オルヴィエートエンド
【ゲームを終了する】
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燻りかけた紫煙の煙が曇天に立ち昇る。
やめたはずの煙草をまた吸い始めていた。
妻の墓の前で、私は目を閉じていた。
ぽつ――ぽつ――と次第に雨足が強まってきた。
あの世界のこと、今ではただの悪夢だと思う。
「オルヴィエート……か、馬鹿みたいな名前だな」
周りに付き人がいた頃が懐かしい。
シノメやロザリアちゃんは元気にやっているだろうか。
全てを断ち切り戻ってきたはずなのに……
「これくらいは、浮気にならないよな?」
しょうもないぼやきが雨音にかき消されていく。
……ん?
目を閉じていると、雨粒が遮られた。
「こんなところで、風邪ひきますよ」
透き通るような女性の声。
見知らぬ誰かが背後から傘を差してくれている。
振り向くと、白いワンピースに麦わら帽子の少女が立っていた。
表情は見えなかったが、絹のような黒髪が肩口に垂れていた。
「ありがとう……ございます」
「いいんですよ。これくらい」
突然のことにどうしたらいいか分からず、
互いに立ち尽くしていた。
「あの……お名前を伺っても?」
「ああ、私は安東歩だ」
「歩さん……」
彼女は噛み締めるように名前を復唱する。
「キミは……?」
「私は――」
そこまで言いかけたところで、彼女は周囲を見渡す。
「あ……止みましたね」
「あ、ああ……」
「それでは……」
顔の見えない彼女はぺこりとお辞儀をして、
傘を差したまま、その場を去ろうとした。
いったい何だったんだ。
狐につままれたような不思議な感覚。
去り際に懐かしい百合の香りが鼻をくすぐる。
「まさか……キミは……」
ここにいるはずのない少女が立っていた。
彼女は傘を畳んで麦わら帽子を取り振り向いた。
そこには、懐かしい笑顔が立っていた。




