表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第二章 居場所

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/89

第25話 前へ

【チャプター 5B-2 勝利の美酒】


勝利を祝い、アルスタイン城で宴会が開かれる。


城の庭園で大皿に料理が並べられ、互いに盃を交わし合う。


ナージャ王女は、昼間の一件もあり、俺とは目を合わそうとしない。ガスタージャを倒すためとはいえ、ちょっと可哀想だったか。


それにしても、この国の設定はどうなっているんだ?

ここまでまつりごとを誰が取り仕切っているのか不明だし、参謀らしい人物もいなければ、ナージャ王女が舵取りをしているわけでもない。


本当に設定がガバガバすぎる。


今回はなんとか乗り切ったが、ガルデルド帝国と正面切って渡り合うのはきつい。

クラフトだけで乗り切るのは正直、限界がある。


できれば、アルスタイン王国の軍事レベルとかも把握しておきたいけど……ナージャ王女に聞いても、「設定にないから」の一点張りだ。


今後のストーリー展開次第だが……正直、ガルデルド帝国とは戦いたくない。



酒も進み、梓が隣に座る。


「ダイチ、無茶苦茶だったけどクリアしてくれてありがとう」


「これぐらいわけないさ。

……ってお前、未成年だろ。なんで酒を飲んでんだよ」


「変なところで真面目ね。この世界は飲酒に年齢制限なんてないのよ」


梓はそう言って、銀杯の中の葡萄酒を飲み干す。


「そうなのか……でも、ほどほどにな。酔いつぶれても介抱しないぞ」


「あら、送り狼にならなくていいの?」


「お前なあ、大人をからかうんじゃないよ」


「……てか、大地って何歳なの?」


「26だけど……」


「思ったより、おっさんなのね」


「うっせえ、26歳はまだお兄さんだろうが」


「結婚は?」


「し、してねぇし、童貞だよ!」


「別にそこまで聞いてないんだけど……どんまい」


「そんな哀れむような目で見ないでくれ……引きこもりでニートだよ! なんか、文句あるのか!」


「大きい声出さないでよ。

大丈夫、大地なら戻ってもやり直せるわよ」


「適当なことを……俺なんてどうしようもない人間だよ……」

自分が無力なのは、誰よりもよく知っている。


――バシッ!


「いでっ!」

梓に思いっきり背中を叩かれる。


「ここまで、皆を助けてくれたじゃない。

この、クソみたいな世界から――」


あれ……どうして……目尻を抑えるが、涙が溢れて止まらなくなる。


「ちょ、泣かないでよ」

梓が、俺の頭をくしゃくしゃ撫でる。


「ああ、暴力女がまたダイチをイジメてる!」

リリムの声が響く。


「はぁ? 私は何もしてないわよ」


よく見えないが、二人が言い争いを始めた。


「二人とも、やめなってば!」

スターナの声も聞こえてきた。


こんな恥ずかしいとこ見られたくない。

――俺は逃げるようにバルコニーに出た。


酔いを覚まそうと、バルコニーの隅で壁に寄りかかる。


宴会の喧騒が嘘のように遠のいていく。


あれ……次第にまぶたが……。



……寝ていたのか。


目覚めると、宴会の余韻に紛れ、かすかに男女の話し声が聞こえてきた。


「アーシャ……いつまで、ダインのことを引きずっている」


「あなたには関係ないじゃない。別にいいでしょ」


「よくない! 私は……お前を……」


……やばい、今動くと気づかれるよな。

痴情の縺れってやつか。カーリンがギルドマスターで、アーシャさんがその団員だったはず。


二人ってそういう仲なのか?

なんとなく、いい気はしない。


暗くてよく見えないが、カーリンがアーシャさんの手を取る。


二人の吐息が重なる。


「やめて!」

アーシャさんがカーリンを突き飛ばす。


「すまない……君を傷つける気はなかったんだ」

カーリンは唇を噛み締め、そのまま宴会場へ戻っていった。


「……」

バルコニーの欄干の前に立つ、アーシャさんの肩が上下に揺れている。

――声を殺して泣いていた。


立ち上がり、アーシャさんの隣で、欄干に両腕を置き、寄りかかる。


「お姉さん、俺なんていかがでしょう?」


「ふふ、ダイチさん。今の見てたんですね……ヒドい人」


「すみません。寝ていたら、なんか揉めていたので」


「……ダイチさんは好きな人はいますか?」


突然の質問にうまく頭が回らない。


「好きな人……ですか」

スターナ、リリム、梓、アーシャさん、ミスティ……いろんな女性が頭によぎるが……誰が好きかと言われれば……分からない。


「私、夫のこと……愛していました。

でも、彼が亡くなって年月が経つにつれ……彼の匂い、仕草、笑顔が……どんどん記憶から消えていってしまうんです」


この世界に写真は存在しない。

もし、誰かとの思い出を遺したいのなら、記憶に頼るしかないのかもしれない。


俺の返答を待たずにアーシャさんの言葉が、溢れ出す。


「誰かに惹かれる度、薄情な自分に嫌悪してしまう。ダインのことを考えない時間が増えていく度に、彼への愛が嘘だったんじゃないかって……」


「アーシャさん……別に故人を思い出せなくなるのは悪いことじゃない。それだけ、アーシャさんが前に進んでいるってことだから」


俺も、ここに来るまで……亡くなった婆ちゃんのことを引きずっていた。あの家で、唯一俺に優しくしてくれた。


でも、この世界に来てから婆ちゃんのことを考えなくなった。


「でも、ダインはそんな私を許してくれないわ……」


「そうだな。俺がアーシャさんの夫なら、忘れられたら悲しい……」


「そうよね」

アーシャさんが目を伏せる。


「でも、それ以上に俺のことなんか忘れて幸せになってほしい」


そう言って、アーシャさんの頭を撫でた。


普段、俺たちの母親として頑張ってくれている。

たまには、俺が支えないとな。


「ふふっ、あの人と同じことを言っている……」


どの言葉を指しているか、俺には分からない。


星の無い夜に、少しだけ明かりが灯る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