第28話 世界の果て
ロザリアちゃんは泣いていた。
たぶん、これまで誰からも受け入れられない人生が続いたんだろう。
その気持ちは……俺にもよくわかる。
「ロザリアちゃん……酷いことを言ってごめん……」
何度目かの死を繰り返した後、ロザリアちゃんの振り下ろす拳が……止まった。
「私の方こそごめんなさい。
……ダイチさん。もう、私の前から消えてください」
彼女は馬乗りになったまま泣いていた。
消えたいけどロザリアちゃんが乗っているから消えられない……。
……ふぅ、仕方ない。
俺はロザリアちゃんを優しく抱き寄せた。
「ごめん……俺には役目がある。
だから、結婚はできない。でも、全て終わったら……」
「はい、その時まで待っていますね。
私のこと……忘れないでください」
「忘れるもんか。
キミほどパワフルな女性は他にいないよ」
「ダイチさん。殴りますよ?」
「ごめん」
❇
茜色の空が街を照らす。
解放された達成感より、なんとなく心の中に大きな穴がぽっかりと空いている気がした。
帰宅後、みんなに見つからないように、自室に戻る。
俺のベッドで……なぜかスターナが寝ていた。
「何してんの?」
「あっ、ダイチ! ようやく帰ってきたのね!
どこに行ってたのよ!」
スターナの服装は元に戻っていた。
「ごめん……服、戻ったんだ?」
「うん。ダイチがいなくなってすぐに戻った。
もう、みんな怒ってないから安心して……って、くんくん……なんか、あんた香水臭くない?」
「うっ……」
たぶんロザリアちゃんの匂いだ。
「ふーん。
人が心配してたのに、女の家にいたんだ」
スターナはベッドから起き上がり、鼻を鳴らして、部屋から出ていこうとする。
「スターナ、待ってくれ!」
俺はスターナを引き止めた。
「な、何よ! 別にあんたとは何でもないんだから、他の女のところで暮らせばいいじゃない!」
「違う、スターナでいい」
「……でいい?」
「あっ、違った。スターナがいい。胸なんか無くてもそばにいてほしい!」
喪失感からか、一人になるのが寂しかった。
「あんた、言葉選びがずっと終わっているわよ。
しかも、別の女と比べているでしょ!
サイテー!」
スターナは俺の腕を振りほどき、部屋から出ていった。
俺は、ゲーム世界でもまともに恋愛ができないのか……。
いや、これも全て身から出た錆……。
枕を涙で濡らし、一人で眠った。
❇
数日が経過するが、ストーリーの手がかりすら一向に掴めない。
王都を散策したり、ナージャ王女の元を訪ねてみたが、まったく反応がない。
ガスタージャに引き渡そうとした件で、
ナージャ王女には完全に嫌われたようだ。
今までのハーレム状態が幻想に思えてきた。
俺の非モテは、主人公のハーレム設定をも上回るのか?
俺は、現実から目を背けるように、ストーリーのフラグ回収に勤しんだ。
「ぬし様、こんなところにいた。
もう、じきに日暮れだぞ?」
近郊の森を散策していると、空からミスティが舞い降りてきた。
「なかなか、ストーリーが進まないんだ」
「ぬし様は、元の世界へ帰りたいわけではないのだろ? そこまで躍起にならなくても、よいのではないかの」
ミスティは白いドレスのスカートをはためかせ、宙に浮く。
「梓と約束したから。それに、最近浮かれていた。少しは誠実に生きたいんだ」
「充分、誠実だと思うがの……」
スカッ――。
「ん?」
地面を踏んだ感触がない。
えっ……まさか……床抜けバグ――!
まずい!?
俺はとっさにミスティのドレスを掴む。
駄目だ、体が重力に逆らえず落ちていく。
「うおおおおおおおおお!?」
「ぬし様ぁぁぁぁぁ!?」
俺とミスティはそのまま奈落へ落下する。
❇
気がつくと、俺は真っ赤な空の下に立っていた。
見渡す限りの荒野。
空気は重く、どこからともなく魔物の咆哮が響く。
「ここは……」
【エンドコンテンツ・魔界エリア】
突然、視界の端にメッセージウィンドウが表示された。
「エンドコンテンツ?」
この世界に魔界なんかあったのか……これ、ストーリークリア後に遊ぶやり込み要素だろ。
むしろ、飛び越えちゃったよ。




