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開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第一章 バグたらけの異世界生活

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第20話 存在しないシナリオ

「ふげぇ!」

上空に張られた透明な壁に俺は頭をぶつけた。


ここが、このゲームの限界高度――スターナの魔法は重力を反転させるのか。


俺は空に足を踏ん張り、逆さまに立ち上がる。


創世の魔女――エメラルドの瞳に俺の姿が反射する。

 

「お主……妾を解放した人間だな……なぜだ?」


「えーと、可愛かったから……」


彼女の瞳は凍てついていた。

……さすがに冗談を言える空気じゃないな。


「ふっ、男などどいつもこいつも同じだな。

やはり、滅んだほうがいい」


創世の魔女は俺を一瞥すると魔法の詠唱を続けた。


「女性も殺すのか?」


「ふ、なにをいまさら。

妾からアイツを奪った女も同罪だ」


確か恋仲だった勇者が浮気したって言ってたっけ。


随分、ぶっ飛んだ思想の方のようだ。

俺はとんでもない美少女を解放してしまったらしい。


「あのー、どうすれば怒りは収まりますか?」


「お主もしつこい奴だな。妾の元に勇者を連れて来い。奴を殺したい!」


勇者って1000年前の人間だよな。

「さすがにもうお亡くなりになっているかと……」


「では、この話は止めだ。奴とその女の子孫がどこかで生きているやもしれぬ。そやつらごとこの世界を滅ぼしてやる」


「さすがに理不尽では?」


「お主はそんなに妾に殺されたいのか?」


「あー、たぶんあんたじゃ俺は殺せないと思う」

俺はステータスを参照する。


創世の魔女 ミスティ

レベル1563

HP986  МP5633326

物理36 魔法65232

防御33 速度32


魔法は桁違いだが、たぶん彼女が詠唱し終える前に俺なら倒せる。


「ふふふ、お主、面白い奴だな……よかろう妾の周囲に薄緑色の膜が見えるだろ?

これを割れば皆殺しは止めてやる」


「おっ、それなら話が簡単だ」


俺の必殺技を見せる時がきたか。


「魔法ではなく、技なのか?

お主、アルスタイン王国の民なのだろ?

魔法以外は使えぬはず……」


「まあ見てなって、

くらえ――必殺魔神拳(通常攻撃)」

俺は渾身の右ストレートでバリアを殴りつける。


ガラスが割れたような感触とともに、バリアが砕け散り、創世の魔女が吹き飛ばされた。


「やべっ、やりすぎた!」


俺は空を蹴り、落下する創世の魔女の手を掴んだ。


「すまん……やりすぎた」



「まさか、この妾がこのような小童に負けるとは……もうよい、離せ……」


「いや、せっかく助けたんだし」


「アンチマジック……」

創世の魔女が手をかざすとスターナの重力魔法が解け、俺たちは地面へ真っ逆さまに落ちた。


「このまま死なせてくれ……」


目を閉じたミスティを抱きしめた。


「嫌だね。美少女が減るのはもったいない」


「妾がブスだったら助けなかったのか?」


「うっ……ま、好みは人それぞれだから」


落下中だというのに、気楽な会話が繰り広げられる。


「お主……名は?」


「俺はダイチ……キミは?」


ステータスバーにミスティと出ていたが、これは名前を聞き返す流れだから……。


「妾はミスティ――ダイチ……妾を助けたからには責任は取るのだぞ」


不穏な台詞とともに、地面へ衝突した。


土煙が舞い、地面が円形に抉れる。


ミスティを庇ったことにより、俺の体力は半分は持っていかれた。


ミスティの体力が残り僅かだ。

彼女は浅い呼吸で意識を失っていた。


アーシャさんは回復魔法が得意だったはず……仕方ない。家に連れて帰るか……。



「「ダイチッ!」」



家に帰るとスターナとリリムが駆け寄ってきた。


「アーシャさんは?

この子の治癒を――」


アーシャさんはミスティを見て、眉をしかめる。


「この子、創世の魔女よね?

……とどめは刺さないの?」


アーシャさんが不穏な言葉を漏らす。

アーシャさんならしてみれば、ミスティは過去に大罪を犯した悪なのかもしれない。


それでも、こんなに可愛い女の子を殺すなんて、俺にはできない……。


パーティー編成を開くと、

ミスティの名前が候補に出ていた。


俺はパーティー加入を選択した。


「ミスティは俺の仲間だ。

これで、殺したとしてもまたリスポーンする」


もし、ミスティの死が運命ストーリーで確約されていたなら、無駄なあがきかもしれない。


アーシャさんと互いに睨み合う。


しばらくして、アーシャさんが根負けしたのか、大きなため息をつく。


「わかったわ。

その代わり、彼女が暴走したらダイチさん……今度こそ、容赦なく殺してね」


たぶん、アーシャさんが正しい。

そんなのは俺だって分かっている。


「喧嘩はやめてくれ!」

リリムがアーシャさんの胸に飛び込んだ。


「リリムちゃん。もう大丈夫よ。

痴話喧嘩みたいなものだから」


「ちょっと、ママ!

しれっと、ダイチの恋人宣言しないでくれる!」


スターナがアーシャさんに噛みつく。


「ダイチさん。私は貴方を大人と認めるわ。

その代わり、責任は自分で取るのよ」


アーシャさんの目は真剣そのものだ。

まったく、この人には敵わないな。


「ああ、俺の方がミスティより強いからな。

安心してくれ!」


ザザザ――

俺の言葉を否定するかのように不快なノイズが響く。


【データ破損により、レベルがリセットされました】

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