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開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第二章 居場所

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第24話 行方

ナージャ王女の視線の先――

一万もの軍勢が城門前でこちらに睨みを利かせていた。


「ガルデルド帝国は魔術を使えない代わりに、武術に優れている……寄られれば勝ち目はないぞ」

銀髪が風になびく。


「カーリン、お前までいたのか……」

ガルデルド帝国は物理特化の国か……物理優位の世界でこれはキツすぎる。


黒曜の鎧が煌めき、敵将が最前列に歩み出る。


「我が名はガルデルド帝国――十騎士が第三位――断空のガスタージャ。我らの目的はナージャ王女の御身――ただ一つ。王女を差し出せば、直ちに侵略を止めよう」


ガスタージャ……チャプター1-3の合同演習後にナージャ王女を攫った奴か……一人の王女にどうしてここまで執着する? 何か秘密があるのか……。


「大丈夫です。私たちには英雄が付いていますわ」

ナージャ王女が俺に微笑みかける。


ん……英雄って俺?


「ダイチくん。またキミと肩を並べて戦えるなんて……」


金髪に切れ目の青年が隣に立つ。


「……お前、誰だ?」


「なっ、ライドウだよ、ライドウ!

いい加減覚えてくれないかな!」


ストーリー上ではどうか知らんが、俺はほとんどお前と絡んだことはない。


城壁の上ではしゃぐ俺たちを見て、対峙する将軍は呆れを含んだため息を吐く。


「返答は無しか……仕方あるまい」


ガスタージャが背中に背負った剣を抜く。

妖しく輝く、アメジスト色の光が刀身を彩る。


「皆殺しだ――全軍、突撃っ!」


「ちょっと、あんたらがバカやっている内に来るわよ!」

梓が俺の服の襟首を掴み、体を揺さぶる。


「先の会話中に詠唱は終えている――」


“水魔法・タイダルウェイブ”


カーリンが手をかざすと、城壁よりも高い津波が出現し、前方一帯を呑み込もうと敵陣に迫る。


“次元斬”


カーリンが魔剣を一閃――一筋の軌跡が空間に刻まれる。津波が次元の狭間に飲まれていく。


「そんな……!?」

カーリンがカッコつけた手前、膝から崩れ落ちる。


「魔法は使えないんじゃなかったのかよ!」


「あれは、魔剣です……十騎士は各自、特殊な力を秘めた武器を携えていると聞きます」


アーシャさんがカーリンの体を支える。


「……ったく、仕方ねえ!」

射程はギリギリだな――

“クラフト木の柵”


クラフトメニューを操作して、進軍を阻むように横一列に木の柵を張り巡らせ、何列も重ねる。


やばい、動きがカクついてきた……処理落ちの限界が近い。まったく、処理落ちが不安なのに、軍団戦の要素なんか、入れるなよ!


仲間や衛兵たちが、足止めを食らっている敵に魔法で応戦しているが、鎧を着ている雑兵ですらほとんどダメージを与えられていない。


このまま行くと――負ける。


“重力魔法・メテオスコール”


“炎魔法・イグニートブレス”


スターナとリリムも負けじと魔法を放つ――やばい、動きがどんどん重くなる。

このままじゃ……カクつく世界の中、ミスティがトドメを刺す。


「ミスティ、待てっ!」


“雷魔法・サウザンドボルト”

