諦められない未来
アマちゃんの元へ辿り着いたと思えば、アマちゃんは謎の大きな化け物。しかも、さっきと比べてもめちゃくちゃ強そうなのに乗っていた。
「あれはまさか……宿命の皇帝⁉︎」
「し、知ってるのかうぐいす⁉︎」
「あれは、まだ地球が怪黒という怪人集団に侵略されていた時のこと。テルメアと呼ばれた男が召喚したが、ほとんど噛ませみたいに倒された存在‼︎」
ブラ……レン? っていうのも、テルメアっていうのも誰か全然分かんない。地球という言葉が出てきてるから、地球がこんな事になった原因だろうか。
歴史についても、いつか教えてもらう必要があるな〜。
「噛ませみたいに倒されたというには、気配も含めかなり強そうだが……まあ、俺たちなら行けるぜ‼︎」
『ジャ、ジャン、ジャジャジャンズ‼︎』
待機音を鳴らしている。僕のもこういうのないのだろうか。つけれたら絶対につけてたのになぁ。
「「蒸身‼︎」」
「神装‼︎」
蒸身。
その軌跡は、奇跡から生るものではない。
ジャンズガンの起動と共に、月周辺を秘密裏に周回している月面特殊部隊エイアの戦艦を仲介して、そのままダイレクトにNDL粒子を受け取ることでどこでもOKとなる。
ジャンズ・アーマード・システムにより、FVが人を包み込むように展開。それがアーマーを形成して蒸身は完了する。
『敵は全て撃ち落とせ‼︎ ジャンズ……マグナム‼︎』
『悪を切り裂け‼︎ ジャンズ……ブレード‼︎』
空から、大量の金の結晶が降ってくる。それは床についた途端に大爆発して、破片が飛び散る。
「想像以上の威力⁉︎ とりあえず……行くか」
三人で別々の方向へ分かれながらも、宿命の皇帝へと突撃。金の結晶は着弾する前に横から割ってしまえば、爆発の威力は弱くなるようだ。
危険になったら、とりあえずぶち壊せば良いんだ。
「なんで……テラス君⁉︎ 私に投げ出してくれるって……ねぇ? 全部って、言ってくれてたよね?」
そもそも聞こえてたの……ってのは野暮か。
「言ったよ。アマちゃんの為に命を投げ出す覚悟は、まだ全然変わってない。それは、嘘偽りない本当だよ」
「じゃあ……どうして? 遠くからしか聞こえなかったけど、何があっても守り抜くって言ってくれた時、私とっても嬉しかったんだよ? ずっと味方だって、いなかったからさ」
そう言った彼女は神装を解除すると、僕の方へ視線を向け、僕は彼女の顔を見ると、確かに嬉しそうに微笑んでいた。
その笑みは、いつものような純真な笑みではなく、美しさはそのまま妖艶さが追加されていた。
なんか狂わされそう……いやそうじゃなくて。
「僕は夢が大きいから。皆んなで、幸せになりたい‼︎」
「破滅はいつだって平等だし、こんな世界なら一度滅ぼすしかない。死んでやっと、幸せになれる」
あまり、理解出来ない。人と人が完全に分かり合える事がないように、その辺は折り合いつけないと。
「外の世界の事はあまり知らないけど……生きて、生きて生きて生きて生きて生きて。その末で絶望したんだったらそりゃ当然だけど、僕達まだ幼いだろ? テッサさんの言う通り……諦めるには、まだ早い‼︎」
「そうなんだぜ。まだまだ二人には未来がある‼︎」
「生きた末? 未来? 傲慢。私が今託されているのは、これまで人類が積み重ねてきたモノ。そこらの長生きな人よりも、よっぽど確かだと思うけど?」
「それは……でも、色々と偏ってるでしょ⁉︎」
何かバリアのようなものを貼っているようで、それを破るような攻撃を金の結晶を回避しながらぶつけるのは、ほぼ不可能に近い。
やっぱり、説得しつつ隙を見つけるしかないか。
