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開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第三章 陰謀と選択

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第61話 クロスプレイ

翌朝、おっさんが神妙な面持ちで口を開く。


「かなりまずい状況になった。

スーリア組の連中が、躍起になってエマ藩主の行方を追っている。既に誘拐または、暗殺を視野に入れ捜索しているみたいだ」


「……異邦人の目撃証言も出回っているみたいです」

シノメちゃんが補足する。


「異邦人って俺らのことだよな?」


「間違いなくそうだの」

なぜかミスティはしたり顔で頷く。


「シノメさんの情報通りなら、早く都を出たほうがいいね。ダイチくん、魔剣で街の外まで飛べるかな」


「ああ、問題ないぜ、ライドウ。

一晩寝たから、MPも全快だ」


レベル1のMPじゃ次元斬は日に2回が限界だ。それを差し引いても便利すぎる魔剣だが。


「ナージャ王女の行方を追うならルミア組を探るといい」


「あれ、もう一つ派閥がなかったっけ?」


「武闘派集団のラマハ組だな。

彼らはそもそも陰謀なんて企てない。というか、まつりごとに心底興味がない集団だ」


「確か、武の追求だったか……」


「てか、ルミア組の新藩主は謎の男なんでしょ?

どうやって探るのよ」


「スターナちゃんの言う通り、俺っちですら、新藩主の姿を拝んだことはない。

……シノメから、ルミア組の拠点集落の地図を預かるといい」


「あれ、おっさんはついてこないのか?」


「これ以上は足がつきそうだからな。

シュラ組の傘下共を危険には晒せねえ。

みんな、少しの間だったが、楽しかった――

ここまでしか力になれねぇが、後は達者でやんな」


結局、おっさんの目的はわからなかったな。


「オルヴィエートさん、ありがとうございました!」


ロザリアちゃんがおっさんと握手を交わす。


「ああ、ロザリアちゃん。落ち着いたら遊びに来てもいいぜ」


「はい! 必ず!」


ロザリアちゃん……えらくおっさんに懐いたな。


「ダイチ殿……お元気で……」

シノメちゃんが頭を深く下げる。


「ああ、またデートに行こうな」

シノメちゃんの頭を軽く撫でてやる。


「ぬし様、デートってなんのことだ?

また、別の女に唾をつけたのか?」


「ミスティ、人聞きの悪いことを言うなよ。

俺の魅力にみんな惹かれているだけさ」


「ほら、ダラダラしていたら、おっさんたちに迷惑がかかるわよ!」


スターナに背中を押されながら、後ろ髪を引かれる思いで魔剣ヨグ=ソトースを振る。


「では、《また》――」


おっさんの言葉に見送られ俺たちは、次元の狭間に飛び込んだ。



【パーティーが解散しました】


あれ……ここは?

座標は確かに都の外を指定したのに……周囲は、青い石を滑らかに削って創り上げた宮殿だ。


みんないない……俺一人だけ。

どういうことだ?


黒い修道着を着た男たちが俺を取り囲む。

フードをすっぽり被り明らかな敵意を持って、手には剣が握られていた。


格好からして、カーリア組の連中だろう。


「やる気満々のところ悪いが……退かせてもらうぜ!」


魔剣ヨグ=ソトース!


俺は再び次元の狭間を潜る。

今度こそ……外へ!



【チャプター7c-2 もu4とりjeじは】


文字化け……久々にバグっているな。

転移先の座標がズレたのもバグのせいか?


凍てつく寒さが皮膚を刺す。

真っ白な銀世界――目の前に彼女が立っていた。


「シノメちゃん……」


彼女の手には苦無が握られている。

その指先はかすかに震えていた。


「シノメ……手を出すなよ」


「……御意」  

シノメちゃんがこの言葉で従う人は一人しかいない。


「どうやって次元斬ファストトラベルの座標をずらした?」


視線の先におっさんが立っていた。

右手には小太刀――彼の黒い瞳は雪を遮るように俺を見ている。


「青年の転移の座標を誘導するまじないだ」


「俺を殺す気なら、別に今このタイミングじゃなくてよかったんじゃ?」


「そうだな、ただ殺すだけならいくらでもチャンスはあった。でも、リスポーンしてしまう」


「……?」


おっさんの言っている意味がわからなかった。


「手間だが、物語に沿って青年を殺さなければ、ストーリーが進まないんでな」


「まさか――!?」


「ああ、俺っち……いや、私はガルデルド帝国サイドの主人公だ」


バグオラはリリース当初、スタート地点を四つの国から選べるという話だった。


結局、製作が追いつかず未実装のまま、

アルスタイン王国ルートしか存在しなかった。


俺は違和感を感じながらも見逃してた。

季節の無いこの世界で、おっさんが“冬”と言っていたこと……風呂という概念が無かったこの世界で、“久々”だと言っていたこと……。


「この場はおっさんとの決闘ってことか」


「青年……いつまでゲーム気分でいる?」


「どういうことだ? だってゲーム世界だろ」


「ストーリーに沿って死ねば、青年はリスポーンしない。バッドエンドを迎えて、物語から永久追放される」


……死ぬってことか。

おっさんの言うことは本当だろう。


俺の仲間も物語に殺された。


「主人公でも、死ねば終わりなのか?」


「ああ、錬金術国家……ラファートの主人公は……私が殺した」


この世界で幾度となく死を経験した。

負ければ終わり……理屈ではわかっていても、

現実味はなかった。


「俺の仲間は?」


「他の者は逃げおおせているさ――なに、青年が退場したら、彼女らは私が面倒を見よう」


「今さら、信用できるかよ。

……そんなに元の世界に帰りたいのか?」


「ああ……妻の墓参りがあるからな。

さぁ、おしゃべりはここまでだ……」


一瞬だった――気づいた時にはおっさんは俺の懐に潜り込んでいた。


「さらば――」


俺は、諦めて目を閉じた。


ふわっと、風がよぎった。

目を開けると、目の前で紫色の髪が揺れている。


「すみません……若様……」


シノメちゃんの腹部に小太刀が突き刺さっていた。


「シノメ……情に絆されたか」


おっさんは、突き刺さった小太刀を抜き、容赦なくシノメちゃんを蹴り飛ばした。


「ぐっ……」

シノメちゃんが倒れた。雪の上が赤く染まる。


「てめぇ!! 来い、魔剣ヨグ=ソトース!」


初めてだった。――いや、この世界で初めてだった。

こんなに誰かを憎いと思ったのは……。


慣れない手つきで、おっさんの頭上から魔剣を振り下ろす!


キンッ!

俺の太刀筋に合わせて、おっさんが軽く小太刀を振り上げると魔剣が空を舞った。


都合のいい覚醒イベントなんて無かった。

俺は物語に――いや、おっさんに敗北したんだ。


――今度こそ終わりだ。

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