彼女の詠唱が終わり、空が閃く――一瞬にして、世界が終わった。


処理落ち(フリーズ)だ。


音も――光も――時間も――全てが凍りつき、途切れた。



鎖骨の激しい痛みで、視界が開ける。

ここは……ナージャ王女に噛みつかれているところか。


ということは、また戦がループするのか……レベル1の俺がガスタージャに勝てるすべはない。


取れる手段は一つしかない。


俺はナージャ王女の頭を優しく撫でる。


「王女様……」


「どうしました?」


「俺たちのために犠牲になってくれ」

俺はクラフトメニューでロープ作成をして、ナージャ王女をぐるぐる巻きに縛った。


「な、何を……ダイチ様……そういうプレイですか?」

ナージャ王女の顔に不安と恐怖の色が滲んでいる。


【フラグが成立しました。チャプター5B-1 侵攻】


さっきと変わらぬ、黒い大群。

縛られたナージャ王女を抱え、俺は戦場に降り立った。


仲間の止める声が背後で響く。


声を振りほどき、俺はガスタージャの前に対峙する。


「ほほう、貴殿は英雄ダイチ。

我は一度貴様に敗れているナージャ王女を渡したとて貴様は見逃さないぞ!」

ガスタージャは俺に剣の切っ先を向ける。


ストーリーが飛んでいるせいでこいつとの因縁なんて知らない。でも……お前らのせいで、スターナとリリムが一度、殺されたのは事実だ。


俺は煮えくり返る腸に蓋をするように、怒りを抑え込む。


「ああ、ナージャ王女を引き渡した後、いくらでも戦ってやれるよ。その代わり、アルスタイン王国は見逃してくれるんだよな?」


「よかろう、騎士道に誓って手は出さぬ」

ガスタージャが剣を目の前にかざし、祈るように目を閉じた。


「ダイチ……私を引き渡すなんて、嘘ですわよね? こんな、可愛い王女を敵国に売らないですわよね?」


「ナージャ王女……俺たちのために犠牲になってくれ」


俺の腕で、縛られたナージャ王女が身悶える。


「私、幼少期から英才教育で厳しく育てられましたの。毎日、朝から晩まで時間を拘束され、同年代の友達を持つことすら許されませんでした。

王である父は叔父に毒殺され、私も殺されかけました。私を救ってくれた騎士団長アルウェンも、叔父の謀反から私を護り死にました」


ナージャ王女が、生い立ちを次から次へとまくしたてる。


要約すると、こんなに可哀想な私を助けてってことだ。


「ナージャ王女……これからいいことありますよ」


それだけ伝え、ガスタージャに引き渡そうとする。


「おい、てめぇ! ダイチ!

英雄だかなんだか、知らねえけど、ふざけんじゃないわよ!

こんなに、可愛い私が泣きながら頼んでいるのよ!」


人が変わったように、ナージャ王女の口から罵声が浴びせられる。


「……はっ、ダイチ様。すみません、今のも制作陣により設定されたセリフで……私は悪くありませんわ」

われに返ったナージャ王女の顔は青ざめている。


「ガスタージャ。

こんな王女いらないから、早く連れて行ってくれ」


「ああ……」


ガスタージャも若干引いている。

彼は魔剣を背中に背負い、両手でナージャ王女を受け取ろうとする。


ふっ、ようやく剣を納めたか!


“クラフト・プライベートサウナ”


俺はすぐさま、クラフトメニューを操作し、ガスタージャを瞬時に精製された簡易サウナに閉じ込める。


「ぐはーっ、なんだこれは!」

中でガスタージャが壁を激しく叩いている。


このサウナは出口の扉は普通に開けれる。

俺の狙いは閉じ込めることではない。


――ガスタージャがタオルで大事な部分だけ隠し、裸のまま外に出てきた。


そう、プライベートサウナは入ると……自動で装備がインベントリに仕舞われる。


「からの」

“クラフト・和式便所(巨人族用)”


ガスタージャの足元に巨大な和式便所をクラフトする。

「うおっ! これら、いったい……」


ガスタージャは装備を整える間もなく、トイレの中に落ちる。


トイレの直径は20メートルはありそうだ。


「ガスタージャ……達者でな」

俺は最後の別れを告げ、メニューを操作してトイレを流す。


「貴様、謀ったな! ぐわぁぁぁぁ!? 」

ガスタージャが断末魔と共に、押し寄せる水に流されいく。便器の底で渦巻く水に吸い込まれ、彼の声は聞こえなくなった。


「ふっ、つまらぬもの流してしまった。

トイレだけに……」


カッコつけている俺を横目にナージャ王女が訝しげに俺を見ていた。

俺への不信感が滲み出ている。


「ナージャ王女、さすがは名演技です。

お陰で敵将を討ち取れました」


「ま、まあ、私にかかればこれぐらい造作もないですわ」


うん。チョロいな。


「そんな……ガスタージャ様が倒された……」

ガルデルド兵に動揺が走る。


「おい、俺たちも逃げた方がよくないか?」


恐怖と動揺は次第に伝播し、敵軍は一斉に退却を始めた。


トイレに流された先がどうなっているのか、想像したくもなかった。


【チャプター5B-1  クリア】

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