幕間 もう一人主人公
「春香……すまない。
初盆――間に合いそうにない」
届かない彼女への言葉は世界を隔てるほど遠くになってしまった。
この世界に飛ばされたのは、私に対する罰なのかもしれない。
家庭を顧みることなく仕事に打ち込み続けていた私への……。
「オルヴィエートさん……大丈夫ですか?」
「ロザリアちゃん……」
彼女の目は充血していた。
私のついた《《嘘》》のせいだが。
彼女の艶やかな黒髪は、少しだけ妻に似ていた。
ロザリアは良い子だ。
自分だって悲しいはずなのに、私の心配をしている。
“シノメと青年がカーリア組に殺された”
万が一に備えて、転送時にダイチの仲間を街中に誘導していてよかった。
ダイチを取り逃がしたが、仲間がここにいる限り、あいつは戻ってくるだろう。
「シノメとダイチ殿の仇は必ず俺っちがとる」
馬鹿みたいな一人称だが、序盤の変なストーリーのせいで一人称を固定された。従わなければ、何故かバグが増える。
「オルヴィエートさん……あなた一人には背負わせません」
彼女の手が私の手に重なる。
――!?
思わず手を引っ込める。
「す、すみません。馴れ馴れしかったですよね……」
だめだ……情に流されては……
この世界は残酷だ。ここに居場所を作ったら、妻の記憶が薄れてしまうかもしれない。
――それが何より怖かった。
だから、シノメとも距離を置いた。
くっ、頼むから止まってくれ。
震える手を抑えるように、握り締める。
……まだ、シノメを刺した感触が手に残っている。
すでに私は人間を一人殺めている。
もう、後戻りはできない。




