第26話 衣装バグ
くそっ、どうしてこうなった!
ガン、ガン、ガン!
部屋の外から、扉を激しく打ちつけるノックの音、奴らの怒声が鳴り響いている。
「おらっ、出てこいやダイチ!」
怒鳴るナージャ王女。
「はやく、これを戻してよ!」
スターナの声も聞こえる。
「貴様、今日という今日は許さんぞ!」
カーリンまでいらっしゃる。
誰か俺を助けてくれ!
❇
遡ること30分前、俺は暇つぶしにクラフトメニューでキャラの衣装作りに励んでいた。
作成した衣装は、パーティーにさえ加入していたら、試着ができ、実際に着せずに映像としてその姿を拝める。
例えば、スターナのスク水衣装やアーシャさんのブルマ姿など、本人に実際に着せなくてもその姿を拝めることができる。
先日、ようやく素材が集まり、ある衣装を作成した――俺は、いつものように部屋に籠もり、試着画面を選択した。
カーリンが、たまたまアーシャさんに会いに来ていたので、彼もパーティーに加入させ着せ替えごっこを楽しむ。
ベビーベビーセット。
おむつ、おしゃぶり、ボンネット、エプロンの4点セット。
「ぎゃはははは!」
カーリンのあられもない姿に思わず爆笑してしまう。
「ちょっと、ダイチ! また、パーティー加入してるだろ! リリムが外に出かけられないじゃないか」
やばっ!
リリムの声で、慌てて衣装画面を操作をする。
衣装→一括装着→反映。
あっ……やばい、パーティーにいる全員にベビーベビーセットを反映させてしまった。
「ぎゃあああ、なんだこの格好は!
ダイチ! なにをした!」
リリムの絶叫が扉1枚を隔てて聞こえてくる。
慌てて操作するが……くそっ、なんで戻らないんだよ!
バグってんのか? 見た目変更を解除できない。
まずいっ!
ドタドタと大勢の足音が俺の部屋に迫ってくる。
❇
それで、今に至る。
「ちょっと、ダイチさん。こんな恥ずかしい格好嫌です! 早く解除してください!」
アーシャさんの声が響く。
「ぬし様……早く開けるのだ。今なら、5回殺すだけで許してやる」
駄目だ、ミスティは完全にブチギレている。
「ぷっ、ぐふふふふ」
扉の外で、全員が赤ちゃん衣装で慌てふためくところを想像したら、笑いが堪えきれない。
「なに笑ってんのよ! 大地、早く開けなさいよ!
麻痺からの痛覚倍増コース決定ね」
まずい、そういえば梓もいたのか。
駄目だ、今、扉を開けるわけにはいかない。
殺されるだけじゃ済まない。
――扉が激しく揺れる。
魔法で攻撃しだしたが、オブジェクトはパーティーメンバーには壊せない。
しかし、時間の問題だ。
パーティー加入させれない人が来たら、この扉は破られる。
「みんな、バグで解除できないんだ!
許してくれ!」
「そうなんだ。なら、仕方ないか……」
よし、チョロいスターナなら説得できそうだ。
「ダイチがこの前、『アーシャさんの、水着姿……』って言いながらはぁはぁしてた」
リリムから爆弾が落とされる。
「まぁ、ダイチさんったら♡
言ってくれれば直接見せてあげるのに」
アーシャさんの艶めかしい声が響く。
「ちょっと、ママ、そんなの許さないから。
ダイチ、やっぱり衣装変更を悪用しているじゃない! 少しでも信じた私がバカだった」
ちっ、スターナを騙せなかったか。
リリムめ、余計なことを……。
「おい、ダイチ……アーシャの水着姿だと!
私だって拝んだことがないのに! 貴様、許さんぞ!」
カーリンから異様な圧を感じる。
姿は見えないが……わかる。
「ぬし様は、やはり浮気性だの……勇者と同じだ……この世界、やはり滅ぼす!」
やばい、ミスティの逆鱗に触れてしまった。
扉の外から詠唱が聞こえる。
「ちょっと、ミスティちゃん。やめてっ!」
梓の慌てふためく声が聞こえる。
「お前ら、くすぐれ!」
「あ、ぬしら止めんか! ぎゃは、ぎゃはははは……」
梓たちが慌ててミスティを取り押さえ、くすぐり始める。
姿は見えないけど……たぶん、そうだ。
よしっ、今のうちに……。
パーティーを全員解除する。
俺はこっそり二階の窓から飛び降り、自宅から走り去った。




