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開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第三章 陰謀と選択

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第56話 星空の街

翌朝――こたつの中で目覚める。


「くちゅん」

隣でロザリアちゃんが、可愛らしくくしゃみをする。


こたつで寝ると風邪を引くってのは、

なんでなんだろうな。


ロザリアちゃんの上に、俺のポンチョを追加で掛けて、かまくらの外に出る。


スターナとライドウが二人で並んで朝焼けを眺めていた。


「あっ、ダイチ! おはよ!」

スターナはいつもと変わらない。

気にしすぎているのは俺だけか……。


「ダイチくん。ここから、長旅になる。

今のうちに休んでおくといい」


あれ……?

ライドウの目の下にくまがあった。


「ライドウ、もしかして……スターナに手を出したんじゃ……」

俺はこっそりライドウに耳打ちする。


「ダイチくん……何を言っているんだ……彼女の……その……」

ライドウは何故か口籠る。


「おい、なんだよ。

そこまで言ったら洗いざらい吐けよ」


どんな結末でも受け入れる気でいた。

だって……二人とも俺の親友だからな。


「スターナさんのいびきがうるさくて……」


ああ、なるほど……。

「口を塞いだら静かになるぞ」


「キミは相変わらずだね。彼女に責任はないから責めるわけにもいかなくて……」


「お前はお人好しすぎんだよ」

ライドウの頭をくしゃくしゃに撫でる。 


「や、やめてくれ……その……スターナさんには言わないでくれ。彼女を傷つけたくはない」


こいつはどこまでも聖人なんだな。

ロザリアちゃんといい、根っこの人の良さは似ているんだな。


「ダイチ! 今晩は、私が添い寝してあげる」


こいつに恋愛感情があるかはよくわからない。

それに、今はそれどころじゃないか。


「ああ、頼むよ」


「ふぁーよく寝た。

ったく、相変わらず朝が早いな」


おっさんが、肩にミスティを乗っけて外に出てきた。


ミスティはおっさんに掴まったまま、寝ていた。


「器用な奴だな」


「ははは、顔は大人びているのに、寝相は子供のままんまだな」


「まあ、1000年生きているとは思えないよな。

……おっさん、帝国まであとどれぐらいだ?」


「そうだなあ……ハルス村を抜けて、そりを滑ればひとっ飛びさ」


「そり?」



ハルス村を出てすぐに、《《それ》》はあった。

6人乗りのそりが、横一列にズラッと並んでいる。


そりの先には、雪でこしらえた窪みが一直線にレールとなって引かれていた。


果ては、空と雪が溶け合い、白い水平線が広がっていた。


「さあ、乗った乗った!」


おっさんに促されるまま、俺たちはそりの座席に座る。


「ぬし様……これ……大丈夫よな?」

隣に座るミスティが震えていた。


俺は、ミスティの手を握ってやる。


「さあ! 出発だ!」

おっさんは、合図とともに、そりについているレバーを引く――そのまま緩やかにそりが、傾斜を下っていく。


次第に加速していく。


「「うわぁぁぁぁぁ」」

「「きゃぁぁぁぁぁ」」

「いやっほー!」


悲鳴が飛び交いながら、そりは一直線に走っていく。


凍てつく風が寒さを通り越して、痛い。


そりが行き着くと……分厚い氷の壁が一面にそびえ立っていた。


目の前には、ランタンで照らされていた雪洞が伸びていた。


おっさんの顔を見る。


「ああ、この先がガルデルドの首都だ」


長い洞穴を抜けると、固く閉ざされた鉄の門が俺たちを拒んでいた。


小窓が開き、男の鋭い眼光がこちらを睨む。


「我、剣の錆なり……」


おっさんが妙な合言葉を言うと、鉄の門が重苦しい音を響かせながら、真横に開かれた。


「うわー! 幻想的ね!」

門の先には氷で覆われた巨大な空間が広がっていた。

光源代わりに、氷の天井や壁に青白く光る鉱石が、星々のような輝きを放っていた。


「ようこそ、首都ガルデルドへ。

ここは別名、星空の街と呼ばれている」


「素敵ですね!」

ロザリアちゃんも両手を握り、天井を見渡す。


帝国は巨大な雪洞に覆われていた。

凄いな……壁際付近はかまくらの家が大半だった。


その先には氷の家も建ち並んでいる。

これが、この国特有の建築様式なのか。


「柱が見えるだろ?

あそこに、皇族とそれを護る十騎士が住んでいる」


おっさんの指先――中央には洞穴を支える柱のように、巨大な氷柱が建てられていた。


「上流階級ほど、中心に近い場所で暮らしているんだね」


「さすが優等生――ご明察」

おっさんは少し茶化したように、ライドウに返答する。


「それで、おっさん!

妾たちを帝国に連れてきてどうする?」


ミスティの言う通りだ。ここからの目的も、ストーリー上の必要性も正直薄い。


俺たちが、アルスタイン王国での日常を取り戻せる日は来るのだろうか。


「ようはナージャ王女暗殺の真犯人を捕まえればいいんだろ?」


「おっさん、目星はついてんのかよ?」


「たぶん、カーリア組の連中だろ。

あいつらは平和と平等を謳っているからな」


「平和と平等?

ナージャ王女暗殺とどうつながるわけ?」


スターナが喧嘩腰におっさんに噛み付く。


「簡単な話さ。ナージャ王女を殺せば、平等に貧しくなるからな……」


「なるほど……ナージャ王女を誘拐して、マナを確保するのではなく、争いの火種自体を無くそうという考えか……」

ライドウは妙に納得している。


だからってナージャ王女を殺したのは許せない。


「さっそく乗り込むか?」


「おいおい、青年……さすがに急すぎやしないか?」


「そうですね。まずは情勢を確認しましょう」


「さすが、ロザリアちゃん!

君は聡くて可愛いねえ」


「えへへ」

ロザリアちゃんが気恥ずかしそうに、頬を掻く。


「可愛いは関係ないだろ」


「関係なくても、言う意味はあるさ。

な、ロザリアちゃん」


おっさんがロザリアちゃんにウィンクをする。


まったく、このおっさんは……。


「てか、寒いのだ……」

ミスティが肘を抱え、肩を震わす。


「そういえば、お前は寒いの苦手だったな」


「ともかく、ウチに来てくれ。

そこで、詳しく話そう」


おっさんに促されるまま、中心部の氷柱に近い、青い石でできた、屋敷に案内される。


「なんだ……ここ……」

正直、あまり趣味がいいとは言えないが、中心部の家はこの石でできていることから、おっさんの趣味ではないのは確かだ。


石戸を潜ると、中は驚くほど暖かかった。


「わっ! あったかーい!」

スターナが屋敷の中を見渡す。


「若様――ご無事で!」


目の前に小柄な影が飛び込み、膝をつく。

紫髪のポニーテールの少女が、おっさんに頭を下げていた。


「「若様!?」」


俺たちは一様に声を上げた。

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