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開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第三章 陰謀と選択

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第47話 メノウ魔法学園殺●事件

【メノウ魔法学園にてDクエストが発生しています】


Dランククエスト:魔法学園殺●事件。


……なんだ? クエスト?

通知で目覚めると、視界の左上に不穏なタイトルが表示されている。


クエスト内容:事件を起こした犯人を特定せよ。


……なんだこれ……なんもわからん。

パーティー参加上限が四名か。

スターナ、リリム、ミスティを加入してメノウ魔法学園を目指した。


メノウ魔法学園……学生設定がまったく活かされないまま、ここまで来た。正直、学生設定が必要なかったのではと思う。


それにメノウ魔法学園自体も終わっている。

階段は無限に存在するのに、実際に立ち入ることのできる部屋はわずかだ。


「ぬし様、今日のクエストはなんだ?」


「俺にもよくわかんねえんだけど、誰かが殺されたらしい」


「えっ、殺された!

学校で殺人が起きたってこと?」


スターナの声が跳ねる。


「スターナ……リリム怖い……」


リリムがスターナの腰に抱きつく。


「リリムちゃん。大丈夫だよ……私がついているから」


今思うと、この二人も仲良くなったものだ。

怯える二人をそっちのけで、感傷に浸っていた。


学園の門を潜るとさっそく景色が暗転した。


ここは……白い石レンガの大広間。

規則正しく並べられた、長方形の柏の長机……初めて見る場所だ。


俺の疑問はあっけなく、クエスト進行ログが明かしてくれた。


【メノウ魔法学園にて食堂が解放されました】


食堂に着くと、4人の人物が何やら言い争いをしており……銀髪の切れ目の男……カーリンがその場を諌めていた。


カーリンの後ろ姿を見て、一瞬アーシャさんの顔がよぎる。


「何ごとだ?」

彼は俺の呼びかけに振り向く。


「ダイチ殿……今朝方、事件が起きてな……」


「誰が殺されたんだ?」

クエスト名でなんとなく察していたが、

まさかのミステリー展開か?


