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開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第四章 魔王討伐編

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第69話 代償

「ぬし様……いつまで妾を抱きしめてるのだ」


「一生離さない」


「それに、泣きながらはやめてくれ、ドレスに鼻水が付くではないか」


ベッドの上で、ミスティの温もりを肌で感じる。


喪っていたことすら忘れていた。

それが、こんなにも恐ろしいことだとは……。


難易度変更のログなんて正直どうでもよかった。

今は、ミスティがここにいることが全てだった。


「まったく、仕方のないやつだの」

ミスティはため息をつきながら、俺の頭を撫でてくれた。


「ミスティ……もう、どこにも行かないでくれ」


「ぬし様、それ以上はやめてくれ。妾のことを好きでもないのに……」


「何を言う、ミスティのこと、大好きだぞ」


「なら、結婚できるのか?」


「う……結婚……?」

話が飛躍しすぎていないか?


「ぬし様は、やはり勇者と同じだ。妾は裏切りは許さぬ。だから、その気もないのに惑わすようなことはよすのだ。ぬし様にはスターナもリリムも、あのシルヴィアとかいう者もおるではないか」


「別に誰とも付き合ってないしなあ。

それに、この世界って一夫多妻制なんだよな?

全員、俺の嫁じゃだめなのか?」


「それは、ここ数百年の話だ。妾が生きていた千年前はそのような婚姻制度はなかったぞ」


「時代に合わせないと、お婆ちゃん」


「やっぱり、ぬし様は嫌いだ!

勇者と一緒でデリカシーもないし!」


「でも、その勇者をミスティは一度は好きになったんだろ?」


「むっ、むきぃぃぃぃ!」


ミスティがとうとう暴れ出した。


「ふっ、レベルは圧倒的に差があるが、物理ステータスでいえば、俺とミスティはさして変わらない。無駄な抵抗はやめることだ」


「はなせー! はなせー!」


ミスティのつんざくような悲鳴が屋敷中に響き渡る。


「ダイチ様! 何事ですか!」

部屋の外で、シルが扉を激しく叩いている。


まずい!


クラフト:鉄の扉(鍵付き)


冷たく閉ざされた鉄の扉でシルの侵入を防ぐ。


「ちょっと、ダイチ様!

これは……どういうことですか!」


「シル! 今はミスティとのイチャイチャタイムだ。邪魔しないでくれ!」


「こらっ! ぬし様、適当なことを言うでない!」


「そんなの、このシルヴィアが許しません!」


なんか、扉の外からけたたましい金属音が響いている。

……シルヴィアのやつロングソードで壊そうとしてないか?


まあいい。

それを無視して、ミスティを落としにかかる。


「ミスティ……俺のこと嫌いか?」


「むぅ、そういうわけではないが……」


ガキン!


とうとう鉄の扉が不協和音を奏でながら崩れ落ちた。


「ふしゃー! ふしゃー!」

そこには獰猛な獣のような息を漏らす、シルヴィアが仁王立ちしていた。


まずい!


俺は、慌てて窓を開き外に飛び降りた。


「あっ、ダイチ様! 待ちなさい!」


シルヴィアの声が背後に響く。


とりあえず、梓のところにでも逃げるか。

久々に彼女に会いに行こうと思ったら、視界の端に黒い影がよぎる。


「えっ?」


黒いローブで全身を覆い隠した何かがそこに立っていた。


手には錆びた剣が握られ、顔を覆い隠したフードの奥には、暗い虚無が広がっていた。


なんだこいつ……敵か?


そいつはゆっくりと俺に歩み寄ってくる。


ステータスを確認する。


プレイヤー名:番人

レベル999999

HP ?????????   МP?????????

物理 ????????? 魔法?????????

防御 ?????????  速度?????????


たぶんやばい!

本能がそう告げていた。


スッ――

黒い影が俺の顔を覗き込む。


「ぐっ……」

それは一瞬だった。

気づけば、胸に錆びた剣を突き立てられていた。



「はぁはぁはぁ……」


ベッドでリスポーンするとミスティとシルが心配そうに俺を覗き込んでいた。


「ぬし様……今、何に殺されたのだ?」


「二階から見ていましたけど、ダイチ様が突然倒れてそのまま死亡していました……二階からの落下ダメージですか?」


どんだけ軟弱なんだよとツッコみたくなったが、今はそれどころではない……もしかして、あれがmod対策の敵なのか?


二階から下を覗くと、あいつは玄関の前で立ちつくしていた。


俺に気づくと、黒い影は二階の窓を見上げた。


真っ暗で何も見えない顔……それなのに、じっとりとまとわりつくような視線を感じる。


あいつの標的は明らかに俺だ。


「くっ……」


家には入ってこないようだけど、このままじゃストーリーどころじゃない。


“魔剣ヨグ=ソトース”


俺は時空の狭間に入り、王都周辺の森の中にファストトラベルする。


「なんで……ここにもいるんだよ」


黒い影はそこにいた。

まるで俺の移動に合わせて待ち構えるように……。


「ぶっ飛べぇ!」


“次元斬”


次元の狭間で番人を飛ばそうと試みる。


「なんなんだよ、お前は!」


番人は周囲の空間を掴むようにして、狭間に吸い込まれる力に抗う。


バキッ!


「嘘だろ……」


空間を掴み、この場に留まった。

そして、片手で次元の裂け目を掴み、引き寄せるようにして閉じた。


「うぁぁぁぁぁ!」


剣で斬りかかるが、魔剣ヨグ=ソトースが弾かれ、空に舞う。


「ぐっ……」


再び心臓に錆びた剣が食い込む――。



「ダイチ様!」

シルがベッドの上で俺を抱きしめている。


「シル……筋肉痛なんだ。あんまり抱きしめると痛い……」


「あ、申し訳ございません」


「どうすればいいんだ」


ここに来て、俺は再び家から出られなくなってしまった。

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