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開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第二章 居場所

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第37話 謝罪

――コン、コン。


かすかなノックの音で目を開ける。


まだ、夢の中の梓を起こさないようにそっと、ベッドから降りる。


ゆっくり扉を開けると――アーシャさんが目を見開いて立っていた。


「ダイチさん……梓ちゃんのお家にいらしたのね……」


「アーシャさん……俺……すみませんでした」


「スタちゃんにも謝られたんだけど……私はいいのよ。でも、ロザリアちゃんがあんまりにも可哀想だから。ちゃんと謝るのよ。そしたら、ウチに帰ってきてもいいから……」


「うん……」


「これ、梓ちゃんのお弁当……あと、多めに作ってきたから、二人で食べなさい」


アーシャさんは軽く微笑むと、そのまま去っていった。


あの時の俺はさすがにクズすぎた。

嫌がられるかもしれないけど……ロザリアちゃんに一度謝りに行くか。


机に弁当箱を置き、書き置きだけして梓の家を出た。アーシャさんはああ言ったけど、もともと梓のために作ってくれたお弁当だ。


俺がいただくわけにはいかない。


王都の朝は早い。忙しなく町民が行き交い、市場の準備を始めていた。


【緊急クエスト発生!】


アラート音とともに視界が赤く染まる。


なんだ! 緊急クエスト?


視界の端でクエスト内容を確認する。


「なになに……木こりの女性が大番オオツガイに攫われた……大番ってなんだ?」


場所は南の森か……制限時間10分!


短すぎだろ!

ロザリアちゃんへの謝罪は後回しにして、急ぐか。


手をかざし、魔剣ヨグ=ソトースを召喚する。


普通に走っても間に合わない。空間転移するしかない。


“次元斬”

――剣を振り空を断つ。


魔剣が完全にファストトラベルアイテムと化している。


時空の狭間に飛び込む。

視界がひらけると、暗い森に出た。


緑の匂いがやたらと濃い。

周囲を見渡すが魔物らしき姿が見えない。


「きゃぁぁぁぁ!」


森に少女の声がこだまする。

どこだ……前後左右と見渡すが、声の主は見当たらない。


まさか、上?


顔を上げた瞬間、空から少女が降ってきた。


……というか、イベントシーンなのか分からないがスローでゆっくりと空から降りてきた。


俺は手だけ添えて、見慣れた少女を受け止めた。


「ダイチさん……」


「木こりの少女って、ロザリアちゃんだったんだね……でも、どうして空から?」


直後、巨大な何かが地面に墜落する。


土煙が舞い上がり、鳥のようなモンスターが息絶えていた。


「こいつは……?」


「木を切っていたらあの鳥に連れ去られて……思わず鳥に触れてしまったら……死にました」


大番オオツガイ……68レベル。

ロザリアちゃんの膂力なら簡単に倒せるだろう。


【緊急クエストクリア ロザリアが仲間になりました】


何もしていないけど……クリアになった。

さすがバグオラと言うべきか……。


ロザリアちゃんって本来ここで仲間になるキャラだったのか。


制限時間内に辿り着くほうが難易度高かったな。

相変わらずのバランス調整だ。


「ダイチさん……私を助けてくれてありがとうございます」


ロザリアちゃんの腕が俺の体を締め上げる。


「ロザリアちゃん……く、苦しい……ギ、ギブ……」


「あっ、ダイチさん……すみません」

ロザリアちゃんは慌てて手を離す。


「ロザリアちゃん。

俺……酷いことしてごめん……」


「……ダイチさんは何が悪いと思って、何に対して謝っていますか?」


ロザリアちゃんを支えるように抱き留めたまま、

彼女の眼差しは、真っ直ぐこちらを見ていた。


「ええっと……ロザリアちゃんを、報酬扱いにしてごめん。あと、怪力女って言ってごめん。あとは……エロい目で見てごめん。それと、押しに弱い性格を利用してごめん」


「ダイチさん……本音で謝りすぎですよ。

都合のいい女だと思っていたんですね」


「……ごめん」

何を言っても言い訳にしかならない。


「ダイチさん。もう一つ、一番私が怒っていることがあります……それを謝ってください」


一番怒っていること……なんだ?


いや、あれはバレていないはずだし……もしかして……

「ロザリアちゃんに捕まって殴られている時……少しだけ興奮していたこと?」


「えっ……ち、違いますよ!

えぇ……あの時、興奮していたんですか……。

あの時、私も少し暴走しすぎました。ごめんなさい」

ロザリアちゃんは慌てて、距離を取る。


「そのことじゃないの?

また、言わなくてもいい暴露をしてしまった」


「なんか、掘れば余罪が出てきそうですけど……怖いのでやめておきます」

ロザリアちゃんは自分の胸に手を当てため息をつく。


「一番、怒っているのは……私の心を弄んだことです……」


「えっ……弄んだ?」


「私、誰の言うことでも聞くような軽い女じゃありません。ダイチさんだったから……協力したんです。……それなのに……」


ロザリアちゃんの言いたいことはなんとなく分かった。


「ごめん。これからは大事に扱う……」


ロザリアちゃんは微笑んで手を差し出す。


「……?」

俺にはその意味がわからなかった。


「シナリオではこのクエストで、私が仲間になるんですよね? よろしくって意味です」


俺は軽く笑い、彼女の手を握った。

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