表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第四章 魔王討伐編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/89

第77話 スターナ編:星を辿って

5人が消息を絶って、もう半年が経つ。


ダイチ……もう、待てないよ。


私はインベントリにできる限り食材を埋め込んだ。


「ママ……ごめんね……」

夜明け前に私は屋敷を出た。


「スターナ! 待つのだ!」


路地を進んでいると、背後からリリムちゃんの声が響く。


彼女は肩で息をしていた。


「リリムちゃん……止めても無駄だよ」


「違うのだ……リリムも行く!」


「でも、危ないよ……」


「リリムだって、ママとダイチが心配だもん!」


リリムちゃんも、私と一緒で置いていかれた身だ。

気持ちは誰よりもわかる。


「うん。そうだよね……ごめん。

リリムちゃんも一緒に行こう」


「うん!」


一人じゃないってことが少しだけ嬉しかった。


「スターナ……まずはどうするのだ?」


「私たちで闇雲に進んでも魔界にすら辿り着けないと思うの。だから、オルヴィエートさんたちにお願いしてみる」


「そっか、おっさんなら魔界の行き方も知ってるかもしれんの」


私とリリムちゃん二人で城門の前に立つ。

ダイチ抜きでここから先に行くのは初めてだった。


やっぱり、ダイチはすごいな……今まで一人で皆を先導してきたんだ。


同じ立場になって、初めて彼の気持ちがわかった。

こんなにプレッシャーが大きくて、心細いなんて……返ってきたら、少しは優しくしてあげようかな。


そんなことを考えていると、落ち着いた声が静まり返った街に響く。


「二人とも、本気なんだね……」


振り向くと、梓ちゃんとエマさんが立っていた。


「うん。止めても無駄だから!」

梓ちゃんを恨んではないけど、二度も邪魔はさせない。


「わかってるわよ。

これを渡しに来ただけだから……」


彼女はそう言って手を差し出した。


「これは?」

青い宝石が埋め込まれた綺麗な指輪。


「アーシャさんからよ」


「えっ、ママが?」


「スターナが今使っている指輪より、性能が高いから役立つだろうってさ。スターナが旅立つときは渡して欲しいって頼まれてたの」


「むふふ、さすがアーシャさん。

スターナのことは全部お見通しみたいだね」


私の隣で、リリムちゃんが頭の後ろで手を組み、体を揺らす。


「ママには敵わないな……」

私は梓ちゃんから指輪を受け取り、ガラス玉の指輪を外して付け替えた。


「皆さんはガルデルド帝国へ行くのですよね?」


エマさんが前に出る。


「はい、聞こえてたみたいですね」


「ふふ、それなら私がオルヴィエートさんへ橋渡しをしましょうか?」


「えっ、いいんですか?」


「ええ、元より私も一度カーリア組に戻って自身の無事を伝えたいと思っていましたので」


「ぜひ、よろしくお願いします!」


「お安い御用ですよ」


エマさんがついてきてくれるなら心強い。


「梓ちゃん。ママをよろしくね」


「ええ。この世界では、アーシャさんが私のお母さんみたいなもんだから……スターナが帰ってこなかったら私が代わりに娘になってあげるわ。だから、安心してよ」


梓さんは冗談っぽく笑ってみせた。


「ダメだよ、ママは渡さないんだから!」


「それなら、みんな無事で帰ってきて。

……本当なら私もついていきたいんだけど……レベル的に足手まといだから……」


「梓ちゃん!」

エマさんが梓ちゃんに抱きつく。


「ちょ、どうしたのよ、エマさん」


「私、必ず戻ってきますから!」

エマさんは梓ちゃんの胸に顔を埋め、頬ずりをする。


「なんなんだ、あの二人……」

リリムちゃんが首を傾げている。


「リリムちゃん、私も同意見……邪魔しちゃ悪いし、行こっか」


私とリリムちゃんは軽く挨拶をして、城門から伸びる橋へと歩き出す。


「ちょっと、置いていかないでくださいよー!」

エマさんが慌てて追いかけてくる。


その後ろでは、梓ちゃんが力なく手を振っていた。



ゴンドラ要塞を越え、西にひたすら歩き続けた。


次第に雪に足が取られるようになる。

容赦ない冷気も相まって体力を一層奪われていく。


今まではダイチのクラフトで野宿というか、野営も簡単だったが、私たちだけではそうもいかない。


雪国という厳しい環境の中、

私の星魔法で冷気を遮断して、リリムちゃんの炎魔法で暖を取った。


ダイチがいたことでどれだけ、快適に旅ができていたのか、今ならわかる……ダイチ……会いたいよ。



一週間ほどかけて、ようやくバルデルド帝国に到着した。


また、この地に足を踏み入れるなんてね。


「きゃっほー! ついた、ついた!」

リリムちゃんは雪洞の街で、両手を上げてはしゃいでいる。


「スターナさん、大丈夫ですか?

少し、休んでからオルヴィエートさんのところへいきましょうか」


「ううん、大丈夫。

……こんなとこで立ち止まってらんない」


「あれ……スターナちゃん……えっ?」

ふと聞き覚えのある声が響く。


「あっ、おっさんみっけ!」

リリムちゃんが、目を見開いているオルヴィエートさんへ突撃する。


「うおっと! リリムちゃんまでいるのか……それに、エマさんも……」


オルヴィエートさんは華麗にリリムちゃんを回避して、リリムちゃんはそのまま雪溜まりに激突する。


「オルヴィエートさん。お久しぶりでございます。その節はお世話になりました」


エマさんから謎の威圧感が出ている。


「あー、すまん。ダイチをけしかけた件だな。

あれは、俺っちが悪かった」

オルヴィエートさんはあっさりと平謝りする。


「私は心が広いですから特別に貸しということにしてあげますね」


「あ、ああ……俺っちにできることなら何なりと……」


「だ、ダイチと皆を助けて!」

私はオルヴィエートさんに詰め寄り、和装を掴む。


「うぉ、待て待て、こっちは何がなんだか……まずは事情を話してくれよ」


自分一人じゃダイチを救えない……悔しい……彼の衣服を握りしめる手に力が籠もる。


「お願い……お願い……」

泣いちゃダメだ。堪らえようとしたが、視界が徐々に滲んでくる。


その時、彼の手が私の頭を撫でる。


オルヴィエートさんはしばらく黙って私を見つめていた。


「スターナちゃん……君たちが来たことで、俺っちのストーリーも書き換わったみたいだ。

仕方ない……今回は俺っちに任せてほしい」


こうして、オルヴィエートさんと一時的に同盟を組むこととなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