎」
アマちゃんの方を向いた途端、アマちゃんの方から口と口を合わせてきた。
嬉しい……けど、てっささんがいるから恥ずかしい‼︎
「私も未来を、諦めたりなんかしないから」
「……そうだね。僕も絶対に、未来を諦めない‼︎」
そう言って、二人で触れ合った。
永遠の愛。
それが確かなものなのか分からない。それを陳腐とか馬鹿馬鹿しいとか言う人もいるだろうし、そう言われる理由もわかる。
諦めなければ全てが叶うわけでもないし、実際僕たちも完全なハッピーエンドなんかじゃない。
諦めない事の良い点はむしろ、言い訳しやすい事にあるのだろうしね。
先なんて見えない世界だ。でもそんな世界だからこそ、僕たちは生きているのだと思う。
もうじき月に到着する。そこで僕たちは、新しい日々を歩んでゆくはずだ。悩み苦しみ、絶望する事もたくさんあるだろう。
「行こう。アマちゃん」
「そうだね。テラス君」
それでも二人ならきっと、いつまでも大丈夫だ。
Record2、完‼︎ てなわけで、謎も多いですけどこの時代の物語は一旦終わりですね。安心させる為に言っておくと、村長はちゃんと伏線なんで。
でもとりあえず、諦めないヒーローっていいですよね。




