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開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第四章 魔王討伐編

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第80話 乙女心

みんな、俺たちのために駆けつけてくれた。


旅の疲れもあるだろうからひとまず、

仮拠点の屋敷を増設して休息をとってもらう。


……スターナはあれから口を利いてくれなくなった。


チャンク抜けで《《裏世界》》から出られなくなったんだから、仕方ないじゃん。


魔剣ヨグ=ソートスでも、外に出ることはできなかったのに、スターナの拳で透明な壁が開通した理由はよく分からない。


このバグまみれの世界に理屈を求めたところで、

俺たちに分かる筈もなかった。


「はぁ……」

テラスの柵に肘をつき、昼夜すら分からない魔界の空にため息を飛ばす。


「青年、若いうちはたくさん悩むといい」


見たくもない顔が隣に立っていた。


「おっさん……

スターナは、どうすれば許してくれるかな?」


「スターナちゃんは別に怒ってないさ」


「そうなのか? なら、なんで無視されんだよ」


「ま、乙女心ってやつさ」


こいつが何を言っているのかよく分からないが、

ここは俺より人生経験豊富なおっさんに頼るしかなかった。


「おっさん……何か秘策はないか?」


「仕方ない……ここはおっさんが一肌脱いであげようじゃないの」


「おおっ!

さすがおっさん、伊達に齢食っているわけじゃないのな」


「ダイチくんはあれだね……言い回しが絶望的に終わっているね。これは、スターナちゃんも怒るわけだ」


「そんなこと言われても……」

正直、自分では何が悪いか分からなかった。


「そうだね。そこを一朝一夕で直すのは難しい。

手っ取り早い仲直りの方法は、贈り物とともに一途さと誠実さを持って謝罪するといい」


「贈り物? でも、ここいらに店なんてないぜ?」


「青年は、時々鈍いねぇ。

君にしかできないことがあるじゃないか」


おっさんが流し目で微笑む。


「俺にしかできないこと……」


「そうか、わかった! さっそく試してみるよ!」


「ふっ、青年のいいところは素直で思い切りのいいところだ」


「おっさん、ありがとな!」


「なに、これで少しでも借りを返せれば安いもんさ」


「借りなんてあったか?」


「……それもキミの良さの一つだったね」


おっさんに別れを告げて、

小走りにスターナの部屋へ向かった。


思い立ったら吉日。

俺はさっそくクラフトメニューを開き、お目当てのモノを作成してスターナの部屋をノックする。


「スターナ……俺だ……」


「……」

部屋の中から人の気配はする……でも、返事はなかった。


「スターナ……入るよ……」


扉を開けると、スターナがベッドの上で布団に包まっていた。


「スターナ……助けに来てくれてありがとう」


スターナが来なければ俺たちは永久に《《裏世界》》に閉じ込められたままだった。


「……」


「スターナ心配させてごめん」


床に両膝をつき土下座した。


どうしたら誠意が伝わるかなんてわからない。

でも、これが今できる精一杯の謝罪だ。



どれだけ時間が経ったか分からない。

スターナが寝ているか起きているかも……


ランタンに照らされた薄明かりの中、スターナの布団が動いた。


「ダイチ……もういいよ……私の方こそ意固地になってごめん……ダイチは悪くないよ」


「本当にごめん……」

俺はゆっくりと立ち上がった。


「っつ……」

やばいっ、足が痺れて思うように立ち上がれない!


バランスを崩した俺は、そのままスターナをベッドの上に押し倒した。


スターナの青紫の瞳が、ランタンの明かりを受けてかすかに潤む。


「わりぃ」


彼女の上からどこうとした時、スターナに服の袖を引っ張られる。


ん……勢いのままに唇が重なった。


スターナは服の袖を離してくれなかった。

俺も彼女の体温に体を預け、そのまま抱きしめた。


二人はそのまま言葉もなく寄り添った。



翌朝――隣にはスターナが静かに寝息を立てていた。


彼女の前髪をそっとかき分ける。


俺のことをこんなに心配してくれるのはスターナだけだ。

いや……本当は色んな人から好意を向けられていたのかもしれない。


かつての俺は人からの視線を避けていた。

自分を好きになる人なんていなかったから。


俺に向けられたのは嫌悪感……無関心……皮肉……だけだった。


この世界に来て、俺への好意はシステム上のものだとばかり思っていた。


でも、スターナは補正抜きでも俺のことを見てくれる。


今、わかった。


俺……スターナのことが好きだ。


「スターナ……愛している……」


まだ、夢の中の彼女に向けて告白する。


実際に対面したら、俺は想いを伝えられないだろう。


「ふっ……」

彼女の頬がかすかに緩んだ。


「私もだよ」


「えっ……スターナ、起きてたの?」


「うん……もう少し、ダイチの隣で寝ていたかったから……」


「スターナ……昨晩は渡しそびれたけど……これ……」


俺はリボンでラッピングしたプレゼントを手渡す。


俺のクラフトできる物で一番スターナに似合うと思ったから……


「えっ、ありがとう。開けてもいい?」


「ああ」


彼女は体を起こして、ベッドの上で丁寧にリボンを解く。


彼女の喜ぶ顔が容易に想像できて、俺の頬は緩みっぱなしだった。


スターナは中のプレゼントを取り出し、広げた。


「ダイチ……これ何?」


想像に反して彼女の顔が引きつっている。


「えっ……見てわかんない?」


薄ピンクにレースの布地。

朝日に透ける薄ピンクのレースの下着がスターナの手に広げられていた。


「ダイチ、一応言い訳を聞いてあげるわ。

なんで下着なの?」


「えっ……か、可愛いだろ?

俺のクラフトできる中では最高級の素材だったんだよ!

市場に出回れば800万円の価値はあるぜ?」


「ダイチの……バカっ!」


「いだっ!」


俺の頬に熱が走る。


スターナにビンタされたのだと遅れて気づいた。


女心は難しい。


くそっ、おっさんに騙された。

贈り物と誠実さだけじゃ、どうにもならないじゃないか。


せっかくいい雰囲気だったのに。


スターナの部屋から追い出された俺は、泣きながら自分の部屋に戻った。

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