「第1発見者の給仕の者……もう一度、話してくれ」


カーリンに促され、白のチュニックを着た若い給仕の青年が、青ざめた顔で話し出す。


「私は給仕のマルスといいます。今朝方、生徒の昼食の仕込みをしようと思った際……冷蔵庫の中にぐちゃぐちゃの……うっ、おえっ……」

彼はえづき出した。


「大丈夫か……」

リリムが背伸びをして、優しく彼の背中をさすってやる。


冷蔵庫の中にぐちゃぐちゃの遺体か……冷蔵庫といえば、転生当初を思い出すな。


「他の4人は、容疑者ですか?」

スターナが前に出て睨みを利かせる。


「ああ……昨晩の21時から今朝方まで、食堂を通った者は給仕を入れて、この4名のみだ」


「でしたら……その四人の中に犯人がいるということですね!」

スターナが次第にノリノリになっていく。


「スターナ……事件の匂いがする!」


「ミスティ、もう事件は起きてんだよ、お前まで変なノリに感化されるな」

俺はミスティの頭を軽く叩く。


「あだっ! ぬし様……ひどい……」

ミスティは後頭部を抑える涙目になる。


「他の者たち、一人ずつ何故、夜中に食堂に入ったのか教えてくれる?」


もういいや、ここはスターナに任せよう。


端正な顔立ちの、いかにも育ちが良さそうな青髪ロングの女子生徒が、赤いカチューシャを整え口を尖らせる。


「私は二年のカルベラだ。昨晩、この食堂に現れるという怪異の存在を確かめるべく、このクルフと一緒に食堂を見張っていたのだ」


カルベラは鋭い視線でクルフと呼ばれた生徒を睨みつける。


「は、はい……僕、二年のクルフです……カルベラさんに言われて仕方なく……」


茶髪におかっぱ。気弱な男子生徒はカルベラの顔を窺いながら目配せをする。


「最後は私ね……」

紫髪のくせっ毛に丸眼鏡……この女性は、俺たちの担任のクラウゼル先生だ。


「昨夜は見回りの当直だった。それで戸締まりを確認しただけだ。不審な者はいなかったわ」


「私たちも不審な者は見かけなかった」

カルベラの言葉にクルフも頷く。


さて、全くわからない。

「被害者と面識のあった者は?」


「それが、判別のつかないぐらいぐちゃぐちゃで……」

カーリンが口を抑える。


「リリム見てくるー!」

リリムが突然、厨房へ駆け出した。


「おい、リリム! 見ちゃ駄目だ!」

リリムを慌てて追いかけるが――間に合わなかった。

既に冷蔵庫の扉が明け放たれていた。


「本当だ! ぐちゃぐちゃだ!」

リリムは嬉々として冷蔵庫の中身をまじまじとみる。


お前、よくそんな平然としていられるな。

怖いもの見たさで、俺も恐る恐る中を覗き込む。


確かに、ぐちゃぐちゃだ……残骸からそれがプリンだったとわかる。


はっ!? プリン!?


「なるほど、茶番か……俺は帰るぞ」


「なっ、ダイチ! このままではプリンが浮かばれないではないか! それに、犯人を野放しにしてていいのか?」


リリムがもっともらしいことを言うが……一切感情移入ができない。


「もう、いいでしょ、私は帰らせてもらうわ!」

食堂にカルベラの声が響く。


「待ってください! 犯人が分かるまでここからは出ないでください!」


スターナがカルベラの前に立ち塞がる。


「ちょっと、どきなさいよ!」


「できません!

この謎は、じっちゃんの名に掛けて私が解き明かしてみます! 真実はいつも一つ!」


「なんか、いろいろ混ざってないか?」

名探偵スターナがやりたい放題している。


「というか、妾の追跡魔法で昨晩の足跡をたどれるぞ……」


「「えっ……」」

一同、沈黙が走る。


「違うの……私は、そんなつもりじゃなかったの……」


カルベラが突然泣き崩れた。


「カルベラさんは悪くありません!」

クルフが泣きながらカルベラを庇うように立ち塞がった。

「カルベラさんは、僕が細い女性が好きだって言ったから、ダイエットをしていた……でも、昨晩、怪異調査の際、冷蔵庫の大量のプリンを見て……」


「自分を抑えられなかったの。

気づいたら貪るように、柔らかい彼の体に手をかけていた……」


彼……?

被害にあったプリンは男なのね……。

もう、心底どうでもよかった。


「謝れば許されるものではない……盗み食いは……罪だ」


カーリンがよくわからない追い打ちをかける。


「大丈夫です。あなたに後悔の気持があれば、きっとまたやり直せる……」

なんにもしていない、名探偵スターナがカルベラの肩に手を乗せる。


「むっほー! うまうまー!」

なんか、厨房からリリムの嬉々とした声が響いている。


「おい、何をしている!」

クラウゼル先生がリリムを羽交い締めにして、持ち上げる。


「ああー!? 代替えで用意していたアップルパイが!」


「リリム……悪くないもん!」


リリムは口周りにパンの残骸をつけ、開きなおる。


「リリムちゃん。ちゃんと自分の罪と向き合って!」

スターナが泣きながら、リリムをビンタする。


もうめちゃくちゃだ。


「クルフ! 逃げるわよ!」

隙をついて、カルベラが逃亡を図る。


「ま、待ってよー! カルベラさーん!」


「おい、待たないか!」


逃げるカルベラとクルフをカーリンが追う。


勝手にしてくれ……呆れて言葉が出ない。


「リリム……盗み食いは立派な校則違反だ。

学園の罰則に照らし合わせてキミを処分する」


「ダイチー! 助けてー!」

リリムが泣きながら嘆願する。


「よくわからんが、甘んじて受けろよ」


【Dランククエストクリア】


報酬:ぐちゃぐちゃになったプリン×100g

(食べられません)


俺は報酬を破棄して、スターナとミスティを連れて帰宅した。

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