表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第二章 居場所

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/89

第41話 堕落

俺は、ギルドの受付嬢の元へ赴いた。


「あれー?

星屑スターダストのダイチさんじゃん。先日はどうもー」


メルリカは、ピンクのツインテールを揺らしながら、覇気のない声で応対する。


「白々しい演技はよせよ。とりあえずパンツをくれ」


もはや、この台詞を発するのに違和感はなくなった。


「へぇー、いきなりご挨拶ね。

せめて、事情を話してくれない?」


「事情は話せん。さっさとお前のパンツをよこせ」


「なるほど、対象者にクエスト内容は漏らさないか……合格よ。

もう六つの秘宝は集めてんでしょ?

いいわよ提出して――」


俺は六つの秘宝をメルリカに手渡す。


あっけなく、Eランクへ昇格した。


「てか、それなら最初っから六つの秘宝でよかったじゃん?」


「うーん。あたいの下着をどうやって狙うのか興味があってね。でも、ストレートに要求してきたのはあんたが初めてよ!

どうしてあたいが依頼主ってわかったのよ?」


「クエスト名の横の依頼主がバニーなっていたからな。それに、こんなクエストを依頼しそうなのがメルリカしかいなかったから」


「ふーん。なるほど、顔はアホっぽいのに馬鹿じゃないんだ。そうね。昇格クエストはあたいの裁量で決めれるのよ」


「職権乱用が過ぎるな。

それで、報酬はなんかないのか?」


このクエストを達成するのにかなりの金額を使った。自業自得な部分は大きいが、割に合わない。


「うーん。そうね……仕方ない……」


メルリカは裏手に引っ込み、しばらくしたら出てきた。


「これ、あげるわよ」

何かを手渡してきた。


これはもしかして……。

まだ、ほんのり温かい。


「まあ、これで手を打とう」

俺はメルリカの下着をインベントリにしまった。



長かった……俺は久しぶりに屋敷に戻ってきた。


アーシャさんが温かく出迎えてくれた。


「ダイチさん……おかえりなさい。

たまには、一人での生活もいい勉強になったんじゃない?」


「そうですね。でも、これからは女性を敵に回さないように気をつけます」


「ふふ、敵なんかいないわよ。

みんな、始めっからダイチさんの味方じゃない」


「そうですね」



「ダイチー!」

リリムが勢いよく飛び込んできた。


「久しぶりだな、リリム!」


俺は、彼女の脇を持ち、高い高いをしてあげる。

 

「うっひょー!」

こいつも変わらないな。


「ぬし様……妾も……」


いつの間にかミスティも隣に立っていた。

彼女は両手を水平に広げ催促してくる。


「ったく、1000年経っても子どものまんまだな」


リリムを降ろした、今度はミスティを持ち上げる。


「やっほー!」


まったく、可愛い奴らだよ。


「ひぎっ!」


「ぬし様!」 「ダイチ、大丈夫!」

ミスティとリリムが慌てて駆け寄る。


なんだ……腰がピキッと……悲鳴を上げた。


「まさか……ぎっくり腰……」

生まれて初めてのぎっくり腰を味わう。


「これは……デスペナルティの筋肉痛と一緒だ。魔法じゃ回復できない……」

ミスティが頭を抱える。


「ダイチさん、大丈夫ですか?」

アーシャさんが慌てて俺に肩を貸す。


「レメリアー! 助けてー!」

リリムが叫ぶと、一階の一室からレメリアが駆けてくる。


「何事だ!」


「ダイチが……ダイチが……」

リリムの声が震えていた。


「ぎっくり腰って何? 変な病気?」

ミスティは顎に手を当てて考え込んでいる。


みんな、ぎっくり腰を知らないみたいだ。

もしかして、転生者限定のデバフなのか?


「心配すんな」

レメリアはリリムの頭をポンッと軽く撫でた。


「ほらよ!」

彼女はそう言って、俺に肩を貸してくれた。


両脇にアーシャさんとレメリア。


「両手に花だな……」


「ふふ、ダイチさんったら」

横でアーシャさんが笑みをこぼす。


「そんだけ軽口叩けりゃ、元気だろ」

レメリアとアーシャさんに支えられながら、俺は自室のベッドに寝かせられた。


「いだっ……」

動かす度に体が悲鳴を上げる。


「何かあったら、いつでも呼んでね」

アーシャさんの手が、俺の額に軽く触れる。


「レメリアもありがとう」


「ああ……」

レメリアはぶっきらぼうに返事をすると、後ろ手に軽く手を振り、部屋から出ていった。


結局、レメリアが魔界から地上に来た理由は不明だ。魔王軍の幹部として、不安な部分はあるが、みんなとはうまくやっているみたいだ。


……ともかく、最近、頑張りすぎていたのかもな。

しばらく休もう。



額に冷たい手が触れる。


「ダイチ……大丈夫?

ご飯……食べれそう?」


目が覚めると、スターナが泣きそうな顔でこちらを覗き込んでいた。


「たかが、ぎっくり腰で大袈裟だな」


「……その、ぎっくり腰ってのは、大丈夫な病気なの?」


「まあ、無理をしなかったら治るとは思うけど……」


「ご飯持ってきたから、食べさせてあげる!」


みんな、本当にぎっくり腰を知らないんだな。

正直、ご飯ぐらいは自分で食べれるけど……せっかくだからお言葉に甘えるか。



こうして、介抱を受けながら一週間が経過した。

みんな、献身的で本当に優しくしてくれた。


「おい、リリム、ミスティ……足を揉んでくれ」


「アイアイサー」

リリムはぴょんっと飛び跳ね、俺の足の裏をマッサージする。


「ぬし様……またなのか?

