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開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第四章 魔王討伐編

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第68話 心の隙間

「おはよう……」

当然のようにシルがシャツに下着姿という、なんとも男受けの良さそうな格好で寝ていた。


「あ、藩主様……おはようございます」

シルは頬を赤らめ、恥ずかしそうに目を逸らす。


なんて、可憐で可愛いんだ。


「ダイチー! 朝ごはんできたわよー!

それと、シルヴィアさんが部屋にいなかったんだけど知らない?」


やばい! スターナの声が部屋の外で響く。


「私ならここに……もがっ!」

素直に返事をしようとするシルの口を、慌てて塞ぐ。


「シルヴィア……静かに!」


「だ、ダイチ様……息が……」


「おい、バレるだろ!」

シルの口をさらに強く塞ぐ。


「ダイチ、何してんの? 入るわよ?」


やばい!


「スターナ、待ってくれ!」


「な、なんでよ……あんた、なんかいかがわしいことしてない?」


「そ、そんなわけないだろう……今、取り込み中でさ……」


俺はシルの口を塞いだまま布団を被せる。


「入るわよ!」


スターナが扉を開ける。


「……すぐ降りるから待ってくれ……」


「ダイチ……布団の中、やけに膨らんでない?」


「いや、これは男の生理現象ってやつで」


「えっ……! ちょ、あんたって、本当最低ね」


スターナは頬を赤らめ、部屋から出ていった。


「ふぅ、シル、もう大丈夫だ……って、えっ?」


シルが白目をむいて痙攣している。


「おい、シル!」


「ダイチ様……こんなにすごいの、私、初めて……」


「なにを言っているんだこの人は……」


ともかく、スターナが戻ってきたらまずい。

俺は、机の上に畳まれていた黒のインナースカートを掴み、意識が朦朧としているシルに履かせようとする。


「藩主様! おはよー……」

メルフィーが思いっきり扉を開け放つ。


ベッド上では息の荒いシル。俺はシルの足にインナースカートを通している最中――。


「……失礼しました」

メルフィーは気まずそうに、そっと部屋の扉を閉めた。


「メルフィー、違うんだ!」


俺は慌てて彼女を追いかけ廊下で捕まえる。


「大丈夫ですって、スターナさんには黙っておきますよ。藩主様ってばお盛んですなあ」


「何も大丈夫じゃない。俺は何もしていないって」


「わかってますって、シルヴィアのスカートに手をかけていただけですもんね」


メルフィーの理解ある女ムーブが逆に鬱陶しく感じる。


「やっぱり、シルヴィアさんがどこにもいない……」

スターナが再び戻ってきた。


「あっ、スターナさん。別にダイチ様の部屋に下着姿のシルヴィアなんていないから。少し出掛けているんじゃない?」

メルフィーが余計なフォローを入れる。


「はっ? 下着姿?」


俺が止めるよりも早く、スターナが部屋に入ってしまった。


「ダイチ……しばらくご飯抜きだから……」

下着姿で乱れた衣服のシルを見たスターナが、冷たく言い放ち、一階に降りていった。


思ったより怒られなかったけど……スターナ、傷ついたよな。



メンバーが変わっても賑やかなのは変わらない。

それでも、なぜか心の中にぽっかりと隙間が空いたような感覚に陥る。


大切な何かを忘れているような。


なんとなく、使われていない空き部屋に足を運ぶ。


記憶はないのに、体が覚えているような不思議な感覚。


部屋の中は殺風景だが、生活感がかすかに残っていた。


分厚い魔導書に傷んだ木の机。

その上にぽつんと一枚の便箋が置かれていた。


おもむろに手紙を取る。


「ぬし様へ……?」


ぬし様って誰だ?


手紙の中身は他愛のない内容だった。


差出人の楽しかったことや好きな食べ物、

俺への感謝が綴られていた。


手紙の最後に差出人の名前が書かれていた……ミスティ?


どこか耳障りの良い名前……ダメだ……思い出せない。


俺はこの名前をどこかで見た気がする。

……どこだ、思い出せ!


《《彼女》》の名前を探すようにインベントリのアイテムを一言一句逃さずに確認する。


「あった……これだ!」


息を飲み、ゆっくりとアイコンを操作する。


アイテム→mod使用→ミスティ実装。


ザザザ――突如、ノイズが走り、目の前に光の粒子が集まる。


粒子は女性の姿を象る。


エメラルドのように輝く長い髪、純白を基調としたロングドレスがはためき、石鹸の香りを纏い目の前に見慣れた女性が現れた。


「ぬし様、こうも再会が早いと感動的な別れが台無しだの」


俺は彼女を知っている。尊大で物怖じしない態度。


思い出した。俺は、よく知る彼女を優しく抱きしめた。


あの時、触れられなかった彼女を――


【modの使用を検知しました。不正アクセスによる対処のためこれより難易度をインポッシブルに変更致します】


再開の余韻に浸る間もなく、不穏なログが流れる。

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