第66話 帰国
ナージャ王女を助け出したことにより、大手を切って国に帰ることができた。
もちろん暗殺容疑は白紙となった。
“王女の救世主ダイチ”
人々は口々にそう呼ぶ。
もう誰も、俺をトイレの神様とは呼ばなくなった。
【チャプター8-1 夜伽】
ナージャ王女の寝台にて、純白のネグリジェ姿の彼女が俺の上にまたがる。
ミシッ……彼女の体重でベッドが悲鳴を上げる。
ナージャ王女のお腹が……俺を抑えつける。
うっ……だ、だめだ……これ以上は我慢できない。
このままでは……。
「きゃあ!?
……ダイチ様……そんな強引な……」
俺はナージャ王女をベッドの下へ押し出した。
「重すぎんだよ! 俺を圧迫死させる気か!」
「ダイチ様……あんまりですわ……ハーマンの出す食事があまりにも美味しくて……」
このままでは俺のHPが保たない。
まずは痩せてもらおう。
クラフト:ランニングマシーン
俺はナージャ王女の両腕を手錠でランニングマシーンに括り付ける。
「だ、ダイチ様……これは、どういうプレイ何でしょう……」
彼女の蒼い瞳は怯えていた。
「五時間耐久コースな」
「ダイチ様!
そんなの、私が死んでしまいますわ!」
「大丈夫。野菜を多めにして、調味料も使わず、俺が管理してやるから。安心してくれ。
――一ヶ月もすれば可愛いナージャ王女に戻れるから」
「そんな……ありのままの私を愛してください!」
「これは二人の明るい未来のためなんだ……許せ……」
俺は唇を噛み締めた。
「ふぇーん。ダイチ様ぁ……」
ナージャ王女は泣きながら走り続けた。
❇
一ヶ月後――
彼女は元の引き締まった麗しい姿を取り戻していた。出るとこは出ている理想のプロポーションだ。
「ナージャ王女……よくぞ、頑張りました!」
俺は綺麗になった彼女を抱きしめる。
「ダイチ様……もう、二度と私に顔を見せないでください……」
ナージャ王女は、泣いていた。
「そんな、ナージャ王女!
今のキミならいくらでも抱ける!」
「ダイチ様のためと、頑張ってきましたが……あなたの私への仕打ちが……忘れられません」
「それは、ナージャ王女を鼓舞しようとわざと厳しくしたのです。俺も辛かった」
『醜い王女……』
『体もわがままだ……』
『王女じゃなくて農場の方が似合っているよ』
ナージャ王女は呪文のように俺からの罵声を羅列し始めた。
「なにより、許せなかったのは……私の前で美味しそうにステーキを頬張るあなたの笑顔……」
【ナージャ王女の好感度が基準値を下回ったため、チャプター8-1 ミッション達成目標が変更されました】
ゲームログとともに視界に亀裂が入る。
あれ……気づくと俺は鎖で繋がれていた。
【ナージャ王女の噛みつきに一ヶ月耐えろ。
噛みつきによるダメージは無効化されました】
不穏なログがよぎる。
目の前には不敵に笑うナージャ王女。
彼女の八重歯が月明かりに反射して輝く。
「ダイチ様……どこを噛みちぎられたいですか?」
「ナージャ王女……話せば分かる……」
「ダイチ様は……私の言葉を聞いてはくれなかったではありませんか……」
「でも、私は優しいから……」
ガブッ!
ナージャ王女が俺の鼻に噛みつく。
「んぎゃあああ!」
「ダイチ様の悲鳴――しっかり聞いてあげますね」
こんなに痛いのに、無傷だ。
「こんなの……生殺しだ……いっそのこと殺してくれ……」
「私がダイチ様を殺す?
愛する人に、そんなことをするわけないじゃありませんか。
ふふっ、壊れないお人形さんみたい。
これなら、本気で噛んでも良さそうね」
彼女は舌舐めずりをする。
「ふぇーん!」
【チャプター8-1 クリア】




