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開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第四章 魔王討伐編

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第67話 違和感

俺、スターナ、ミスティ、シルにメルフィー。

5人での新たな生活がスタートした。


家から出られなかったあの頃が懐かしい。

当時とは変わってしまったけど、変わらないものもある。


残った者、去った者、新たに訪れた者。

形は違えど、離れていても仲間だ。


気恥ずかしくて口には出さないけど……。


まずは、《《4人》》で部屋の割り当てを決めることにした。


「空いている部屋なら、どこでもいいぞ」


「私は角部屋が落ち着くからそこでいい」

メルフィーが一階の隅の部屋を指差す。


「ええっと、シルヴィアさんは、どこにします?」

まだ、シルに慣れていないのか、スターナがよそよそしく尋ねる。


「お気遣いありがとうございます。ただ、私はダイチ様と同じお部屋で暮らしますので、ご心配には及びません」

シルはさも当然のように告げる。


「えっ!」


「ちょっと、そんなのダメよ!」

スターナがツインテールを揺らしながら食い気味に否定する。


「なぜです?」


「うっ……」

スターナがシルの圧に押される。


「俺としてもシルと同じ部屋で嬉しいから別に異論はない」


「いや、とにかくダメだったら!」


騒いでいると、突然玄関の扉が開け放たれ、懐かしい顔が飛び込んできた。


「ダイチー! おかえりー!」


「リリム!」


久しぶりの再会に彼女を抱き上げる。


「リリム! お前はなんて可愛いんだ!」

久々のリリムに思わず頬ずりをする。


「んぎゃー! やめれー!」

リリムは俺の頬を手で押さえ、必死に抵抗する。


「今回は、いろいろと大変だったな」

その背後でレメリアが微笑む。


「本当に大変だったよ。

レメリアも変わりなさそうだな。今はリリムと自宅で暮らしているのか?」


俺はリリムの頭を撫でながら、レメリアに尋ねる。


「ああ、あの人と……家族三人でな……」


亡くなったリリムの父親……二人がいないのは寂しいが、これでよかったのかもしれない。


俺は家族と向き合ってこなかったし、

今更会いたいとも思わない。


でも、一緒にいられるなら、それに越したことはないんだろう。



コンコン……。

夕暮れ時、屋敷の扉がノックされる。


「はいはーい!」

スターナが小走りで玄関先に向かう。


「ママ!」


「スタちゃんっ! 無事でよかった」


アーシャさんがスターナを抱きしめる。


「アーシャさん……お久しぶりです」


俺は何となく他人行儀になってしまう。


「ダイチさんも……おいで……」


アーシャさんが手を広げる。


少しだけ気恥ずかしかったが、スターナと一緒にアーシャさんの抱擁に包まれる。


その後は、久々にアーシャさんの手料理をみんなでいただく。


シルとメルフィーもすぐに輪に溶け込み和気あいあいと過ごした。


――ミスティを除いて……。



「ミスティ……」

彼女の部屋を尋ねるが返事がない。


よくよく考えれば少し前から、違和感はあった。

口数が少なくなり、俺が声を掛けても反応が返ってこないことが増えた。


一番気になるのは、皆が――いや、俺も含めミスティのことをあまり気にかけなくなった。


まるで、《《初めからそこにいなかったみたいに》》……。


「入るぞ……」

部屋に入ると、窓が開け放たれていた。


夜風が流れ込み、カーテンがゆらゆらと揺れていた。

星空を見上げるミスティの体がかすかに透けて見えた。


「ぬし様……」


「ミスティ……お前……その体……」

彼女の体から少しずつ黄緑色の光の粒子が蛍のように舞い、漏れ出ていた。


「たぶん……妾はもう長くない……」


「それ、どうしたんだよ!」


ミスティを抱きしめようと手を伸ばしたが、彼女の体にノイズが走り、すり抜けた。


「わからない。ぬし様が物語を進めるにつれて、体に違和感が……たぶん、世界が妾を異物とみなしとる」


……ミスティは本来、この時代に存在しない登場人物。いわば、バグのような存在だ。


「ごめん、俺が無理やり連れてきたから……なのに、お前に構ってやれなくて……」


ミスティは首を横に振る。


「ぬし様は悪くない……もともと妾の物語は終わりを迎えていた。最愛の勇者に裏切られ、憎み、返り討ちにあった哀れな女……妾の物語は定められたバッドエンドだった」


「ミスティ……俺はミスティのこと……」


「ぬし様、気休めはやめてくれ……ぬし様たちとの生活は、おまけのサイドストーリーのようなもの。それでも……妾にとってはハッピーエンドだった」


「俺は……何もできないのか?」


「ぬし様……それなら、妾が消えるまで隣にいてほしい……」


目元を拭い、ミスティの隣に座る。


ミスティが俺の肩に頭を預ける……温もりも重さも感じない。


「ぬし様……」


「……」

涙が溢れ、言葉が思うように出てこない。


「ぬし様、こっちを向いてくれ」


ミスティの方を向くと、彼女の唇がそっと重なろうとして――触れなかった。


交わせない口づけを終えると、彼女の口元はかすかに動いていた。


それが俺に何を伝えていたかは、分からなかった。


ミスティの体が粒子となり、星空に溶けていく。


消えていく最後の瞬間まで……彼女は微笑んでいた。

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