「……そうだ。これは聞かないと」
「なに? ほらほら、私のこと聞いてくれるなら喜んで答えるよ。だって、テラス君にまだ知ってもらえてないこと沢山あるもん」
「人を……食ったの?」
聞きたかったけど、聞けなかった。
時間が経つにつれ、その発想に何度も至った。だけどその度に、そんなわけないと考えないようにしていた。
「え、そうだけど……それがどうかした?」
やっぱり、そうだったんだ。僕と暮らしたのも、まだ今よりも更に幼い頃。なんで言葉が喋れてるのかが不思議なくらいには、何も教えてもらってない。
いや、会話だけは村長がやってたのかもしれないけど、アマちゃんは人喰いを多分肯定されて過ごしてきた。ずぅっとそれが、当たり前だと思って生きてきた。
答えた瞬間、少し素の笑顔が見えた。少しは接続している影響があるだろうとはいえ、多分本音だ。
「そうだよね。あれ、あんまり美味しくないし皆んな食べないもんね。私だって死んだのは可哀想だったからあんまりだったけど、あれしかないなら仕方ないよね‼︎」
「……てっささん。罪の所在は、とりあえず救った後から考えるって感じでいいですかね」
「今は、考えない方が良い。被害者でもあるはずだぜな」
あの子が良い子なのは、確かなはずだ。もうちょい普通の産まれをしていたのなら、もっとちゃんとした愛情を持って育ったのだろうと思う。
いや、もしもを考えたら尽きなくなる。
「くっ……近づけませんね‼︎」
「連携攻撃とかで、強行突破するしかないみたいだぜ‼︎」
「テラス君は私と一つになるから必要だけど、なら残りの二人は……邪魔。早く消えて」
攻撃の密度が上がった。それも、回避すら許されないだろうほど。その割には、僕の真上だけスカスカ……これは、狙いを定めてきたって事か。
「ジャンズブラスト‼︎」
「ジャンズスラッシュ‼︎」
空が見えた……だが一秒もない間に、再び密度が高い金の結晶が空を包んでしまった。やはりさっきまでと本気度が違うと、視覚で認識させられた。
黄金の線を使い、食い止める‼︎
「諦めない……アマちゃんを絶対、取り戻すんだ‼︎」
「私はここにいる。ここにいるんだから、そんな辛い思いしなくていいんだよ? そうだ‼︎ 武器とか捨てて、私の所に来ない? 癒してあげるからさ……‼︎」
もう、無理か——?
「そうだ。諦めるな‼︎」
光が無差別に降り注ぎ、何も見えない。しばらくすると光は消えて、目を開ける……すると、さっきまで降ってきていた金色の結晶はどこにもなかった。
空は、星は、そこにある。
さっき見えた光……少し前に見た羽根のようなものが、金色の結晶を全て消し去ったのだろう。どういう威力してんだと思うけど、本当に助かった。えーっと、さっきうぐいすさんが名前呼んでたよね。えーっとぉ。
「「天馬さん?」」
「「あっ」」
綺麗に2回被った。
「どういたしまして……ああそれと、一つ言っておく。神様の適性を持った存在、神の器とも呼べる存在は基本的に純真で穢れののない存在。その代わりとして、染まりやすい存在でもある……善意にも、悪意にもな」
「染まりやすい……」
確かに、アマちゃんは基本的に純真。その器が綺麗だからこそ、好き勝手に汚しやすいってわけか。
「だから、接続を解除した上で説得するのが良いだろう」
「どうして、そこまで神の事を……?」
「かつて私も、人間から神になった存在と出会った事がある。その時、神に適する条件として、精神性が生物を超越しているか、異常な純真さを持っているか……だったな」
「そ、そうなんですか」
本当の神様もちゃんといるんだ。なんか、ちょっと安心したかも。にしても、天馬さんは本当に凄い人なんだなぁとよく分かる。
