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開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第二章 居場所

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第27話 影の薄いライバル

なんとか逃げ切れたが……これから、どうする?


行く宛もなく、彷徨うのもな。

クラフトで家自体は作れるけど……。


「おっ、盟友ダイチくんではないか?」


馴れ馴れしい声が響き、見知らぬ金髪の少年が手を振って近づく。


「誰だお前?」


「キミはいつになったら僕の名前を覚えてくれるんだ。親友でありライバル設定のライドウだよ」


設定って言っちゃっているし。


「なんだ、お前か……」


「なんだとはヒドいな。それより、今日はお出かけかい?」


「お出かけっていうか……あっそうだ!

ライドウ、お前の家に泊めてくれよ」


これは名案だ。


「別に構わないけど……妹がいてよければ……」


「おっ、妹か……いいねぇ」

俺は舌舐めずりをする。


「ダイチくん。悪意はないのだろうけど、時折、キミが恐ろしく感じる時があるよ……」


っと、欲望があふれていた。


「安心しろ。親友の妹に手を出すわけないだろ?」


「あぁ……親友……なんと、甘美な響き……」


なんか、感涙にむせいでいるな。

こいつ、イケメンなのに残念キャラだよな。


「ま、汚いところだろうけど、早く案内してくれ。腹が減った」


「それは、僕のセリフな気もするが、親友の頼みとあらば、応えるのが道理というもの……さあ、ついて来てくれたまえ」



ライドウに案内されるがまま、彼の自宅に訪れる。


市民街――何の変哲もない中流階級の家か。


「ロザリア……ただいま!」


「お兄様、お帰りなさい」

エプロン姿の長い黒髪の少女が出迎えてくれる。

お淑やかな雰囲気で育ちは良さそうだ。


「今日は、お客様が来ててね」


「始めまして、英雄ダイチです」

吐息多めに挨拶をする。


「あなたが……噂の……」


おっ、いいねぇ、どんな噂だ?

主人公ってのも悪くないな。


「ああ、この人が王都の英雄だよ」

ライドウが、ロザリアと呼ばれた少女に俺を紹介する。


「私は、ロザリアと申します。

兄がいつもお世話になっています」


「いえいえ、こちらこそ兄君にはいつも助けられているよ」


「なんか、ダイチくん。

いつもと話し方が違わないかい?」


俺は、ライドウに腹パンする。


「ぐっ……」


「はは、何を言うライドウくん。

私はいつも気品溢れる人格者ではないか」


「ふふっ、面白い方ですね。“トイレの神様”は」


ロザリアが口元を押さえ、クスリと笑う。

……って今なんて言った?


「あれ、ロザリアさん。聞き間違いかな?

僕のことなんて呼びました?」


「えっ、トイレの神様……王都にトイレとお風呂を広めてくださった方ですよね?」


「なんでだよ! それなら、せめてお風呂の神様にしてくれ! トイレの神様はなんか嫌だ!」


「いえいえ、ダイチさんのお陰で皆、助かっていますよ」


「あれ、みんなトイレするの?」

NPCはトイレをしなかったはず。


「はい、ver2.1からアップデートでNPCのトイレ動作が追加されました」


ロザリアからメタい説明がされる。


「このゲームって、アップデートとかされているかよ! てか、運営陣! いらないアプデをする前にバグとかゲームの粗を改善しろよ!」


「ロザリア、驚かせて悪いね。ダイチくんは少し、激しい方なんだ」


「ふふ、賑やかでいいじゃありませんか。

ダイチさんの分のお夕飯も急ぎで準備しますね」



ライドウと向かい合い、椅子に座る。


その横のキッチンで、ロザリアちゃんが手際よく料理を始める。


「良い妹さんだな」


「おい、ダイチくんといえど、妹はあげれないぞ!」


「別に狙ってないよ。

それに、ロザリアちゃんも俺みたいな男に嫌だよな?」


「……そんなことありませんけど……」

ロザリアの声が包丁の音で掻き消される。


黒曜の包丁?

