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開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第四章 魔王討伐編

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第70話 めしうま

二階の窓枠から街路を見下ろすと、黒い影が朝から晩まで揺れていた。


……“番人”が、俺を出待ちしている。

これが、美少女ならどんなに嬉しいか。


……幸か不幸か他の仲間には番人が見えておらず、触れることすらできない。


なぜか家の中には入ってこられないみたいだが、

このままだと家から出ることすらできない。


皮肉なもんだ。

前世では意地でも家から出たくない引きこもりだったのに……出たくても出れなくなるとは。


家から家へとファストトラベルはできるが、どうしたものか。


ひとまず、王都で一番の戦力に相談するか。

俺は魔剣ヨグ=ソトースでレメリアとリリムの自宅へ飛んだ。


「うおっ!? なんだ……ダイチか……」

家の中に突然現れた俺を見て、レメリアが一瞬、目を見開く。


「お邪魔してます」


「うおー! ダイチー!」


リリムがいつものように飛び込んできた。


――窓の外に視線を向ける。

……やっぱり、《《いる》》な……“番人”が窓の外から家の中を覗き込んでいた。


フードで顔は隠れ、人の顔をしているのかすら分からない。


「なんだ、こいつは……」


「レメリア……見えるのか?」


「ああ……」


「二人とも何を言ってんのさ?」


リリムには見えていない。

どういうことだ?


「たぶん、こいつは……魔族だ……」


「レメリアは何で見えるんだ?」


「私は、魔王軍幹部になり、魔人の力を得ている……そのため魔族の血が混じっている」


「それが、関係していると……」


番人の素性がわかったところでどうしようもない。

レメリアでもレベル差がありすぎて倒せないだろう。


というか、そもそもこの“番人”は倒せるように設計されていない。

よくあるチートを扱う者にゲームをプレイさせないための仕様だろう。


ともかく、小難しいことを考えても仕方がない。


「リリム!」


「うむ!」


「遊ぶぞ!」


「イヤッホー!」


俺とリリムは久しぶりにじゃれ合っていた。


「……ったく、こんな状況だったのに呑気だな」

レメリアがため息とともに頭を抱える。


「レメリア、腹減った。

早くまずい飯を作ってくれよ」


「はぁ? 誰の飯がまずいって?」

レメリアの額に血管が浮かぶ。


「確かに、ママの飯――まずい」


「ほらみろ、愛娘が涙の告発をしているぞ」


「おい、リリム、そんなに言うなら、ご飯作ってやらないぞ」


「ママ、冗談だって! 許して!」

リリムがレメリアに飛びつく。


「はぁ……ったく……」

レメリアはため息をついていたが、

その表情は満更でもなさそうだった。


……やっぱり、親子っていいな。



レメリアの焦げた炒飯が机に並べられる。


レメリアの料理は、とにかく火力が強い。

刺し身、サラダ、ユッケなど

なまもの全般に火を通す。汁物は汁が蒸発し具材の炒め物になるほどだ。


調理はすべて強火で、しっかり目に焼き色というか、炭火焼きにするというか……そういうタイプのメシマズだ。


「いただきまーす!

ぐっ……苦い……」


焦げすぎて、炭を食っているみたいだ。


「にゃははは、ダイチ、おもろっ!」

俺の苦悶の表情を見てリリムが爆笑している。


「お前ら、人が作った炒飯で遊ぶな!

ったく……こんなに美味しいのに……」

レメリアが真っ黒な炒飯を頬張る中、

視界の端に違和感を感じる。


ふと、窓を見ると、浅黒い肌に灰色の髪の少女が、よだれを垂らしながら、窓ガラスに張り付いていた。


視線は明らかに炒飯に釘付けになっていた。

こいつ……番人だよな……集中するあまり、フードが脱げているのに気づいていない。


フードの中身は厳ついおっさんを想像していたから、拍子抜けというかなんというか。


「レメリア……あれ、どう思う?」


「ええっと……お腹空いてんじゃない?」


「まあ、そう見えるよな」


俺は残りの炒飯を持って窓を空けた。


「おい、大丈夫なのか?」


「ああ、こいつ、なぜか家の中まで手出しはできないみたいだから」


俺は炒飯の乗った皿を番人に見せつける。


「食べたいか?」


謎の少女は、無言で何度も頷く。


「ほらよ」

炒飯をスプーンですくい、彼女の口元に差し出した。


番人はあーんと口を開ける。

ギザギザの刃が視界いっぱいに広がる。


「あーん」

俺は彼女にあげると見せかけ、自分の口に炒飯を運んだ。


「むっきぃぃぃぃ!」

“番人”が外で地団駄を踏んでいる。


「ふっ、番人とやらも大したことないな」

こいつには2回殺された恨みがある。


「ダイチ、誰と遊んでいるのだ?」


「リリム、外にお化けがいるんだよ」


「ひっ! お化け……」


「大丈夫だ。その魔除けの炒飯を窓に差し出してみ?」


「おい! 誰の炒飯が魔除けだって?」


レメリアのツッコみをスルーして、リリムは恐る恐る炒飯の皿を窓の外に、差し出す。


――一瞬だった。

“番人”が勢いよくリリムの皿を奪い取る。


「ひぃっ! ホントだ! お化けがいる!」


見えないリリムからしたら、完全に恐怖体験だよな。


番人はお皿を両手で持ち、口を直接皿に近付け、焦げた炒飯を貪る。


「ふげっ!」


番人は白目を剥いて、その場に崩れ落ちた。

よほど、まずかったのだろう。


【番人を撃破しました】


「よしっ、さすが退魔の炒飯!」


「ダイチ……さすがの私も……泣くぞ?」


なんとか番人を撃退したが、レメリアの心傷は深いだろう。

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