「接続を解除する……か。どうすれば解除出来るのか、知ってるんだぜ?」
「あぁ。空間ごと切り取る……私が協力しよう。君たちはとにかく、あの上から彼女を引き摺り下ろしてくれ」
「了解だぜ‼︎」
「分かりました」
すぐに二人はジャンズブラスト、ジャンズソードを発動して宿命の皇帝へと攻撃。さっきの羽根攻撃でバリアも壊されていたのか、普通に命中した。
「やめて……私は、ただ皆んなで幸せになりたいだけなのに。それでしか、未来は存在しないのに」
それはきっと、歪んだ幸せなのだろう。
僕にも分かる。わかってしまう。あんな絶望からは、さっさと救ってあげないとね。
「僕は……金色の騎士。皆んなの未来の為に、どんなモノだって切り抜ける‼︎」
金色の線たちを束ね、一本の剣とする。
オーラブレードみたいな感じだろうか。僕と共に、どんなモノだって切り抜ける相棒になるかもしれない。
「未来は……未来なんて……くっ、コンデミア‼︎」
「確かに、明日は怖いかもしれない。絶望がたくさん待ってるかもしれない。それでも僕は、もう二度と未来を諦めたりなんか……しない‼︎」
オーラブレードでコンデミアの攻撃を生成途中の魔法陣ごと切り抜いて、急所を避けながら激しく切り裂く。
「神域界華……‼︎」
一瞬世界が揺れたと思ったけど、目が覚めたら昼の明るい森の中にいた。いや、少し前までは瓦礫ばかりだったのがすぐに変化した。
「神域界華……馬鹿みたいな力を消費する代わりに、それに見合うほどの自分に有利な空間を創造する事が出来る。さっきの瓦礫は私のだが、この空間の権限は今は君のものだ。終わったら解除してくれ」
「は、はい……ありがとう、ございます」
「礼はもう十分だ。それに私は、ライダーズだからな」
らいだぁ……ず? 聞きたいけど、話が進まないから一旦心の隅っこに置いておこう。それで忘れてなかったら、また会った時に聞こうそうしよう。
「なにしてるの?」
アマちゃんは、少し離れた場所で蹲っていた。チラリと見えるその表情は、いつものアマちゃんと同じで安心しながらもアマちゃんの正面へと行く。
「破滅なんて望んでない……でも、確かに私の中にそういう願望があった。私はテラス君以外との関わりなかったし、二人以外は滅んでくれればって」
「人は多分、誰もが些細なことで小さな破滅願望を抱くものだよ。あるのが悪いんじゃない。それを集めて、あんなのを生み出した奴が悪いんだよ」
《滅悪憎絶源》は、恐らく何者かが破滅願望を集めたからあんな事になったんだと僕は感じた。根底に、誰かの悪意を感じたから。
ああやって悪意を集められるのは、純真な子かとてつもないほど悪い奴だけだろう。
「僕は分かってるから。あれが、アマちゃんの本音じゃない事くらい」
「そうだよ。私も……皆んなで、未来が欲しいよ‼︎」
てっささんの、僕の思ってるよりも強い子だという言葉を思い出す。
僕はまだしも、てっささんがアマちゃんを信じた。きっと僕の方がよっぽど、アマちゃんを信じれてなかったんだと思う。本当、反省しかないな。
彼女は染められても、深層心理の奥で未来を望んでた。
「人を食べてはいけないのが、普通の倫理観なんだよね」
「うん。そうだよ」
「私は……基本的には死体だったけど、時には生きた人間だって食べた事がある。私は、その度に罪を背負い続けてたんだね。ずっと、ずっと‼︎」
「村長が全部悪いよ。ついでに言えば、気づかないふりをしていた僕も十分悪いし」
「でも、でもさ……」
「分かってる。アマちゃんは、自己満足で良いから償いたいんでしょ? 僕も、散々てっささんに迷惑かけた罪やらも含めて……ちゃんと償いたい」