珍しい物を使っているな。


「ダイチくん、そう言えば自宅で何かあったのかい?」


さすがに昼間の件は話せないな。



食卓も済み、寝る準備に入る。


この世界は夕食後、3時間程で皆、就寝する。

夜が早く、朝も早い。


「ダイチくんはどこで寝ようか?」


「私の部屋のベッドを使ってください。

私が床で寝ますから」


ロザリアちゃんから思わぬ提案をされる。


「おい、駄目だ! そんなのお兄ちゃんが許さない!」

ライドウがロザリアに詰め寄る。


「お兄様のお部屋、狭いじゃありませんか。

ダイチさんに失礼じゃないですか」


「いや、ダイチくんは、いい人だが……危険な男なんだ」


ライドウのやつ、よくわかっているじゃないか。

俺は、ロザリアちゃんにバレないように、

ライドウの、背中に数発拳を撃ち込む。


「ぐっ……」

ライドウのHPが瀕死になり、気絶する。


「お兄ちゃん、眠たいみたいだな。

俺が部屋に寝かせておくよ。それが、終わったらロザリアちゃんの部屋に行くね」


「すみません、兄がご迷惑を……疲れていたのかしら?」

ロザリアちゃんにはバレていないようだ。


ライドウを部屋で寝かせた後、ロザリアちゃんの部屋に入る。



ロザリアちゃんは優しい。

俺をベッドに寝かせて、自分は床で横になる。


布団から百合の香りが漂う。


「くしゅん……」

ロザリアちゃんがくしゃみをする。


彼女は薄いタオルケットだけ羽織っていた。


「ロザリアちゃん、場所変わるよ?

俺なら床で大丈夫だから」


「そんな、悪いですよ……それなら、その……一緒に寝ませんか?」


「えっ?」

突然のラブコメ展開に驚く。


多少の期待があったとはいえ、童貞にこの展開の急さはハードルが高い。


「ごめんなさい……そうですよね。

私みたいな女性、ダイチさんには相応しくないよね」


ロザリアちゃんは急に立ち上がり、部屋を出ようとする。


俺は、気づけば彼女の腕を握っていた。


「ダイチさん……私なんかでいいのですか?」


スターナの顔が一瞬よぎる。

でも、ここで行かなければ男じゃない!


「ロザリアちゃんがいいんだ」


彼女が俺の胸に飛び込み、そのままベッドに倒れ込む。


「ダイチさん……私、魔法の才能がなくて……この国では落ちこぼれで……本当の私を知ったら、ダイチさんは幻滅してしまう」


「ロザリアちゃん。そんなことない。世の中、魔法が全てじゃないさ。俺だって魔法は使えない」

レベルだって上がらないし。


「ダイチさんは優しいんですね……」

初めてのキスは少しだけ塩っぱかった。


夜の帳に包まれて俺たちは眠りについた。



ふぅ、朝日が眩しいぜ……。

大人な展開はなかったが、謎の全能感が俺を支配する。


「ダイチさん、おはようございます。

結婚式はいつになさいますか?」


隣でロザリアちゃんの上目遣いが、一気に俺の脳を覚醒させる。


「えっ、結婚式?」

あれ……ストーリーが飛んだ?

そんな、仲まで進展していたっけ?


「子どもは6人は欲しいですね。ダイチさんは日暮れまでに帰ってきて、私にキスをするの。1日最低、20回のキスと40回抱擁。愛していると100回は言ってくださいね♡」


あれ……もしかして、この子……やばい……。

不穏な空気が漂い始めた。


「お兄様が邪魔ですね。追い出して、犬小屋にでも住まわせましょうか」


やばい、やばい、やばい。

ロザリアちゃんの瞳孔が完全に開いている。


俺は慌てて、起き上がり、部屋から逃げようとする。

ガシッ!

物凄い膂力でベッドに引き戻される。


俺は恐る恐るロザリアちゃんのステータスを参照する。


ロザリア

レベル563

HP157064  МP36

物理15326 魔法6

防御6933 速度7526


この子、魔法の才能が無い代わりに、物理の才能に溢れているんだ。


単純なステータスで言えば、ガスタージャの数倍は強い。


「ダイチくんっ!」

ライドウが部屋に飛び込んでくる。


「くっ、遅かったか……ロザリアは幼少期に父親を亡くしてから、大人の男性に焦がれるようになった。しかし、力が強すぎるあまり抱きしめただけで男を殺してしまう……」


「またかよ、その後出し設定の羅列をやめてくれ!とんだ、化け物じゃねえか!」


あっ、やばい……ロザリアちゃんが、わなわなと震えだす。


「ダイチさんなんて嫌いです!」

彼女のビンタ……いや、張り手……いや、ビッグバンが俺の体を粉々に吹き飛ばす。


俺は叫ぶ間も無く、意識が飛んだ。



ふぅ、リスポーンしてくれたおかげで、なんとかベッドに逃げることができた。


「あの、怪力女……あんなの嫁の貰い手が見つかるわけがない……」


「大丈夫ですよ。ダイチさんが貰ってくれますから」


なぜか、俺の上にロザリアちゃんが馬乗りになっていた。


「ひっ!?」

そうか、ロザリアちゃんのベッドで寝たからリスポーン地点がここに固定されたんだ!


「ライドウ! 親友だろ! 助けてくれ!」

部屋の扉から顔を覗かせているライドウに助けを求める。


「お兄様は見ない方がいいわ」


「ダイチくん……すまない!」

ライドウはピシャリと扉を閉めた。


「ダイチさん……時間はたっぷりあります。

二人で楽しみましょうね♡」


「嫌だー!」


その後、小森大地を見かけた者はいなかった。

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