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開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第三章 陰謀と選択

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第44話 繋がり

空から降ってきたファフニールの卵――あれが結局何だったのかは分からない。


災厄の傷跡が癒えぬ中、早くも一週間が経過した。

HPは回復魔法か一晩寝れば全回復するが……メンタルはそうもいかない。 


誰もストーリーを進めようとは言い出さなかった……梓でさえも。


ゲームの世界だっていうのに、綺麗な星空だ。

テラスに出て、夜空を見上げガラにもなくセンチメンタルに浸る。


一歩間違えれば俺以外の全員が結晶化していた。

再戦しようにも主力メンバーが削られた状態じゃ実質不可能に近かっただろう。


あの時、仲間を失っていたかと思うと背筋に悪寒が走る。


「ダイチ……」

か細い声に振り向くと、パジャマ姿のリリムが枕を抱えて立っていた。


「寝れないのか?」


「うん……一緒にいていい?」


「いいよ」


リリムは、テラスに設置してある、ビニール製の白いリクライニングチェアーに寝そべる。


「ここで寝るのか? 風邪引くぞ」

アルスタイン王国は一年中穏やかな気候だが、夜は少しだけ冷える。


「ダイチ、温めろ!」

リリムがリクライニングチェアーの上をポンポン叩く。


「わかったよ」

リリムを膝に抱え、椅子に寝そべる。


「リリム……あの時はそれどころじゃなかったけど……今際の際――レメリアのこと、ママって呼んでなかったか?」


「うん……自分でもなんでそんなこと言ったのかわんない……気づいたら言葉が出てた」


確かにレメリアとリリムは、二人とも赤毛のサイドテールだ。

でも、それだけで親子と結論付けるのもな。


確かに、レメリアは地上に来てから、やたらリリムを気遣っていた気がする。


「リリム、一緒にレメリアのところに夜這いするぞ!」


「よばい? うん。よくわかんないけど了解ラジャー!」


さっそくレメリアの部屋に向かい、扉をノックする。


「……開いているぞ」


「レメリア! よばいに来たー!」

部屋に入るやいなや、リリムが両手を上げて、レメリアの元へ駆ける。


「おい、ダイチ……子どもに変なことを教えるな」


鋭い眼光が俺を射抜く――この二人、性格は真逆な気がする。


「悪かったって」


「何か話があるんだろ?」

レメリアは飛び込んできたリリムの頭を撫でながら、俺を見る。


「察しがいいな」


「ママはママなの?」

リリムらしい聞き方だ。


「……」

レメリアは何も言わなかった。

……沈黙がリリムの言葉を肯定していた。


レメリアの手が、そっとリリムの頭に伸びる。

リリムもがしっと彼女の体を抱きしめた。


なんで娘に母だと伝えなかったのか、

レメリアが魔界で魔王軍幹部をしていたのか……何もわからない。


でも、親子の時間を邪魔しないでおこう。


軽くレメリアに微笑んで部屋をあとにした。


レメリアも俺の意図を察したのか、何も言わずリリムの頭を撫で続けた。



そろそろ寝ようかと自室に戻ると、

何故か俺のベッドの上にスターナが寝息をたてていた。


どいつもこいつも寂しがり屋だな。


彼女を起こさないように、隣に潜り込む。

スターナが腕を伸ばしてきて、俺に抱きつく。


彼女を二度失いかけた。

今後、これ以上の鬼畜な展開が来た時――このままじゃみんなを喪ってしまう。


バグで経験値が見込めない俺は、成長すら許されない。


残ったのは膨大なクラフトスキルだけ。

あと……魔剣とmodか……使える手段はなんでも使わないと。


チートでもバグでも……全て利用してやる。


スターナの寝顔を見ながら、決意を固める。



「ダイチ……そろそろ起きようよ」


すっかり明るくなった部屋に、スターナの声が響く。


「嫌だ……まだ寝たい……」


モゾモゾと動くスターナを、俺は抱きしめて離さなかった。


「もう、仕方ないな」


俺は、スターナの白く柔らかい頬に手を添える。


「スターナ、助けられなくてごめん」


「なに言ってんのよ。私がガルデルド帝国で殺された時も……ファフニールに殺された時も……最後には助け出してくれたじゃない」


ガルデルド帝国……ストーリーバグで話が飛んだ時か……俺はそのことを経験していないから、気づいたらカタリーナとリリムが死んでいた。


あの時は、二人を助け出せるなんて思ってもみなかった。ただ、二人を喪った憎しみをゲームにぶつけていただけだ。


あの無機質な白い空間――明らかにゲーム世界ではなかった。


誰かを喪って、もう一度あそこに辿り着けるかはわからない。駄目だ、まとまらない。今は、余計なことは考えないようにしよう。


「ダイチってば、寝てんの?」

スターナが頬を引っ張る。


「いでっ」


「起きてんじゃない。返答しなさいよ。

バックログでもう一回、ボイスを再生しようか?」


「またお前は、そんなメタいことを言ったら、せっかくの情緒が台無しだろ」


「いいんだよ。私はゲーム世界の人間だから」


自分がゲームのキャラだと自覚しておるのもどうかと思うけど、そんな簡単に言われると、少しだけ寂しい気もする。


「おい、いつまで寝ているんだ!

アーシャが呼んどるぞ!」


ミスティがノックもせずに部屋の扉を開け放つ。


俺とスターナを順番に睨む。


「ぬし様……行くぞ!」


「おい、ミスティ……どうしたってんだ」

ミスティはバツの悪そうな顔をして、俺の手を強引に引っ張る。


ミスティに連れられ一階の客間に行くと、

アーシャさんとカーリンが並んで座っていた。


カーリンがなんでここに?


リリム、レメリアも既にテーブルを囲み座っていて、スターナが俺の後を追うように部屋に入る。


これで全員だ。

ファフニールの件か……ストーリーに関する話かどっちだ?


アーシャさんは全員の顔を順番に見ると……ゆっくりと口を開いた。


「私……カーリンさんと結婚します」

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