これで本当に良くなるのか?」


「なんだ、病人だぞ! もっと労ってくれ!

このままじゃ、ぎっくり腰で死ぬかもしれないんだぞ!」


みんな、ぎっくり腰を知らない。

それが、俺のわがままを増長させていった。


そのことにもっと早く自分で気づいていたら、

悲劇は訪れなかっただろう。


毎食、誰かしらにご飯を食べさせてもらった。


「おい、スターナ!

お腹空いた。食事はまだか?」


「ごめんね。すぐにママに言って作ってもらうから」


みんなを召使いのようにこき使える。

そして、誰もが言うことを聞いてくれる。


それが、こんなにも気持ちいいなんて。


「スターナ……自分じゃうまく噛み切れないんだ……口移しで食べさせてくれ」


「え……ダイチは嫌じゃないの?」


「スターナだったら、嫌じゃないよ」


「えっ……そうなの」

スターナは頬を赤らめる。

俺、頑張ってきたしこれぐらい許されるよな?


スターナがおかゆをゆっくりと咀嚼する。

そのまま、彼女の口移しで食事を済ませた。


「スターナ。昼寝するからレメリアとアーシャさんを呼んできて……寒いんだ」


「えっ、添い寝なら、私がするよ?」


「いや、二人の方が温かいから」


「そうなんだ……わかった」

スターナは二人を呼びに行ってくれた。


「おい、ダイチ……貴様、少し調子に乗ってないか?」


「まあまあ、レメリアさん。ダイチさんだってツライんだから……これぐらいのわがまま聞いてあげましょうよ」


アーシャさんが、レメリアをなだめる。


「寒い……早く体温めてくれ!

早くしないと死ぬかもしれん」


アーシャさんとレメリアが、ベッドの両脇で添い寝をする。


「レメリア、もう少し体を密着させろ」


「くっ……貴様……」

レメリアは露骨に不服そうだ。


「なんだ、俺に逆らうのか。

魔界に送り返したっていいんだぞ?」


「くっ……すみません……ダイチ様……」


魔王幹部を屈服させるこの快感……たまらない。



一ヶ月後――正直、腰は完治していた。

ただ、ぎっくり腰を知らないみんなは、今でも俺を重病人扱いしている。


そして、俺もこの生活から抜け出せなくなっていた。


「大地、病気なんだって……大丈夫?」


「おっ、梓じゃん。久しぶり」


「ダイチ……ぎっくり腰なんだって……」

スターナが涙ぐむ。


「ぎっくり腰?」

梓は露骨に顔をしかめる。


……はっ、まずい!

梓は転生者だ。ぎっくり腰だって知っているはず。


「ああ……なかなか治らなくて……」

俺は冷や汗をかきながら、梓の様子を窺う。


「一ヶ月以上前の話なんだよね?」


「ああ、本当に悪いんだぞ。仮病じゃないからな」

やばい、焦れば焦るほど墓穴を掘ってしまう。


「ふーん。大地……ベッドの上にゴキブリがいるわよ」


「うわっ!」

俺は慌ててベッドから飛び起きる。


「えっ……ダイチ……立てるの?

だって、トイレだってみんなでおぶって連れて行ったのに……」


まさか、梓に嵌められた。

スターナも訝しげに俺を見ている。


「スターナ、今治ったんだよ! な?」


「痺れろ……」

“妨害魔法・パライズ”


「ぐきゃぁぁ……」

また、このパターンか……体が痺れて動かない。


「スターナ……見張ってて。みんなに伝えてくるから……」


俺の頬に雫が落ちる。

「ダイチ……死ぬかもって……本当に心配したんだから……この病気はリスポーンでも甦れないって言ってたから……」

スターナが大泣きし始めた。


そういえば、説得力を持たせるためにそんな嘘をついた気がする。


「スターナ、まあ元気だったからよかったじゃん?」


「ダイチ……今回は私も許さないから……」

スターナが目を合わせてくれない。


……階段を上がる複数の足音が聞こえる。


仰向けの俺を、梓以外の全員が見下ろしていた。


「私は、今回被害者じゃないから帰るね。大地……麻痺はじきに解けるから。じゃあね……」


「待ってくれ……梓……助けて……ぎゃっ!」


伸ばした手をレメリアが踏みつける。


「今まで散々こき使ってくれたなあ」

レメリアが両手をポキポキと鳴らす。


「ダイチさん。スタちゃんを泣かせたのは……許しませんよ」

アーシャさんも目がマジだ。


「ぬし様はすぐに調子に乗るからの」


「みんな、ダイチも悪気があったわけじゃないし……仲良くしようよ」

リリムが俺を庇う。


「リリム……」


「スタちゃん。リリムちゃんを連れて行ってくれる? たぶん、見ない方がいいわ」


アーシャさんに言われて、スターナがリリムを無言で部屋の外に出す。


「ねぇ、皆さん。腰が痛かったのは本当なんです!」


「ダイチ……それ以上ごちゃごちゃ言うと、死ぬ回数が増えるだけだぞ?」


「ひっ……」


「ぬし様……妾も少なからず心配はしとったのに……」

ミスティとアーシャさん、レメリア……。


三人の合わせ技により、俺は地獄を繰り返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