「一緒に、償ってくれる?」
「もちろんだよ。その罪が永遠に消えなかったとしても、その先が地獄でもちゃんとついてくよ」
「ありがとう……テラス君。あと、ごめんなさい」
「結局、僕たちが一番迷惑かけて死ぬ気で詫びなきゃいけないのはてっささんだからね?」
「そ、そうだね。確かに」
本当、てっささんには迷惑かけっぱなしだ。司法とかがどういう感じなのかは知らないけど、どういった罪で裁かれるんだろうか。
願うのなら、てっささんを手伝いたいけど。
「それと、私の為に全てを投げ出すのはまあ嬉しくないわけではないけど……私は、ちゃんと二人で支え合って未来を生きていたいんですぅーっ‼︎」
「え、いや、それは僕もなんだけど」
「テラス君のはどっちかというと、私の為ならいつ死んでも構わないとかそっち系だからね? 自覚あるか分かんないけどさぁ‼︎」
「いや……全く、いや全く自覚なかったです。不安にさせたのなら、大変申し訳ございませんでしたぁーっ‼︎」
土下座した。アマちゃんが僕の言動を言い出したら、確かに自分もめちゃくちゃ不安になると思うと、相手の立場になって考えるのも重要だと分かる。
これからは逐一相手の立場で物事を考えよう。
「懐かしいね。めちゃくちゃ前に、結婚って概念を知ってシロツメクサの指輪作って渡しあったんだっけ」
「そうだったね。私実は、牢の奥にまだあるんだよ?」
「え、そうなの⁉︎」
気分が上がっているのか、それとも嬉しい気持ちで溢れているのか、それともその両方なのか。
それはとても不思議な気分で、今なら……と思う。
手を掴み、少し屈んだ体勢にする。
「アマちゃん……僕と、永遠の愛を誓ってくれる?」
相変わらず渡すのはシロツメクサの指輪。変えたくないモノは変えずに。でも、ちゃんと僕たちなりに進化した証でもあった。
「はい。私も、永遠の愛を誓います」
離れないように、手を握り合った。
「終わったよ、てっささん‼︎」
現実に戻ってきても、アマちゃんの表情はアマちゃんのまま。もう大丈夫だとは思ってたから、ただただ純粋に二人で微笑み合った。
「いや、下です……‼︎」
もう終わったと思って警戒してなかったけど、よくよく考えたらまだ、宿命の皇帝がいた。てっきり主人が消えると消える仕様だと勘違いしていた。
「まだ、わしは……このわしはあああああああ‼︎」
「まさか、村長⁉︎」
村長がまだ生きている……いやそれ以上に、傷ついた村長の体はまるで機械のようだった。
「まさか……サイボーグなんだぜ⁉︎」
「そういう事⁉︎ なんでずっと生きてるんだとか不思議ではあったけど、サイボーグとかそんなのあり⁉︎ というか、サイボーグとはいえ不老不死とかあり得るの⁉︎」
「神託児は甘いから時間を多く授けてましたが、わしはそんな加減などせん……二分で、全てを終わらせよう‼︎」
村長が天に手を掲げると、空に浮かぶ星々が怪しく光ったような気がした。
その嫌な予感は的中したのか、村長の頭上に巨大な球体が生まれていた。物体なのか、オーラ的なものなのかはよく知らないけど、これはやばいとよく分かる。
「地を侵する・偉大な星屑‼︎ これは、太陽系全ての星々の質量が合わさっているのだよ‼︎」
そんなの、どうすればいいの……?
「単純な話だぜ‼︎ 犯人も星も、俺達が撃ち落とすぜ‼︎」
Record2も終盤ですね。
今回出てきた宿命の皇帝さんは別のプロットから取ってきたんですけど、なんか想像以上の強さでしたね。
ちなみにNDL粒子は、ほぼほぼ全ての世界にある概念です。




