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開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第四章 魔王討伐編

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第82話 最後の選択

魔王城の最上階――そこに彼女はいた。


「皆さん、魔王です!」


エマさんがモーニングスターを構え、玉座に向ける。


「ナージャ王女……」


「ダイチ様!」

ナージャ王女が俺に抱きつく。


歪な角が生え、肌も薄紫色に変色しているが、この香りは間違いなくナージャ王女だ。


「お迎えに上がりました」


「遅すぎます……」


【チャプター 終章】


【魔王ナージャを討伐せよ】


ここに来て最悪のログが流れる。


ナージャ王女を倒したら……エンディング?


……まずい!


慌てて、おっさんの方を振り向く。


震える手には小太刀が握られていた。


――直後、おっさんが消えた。


おっさんの凶刃がナージャ王女の喉元に迫る。


“クラフト:鎖”


地面に楔を打ち込まれた無数の鎖が、間一髪のところでおっさんを拘束する。


「ダイチ……離せ!

魔王を倒せばクリアだ!」


おっさんの目はマジだ。瞳孔が開ききっている。

本気でナージャ王女を殺す気だ。


「ど、どういうことです!」


ナージャ王女が驚き、尻もちをつく。


「そうだな。クリアを目前に諦めきれるわけないか……おっさん、それでも俺はナージャ王女を殺させるわけにはいかない」


“かまいたち”


シノメちゃんが短刀を振り、無数の斬撃が鎖を断ち切る。


「シノメ、よくやった!」


“星魔法・スターフィールド”


スターナが発動した広範囲の重力場が、

俺たちの動きを鈍らせる。


「ちょっと、おっさん! どういうつもりよ!」


スターナのお陰でなんとか、場を牽制できた。


「こいつを倒せば……私は帰れるんだ……」


おっさん……やっぱり、諦めきれてなかったんだな。当然だよな。おっさんにとっての現実は元の世界だ。


おっさんはこの重力場の中、なんとかナージャ王女に近付こうとする。


「おっさん、早とちりが過ぎるぜ……エンディングは一種類だけじゃない」


「何?」

ようやく、おっさんは足を止めた。


「あんたにも、ストーリー分岐の詳細が見れるんじゃないか?」


おっさんの視線がかすかに動く。

エンディング分岐を確認しているんだろう。

俺にも見えるならおっさんにも見えるはずだ。


「……本当だな。

だが、ダイチはもう一つのエンディングを選べるのか?」


「仲間同士でこれ以上、殺し合いはしたくない。

だから、構わない」


「ダイチ……そのエンディングって?」

スターナの青紫の瞳が不安そうに俺を見ている。


隠し通すわけにはいかないか……


「ナージャ王女と結婚して、

魔王の側近として生きることだ」


「ダメだよダイチ……そんなの私が許さない!」


スターナが食い下がる。


「みんな、少し落ち着け!

猶予があるなら話し合ってはどうだ?」


レメリアが燃え盛る剣を地面に突き立て、注目を集める。


「レメリアの言うことも分かるが、

話し合いで、俺とおっさんの選択は変わらないぞ」


「ナージャ王女はどうされたいんですか?」


ライドウが提案する。


「私は……

殺されるか、ダイチ様と結婚するかですよね?

そんなの結婚がいいに決まっています」


ナージャ王女は俺の腕に絡みつく。


「わかっているよ。

俺もみすみすあなたを殺させはしない」


俺はもう覚悟を決めた。

ナージャ王女と共に生きると。


「ねえ、ストーリーを進めないという選択肢もあるわよ」


「ミスティ様の言う通りです。

私もダイチ様の結婚には反対です……

クリアしたらダイチ様もいなくなるんですよね?」


「シル……正直、クリア後にどうなるかは俺たちにも分からない」



エンディング分岐がわかっても、

エンディング後の道筋は記されていないから。


「オルヴィエートさん……もし、クリアしたらこの世界からいなくなるのですか?」


ロザリアちゃんが、おっさんの腕を掴む。


「ロザリア様……やめてください」


シノメちゃんが間に入ろうとする。


「なによ、シノメちゃんだって、オルヴィエートさんがいなくなったらいやでしょ!」


「……」

シノメちゃんは、顔を伏せるだけで、何も言い返さなかった。



「リリムはダイチの気持ちに任せる……でも、離れたくない」


「リリム……」


俺たちはそれぞれ望む結末が違う。

どれだけ時間をかけて話し合っても答えは平行線のままだろう。


最悪の結末は、痺れを切らしたおっさんが、

ナージャ王女を手にかけてしまうこと。


それだけはなんとしても避けたい。


ナージャ王女を失うぐらいなら……

俺の腹の内はとうに決まっていた。


全員の顔を見渡す。

そして、俺は覚悟を口にした。


「ナージャ王女……俺と結婚してくれ」


「えっ……!」


ナージャ王女は目を見開きこちらを見つめる。


彼女は一呼吸置いて頷いた。


「はい!」


みんな、呆気に取られていた。


【ストーリークリア】


「どうして、ダイチ!」


スターナが叫ぶ中、白い光に包まれた。


「スターナ……愛している」


最後の言葉は彼女には届かなかった。


これで……ゲームクリアだ。

ラスボス戦が告白一つで済むなんて、何とも呆気なかった。


でも、何よりも重い選択だった。


【エピローグ】


何もない白い空間。


俺も含め5人の影が何もない空間に立っていた。

――互いに姿は見えない。


この世界に飛ばされた転生者か?


梓とおっさんと……残り二人は誰なんだろう。


ま、俺の世界が全てじゃない。

呪術国家側の主人公とおっさんが殺したっていってた、錬金術国家側の主人公かな。


考えても無駄か……もう少しみんなといたかった。


俺の想いに呼応してか、ゲームログが出現する。


【強くてニューゲーム】

【コンティニュー】

【ゲームを終了する】


もちろん、最後の選択は決まっている。


微笑みと共に、俺の体は光に溶けていった。

ここまでご愛読ありがとうございました。

と言いたいところですが、ゲーム設定に則ってマルチエンディング方式となります。


各エピローグは随時更新していきますので、もうしばらくの間、お付き合いください。


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