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開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第三章 陰謀と選択

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第59話 健康器具

「世界は痛みに満ちています……このような愚行はおやめくださいませ」


カーリア組、藩主……エマ・キサラギ。

鎖で四肢を縛られているのに、その表情に一寸の揺らぎもない。


「エマさんですね。俺はダイチって言います。

できればレディーに手荒な真似はしたくない。

ナージャ王女の暗殺に関わったかどうかだけ教えていただけませんか?」


「ナージャ王女?

アルスタイン王国の王女ですよね。

……私たちは一切関与していません」


「そうか、ありがとう。

手荒な真似をして悪かったな」


彼女を縛る鎖を解こうとする。


「えっ、それだけですか?」

エマさんはきょとんとしている。


「はい、麗しい女性の言うことは、

信じるのがモットーですので」


「ちょっと、ダイチ!

バカじゃないの、その女が嘘をついているかもしれないでしょ」


スターナの言うことはもっともだ。

「でも、俺、拷問なんてしたくないぜ。

それに、情報の真偽なんて確かめようもないし」


ライドウが前に出る。

「僕からもいいかな。エマさん、ナージャ王女を暗殺しそうな人または組織の目星はついていないかな?」


「……それはわかりかねますが、

……たぶん、ナージャ王女は死んでませんよ」


「「えっ!?」」

全員が同じ反応をする。


「少しずつこの国の気温が高くなっているのが分かりませんか?

――この国がマナで溢れかえってきています。

たぶん、ガルデルド帝国のどこかで、彼女は軟禁されているとみていいです」


「どこにいるかまでは分からないかのう?」

ミスティの問いにエマさんは微笑む。


「首都でないのは確かです。ガルデルド帝国にとって彼女の存在はデメリットです。気温が上がると雪洞が溶けて帝国の天井が崩れてしまうからです」


「でも、それでもナージャ王女を欲しがる勢力はいるだろ?」


「そうですね。彼女の存在は良くも悪くも自然の節理を乱しますから。

さて……そろそろお暇しましょうか」


バキンッ! 

エマさんが突然立ち上がり、軽々と鎖を引きちぎる。


しまった。ステータスを確認するのを忘れていた。


エマ……レベル4532……ガルデルド帝国は、物理特化のステータスが基本。鎖なんかで縛りつけられるような相手ではなかった。


「やる気かの?」

ミスティが手をかざす。


「私も貴方がたの目的が知りたかったので、今回は策に乗ってあげました。一つだけ、許せないことがあります……」

エマさんからどす黒いオーラが放たれる。

わかっている。これは、明確な殺意だ。


彼女が武器を召喚した。

棒の先に鎖で繋がれた棘のついた鉄球。

――モーニングスターか。


「ダイチさんと言いましたね?

子どもが倒れていると嘘をついたことは許せません!」


「危ない!」

ロザリアちゃんがとっさに俺の襟首を掴み、後ろに引っ張る。


ヒュン!

鼻先を鉄球がかすめる。


鉄球は、足元の石畳を粉々に砕く!


やばい……当たってたら確実に死んでいた。


おっさんは自分たちが関わっているとバレたくないと言っていた。シノメちゃんも尋問に入ってからは姿を見せていない。援護は望めないか。


ミスティが詠唱を始める。


「ミスティさん! 範囲魔法はまずい、この狭さじゃ味方に当たる!」


ライドウがミスティの詠唱を止める。


「羽根のように軽く!」


“星魔法・ライトウェイト”


スターナが、ロザリアちゃんに素早さ上昇バフをかける。


次の瞬間、ロザリアちゃんが消えた。


鉄球とロザリアちゃんの拳がぶつかり合い火花が散る。


ものすごい速さだ。とてもじゃないが目で追えない。


星破壊スターブレイク


エマさんの振り上げた鉄球が光を纏い巨大化する。

ロザリアちゃんの頭上から、勢いよく振り下ろされた。


ロザリアちゃんは腕を交差し、なんとか受け止める――踏ん張った足が地面に食い込み、石畳を割る。


「みなさん! 逃げてください!」

ロザリアちゃんが叫ぶ。


派手な魔法は打てないし、彼女を見捨てるなんてもってのほかだ!


それなら――クラフト:足つぼマット


拷問部屋一面に足つぼマットを敷き詰める。


「いたーい!」

「これはなんですか!」


ロザリアちゃんとエマさん……というか、ここにいる全員がまともに立てず床に手をつく。


全員が生まれての子鹿のように、四つん這いで震えている。


「ちょっと、ぬし様! これはなんだ!」


今はミスティに説明している場合じゃない。

「スターナ! 俺を浮かせてくれ!」


「もう唱えているわよ!」


“星魔法・グラビティゼロ”


俺の体が宙に浮く。


ふわふわと浮かびながら、魔剣ヨグ=ソトースを召喚して構える。


剣の心得は皆無だが、脅しぐらいにはなるだろう。


「うおっ、この魔法……飛ぶのが難しい……」


やばい、止まれない!

……空中を揺蕩い、とっさにエマさんの法衣を掴む。


「きゃっ!」


するりと法衣が脱げる。


「「あっ――」」


その場の空気が凍りついた。

エマさんが何故か下着姿になっていた。


「貴方! よくも!」


やばい、完全にキレさせてしまった。


“次元斬”


「きゃぁぁぁぁぁ!」

次元の裂け目を開き、エマさんを時空の彼方に飛ばした――下着姿のままで。


「ふう。一件落着だな」


「どこがよ!」

スターナがツッコむ。


「ぬし様らしいの」

ミスティが呆れてため息をつく。


「ダイチくん……このクラフトを解除してくれ……足が痛くて立てない……」


ライドウが絞り出すように悲痛な声を漏らす。


足つぼマット……意外と強い。

エマさんには少し悪いことをしたな。

まあ、目の保養にはなったけど。


慌てて次元を開いたから、どこに飛ばしたか分からない。もう会わないことを祈るしかない。


アイテムを獲得しました。『エマの法衣』

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